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「建物の区分所有に関する法律」の解説

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目次

第一章 建物の区分所有
第一節 総則
  第一条 建物の区分所有
  第ニ条 定義
  第三条 区分所有者の団体
  第四条 共用部分
  第五条 規約による建物の敷地
  第六条 区分所有者の権利義務等
  第七条 先取特権
  第八条 特定承継人の責任
  第九条 建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定
  第十条 区分所有権売渡請求権
第二節 共用部分等
  第十一条 共用部分の共有関係
  第十二条 
  第十三条 共用部分の使用
  第十四条 共用部分の持分の割合
  第十五条 共用部分の持分の処分
  第十六条 一部共用部分の管理
  第十七条 共用部分の変更
  第十八条 共用部分の管理
  第十九条 共用部分の負担及び利益収取
  第二十条 管理所有者の権限
  第二十一条 共用部分に関する規定の準用
第三節  敷地利用権
  第二十二条 分離処分の禁止
  第二十三条 分離処分の無効の主張の制限
  第二十四条 民法第二百五十五条の適用除外
第四節 管理者
  第二十五条 選任及び解任
  第二十六条 権限
  第二十七条 管理所有
  第二十八条 委任の規定の準用
  第二十九条 区分所有者の責任等
第五節 規約及び集会
  第三十条 規約事項
  第三十一条 規約の設定、変更及び廃止
  第三十二条 公正証書による規約の設定
  第三十三条 規約の保管及び閲覧
  第三十四条 集会の招集
  第三十五条 招集の通知
  第三十六条 招集手続の省略
  第三十七条 決議事項の制限
  第三十八条 議決権
  第三十九条 議事
  第四十条 議決権行使者の指定
  第四十一条 議長
  第四十二条 議事録
  第四十三条 事務の報告
  第四十四条 占有者の意見陳述権
  第四十五条 書面又は電磁的方法による決議
  第四十六条 規約及び集会の決議の効力
第六節 管理組合法人
  第四十七条 成立等
  第四十八条 名称
  第四十九条 理事
  第五十条 監事
  第五十一条 監事の代表権
  第五十二条 事務の執行
  第五十三条 区分所有者の責任
  第五十四条 特定承継人の責任
  第五十五条 解散
  第五十六条 残余財産の帰属
第七節 義務違反者に対する措置
  第五十七条 共同の利益に反する行為の停止等の請求
  第五十八条 使用禁止の請求
  第五十九条 区分所有権の競売の請求
  第六十条 占有者に対する引渡し請求
第八節 復旧及び建替え
  第六十一条  建物の一部が滅失した場合の復旧等
  第六十二条 建替え決議
  第六十三条 区分所有権等の売渡し請求等
  第六十四条 建替えに関する合意
第二章 団地
  第六十五条 団地建物所有者の団体
  第六十六条 建物の区分所有に関する規定の準用
  第六十七条 団地共用部分
  第六十八条 規約の設定の特例
  第六十九条 団地内の建物の建替え承認決議
  第七十条 団地内の建物の一括建替え決議
第三章 罰則
  第七十一条
  第七十二条

(建物の区分所有)
第一条 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。

1. 区分所有法の趣旨
所有権は物に対する全面的な支配権であるから所有権の目的となるものは1個の物であることが必要とされます。そして建物の個数は社会通念上その棟数で数えられるので本来建物の1個は1棟でなります。
しかしながら、中高層マンションの出現により1棟のマンションを区分してその一部を各々の所有権の対象とする必要が生じたため民法の特別法として区分所有法が制定されました。

2.区分所有建物の成立要件
第1条は区分所有建物の成立要件を規定しており、この条文によればそれには@構造上区分されていることA独立して利用できることが要件とされます。これを一般に@構造上の独立性、A利用上の独立性と称しています。

@要件その1 構造上の独立性
構造上の独立性は、他の区画と区分され他の人の所有物との混合の危険性がないという所有権の対象としての適格性の要件であり、利用上の独立性は、本来1個の物の一部分を特別に所有権の対象とするだけの必要性の要件といえます。

構造上の独立性とは、区画が床・壁・天井等で物理的に他から区分されていることをいい、原則として四方が完全に区画されていることが必要です。区画の材質は木材、コンクリート、ガラス等ある程度永続的に区画を区分しうるものならこれを問いません。現状は紙や布・ベニアでは区角材の要件を満たさないようです。ただ、構造上の独立性も建物の用途との関係で相関的に判断されるものであり、住宅ではそのプライバシーを守るために四方を閉じた完全な独立区画であることが必要ですが、駐車場では出入口が開放されていても車は文句を言いませんから三方が閉じられていれば構造上の独立性が肯定されます。

A要件その2 利用上の独立性
利用上の独立性とは、当該区画が住居、店舗、事務所又は倉庫その他の用途に独立して支障なく利用できることを言います。
支障を生ずる場合に他の専有部分との関係での支障と共用部分や共用施設との関係が考えられます。専有部分との支障とは、他の専有部分を経由しなくては外部に出られない場合や反対に当該専有部分を通らずに外部との交通手段がない専有部分がある場合です。これらの場合には、通路となる区画は他の共用に供されますので独立して利用しているとはいえません。従って、この場合は当該区画と他の専有部分とを一体にしたものが1個の専有部分ということになります。
共用部分や共用施設との関係は、専有部分を通らないと共用部分へ行けない場合や専有部分内に共有設備等がある場合です。この場合は当該専有部分の用途と共用部分や設備の内容・利用状況等により専有部分の独立利用を害するものかどうかを具体的に判断しなければ結論は出ません。なお、ここでも建物の用途との関係で独立性は相関的に判断されます。例えば、ある住居を通って共用の倉庫に行くのは住居の独立利用を害しますが駐車場の利用は害されないとするのが通常です。問題は専有部分内に共用設備がある場合とりわけ防災盤やエレベーター監視盤があったり受付がある管理人室が専有部分としての用件をみたすかですが、管理事務室としか使用できないようであれば利用上の独立性がなく、多少の不便はあっても住宅や事務所にあまり支障のない使用ができるようであれば利用上の独立性を認めても良いと思われます。

3.専有部分の範囲−壁芯説と上塗り説−
ところで、このように構造上・利用上の独立性が認められ所有権の対象となったとして、はたして自己の所有権の及ぶ範囲がどこまでなのかは法に規定がありません。この点の考え方としては、大別して壁芯説と上塗り説があります。このうち壁芯説は隣戸との床・壁・天井スラブの中心線を境とする説であり、上塗り説は床・壁・天井スラブの躯体部分は専有部分に含まれずその上塗り部分のみが専有部分とするものです。
壁芯説を取ると、壁の中心までは自己の所有権が及びますから壁に時計や額をビスで吊り下げる等の日常生活の空間的利用は当然のこととして専有部分内のリフォーム工事も原則として自由に行えることになり個々の所有者には大変便宜な結果になります。反面、躯体の半分が専有部分ということですからこれを自由にはつれるともなりかねずマンション全体の構造上は問題がある考え方でしょう。
上塗り部分説は、マンション全体の構造上は問題がありませんが、壁紙やカーペット等の躯体の上塗り部分のみが専有部分ですからこれらの取替は自由となりますが壁に時計や額をビスで吊り下げる等の日常生活の空間の利用は専有部分外に効果が及ぶ行為として原則自由とはいえないこととなります。従って、これらの説を文字通り適用すればあまり妥当な結果とはなりませんから、壁芯説では構造上の問題を生ずるような行為は共同の利益に反するものとして当然禁止される、上塗り部分説では共同の利益に反しないような日常的な利用は共用部分の通常の用法として当然許される、と一定の制限をつけて理解すべきでしょう。
いずれの説も一長一短がありますが、標準管理規約における上塗り説が一般である現状においては結論的には上塗り説で理解しておくべきでしょう。


(定義)
第二条 この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第四条第二項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。
2 この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。
3 この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。
4 この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。
5 この法律において「建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。
6 この法律において「敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。

1.定義条項とは。
区分所有法はいろいろな条項で一定の事項を繰り返し規定することがあるため、一定の事項を一定の言葉に定義する定義規定を定めていますが、第2条がその定義規定となります。

2.区分所有権
この定義条項によれば、第1条の建物の部分(これを3号で専有部分と定義しています。)を目的とする所有権、すなわち専有部分の所有権を区分所有権といいます。
区分所有権も所有権であり第1条の建物の部分も不動産ですから、区分所有権も通常の不動産の所有権に変わりがありません。従って、その得喪変更は当事者間では意思表示により効力を生じ、それを第三者に対抗するには登記が必要なことに変りはありませんが、特に区分所有権と定義したのは単に目的物が物の一部であるから特殊だからというよりも第2号の区分所有者を定義する前提として必要だったものと思われます。

すなわち、区分所有者は、1から3号により、区分所有権者であり、また専有部分の所有者である者ですが、専有部分が共用部分なくして物理的にも機能的にも存在し得ないことから、必然的に他の共用部分所有者たる他の区分所有者との交渉を持たざるを得ないことや、また当該専有部分の利用も共用部分や他の専有部分に対する影響を考慮せざるを得ないため通常の所有権の権能である目的物を自由に使用収益するということに何らかの制約を設ける必要があるからです。このことはそのまま区分所有法という民法の特別法を制定する理由でもあります。

専有・共用という表現について
ところで、区分所有法をはじめてみた人は「専有部分」や「共用部分」という表現に多少混乱があるかもしれません。「専」と「共」、「有」と「用」という文字は、それを組み合わせることで、「専有」、「専用」、「共有」、「共用」ができます。この4つの語は「専有」は特定の者の所有を、「専用」は特定の者の使用を、「共有」は複数の者の所有を、「共用」は複数の者の使用をそれぞれ意味すると考えてよいでしょう。そこでこの語の相互の関係を考えてみますに、「専有部分」が「専用部分」であることは当然ですが、「専用部分」がバルコニー等のように「共用部分」を専用的に使用する場合があり当然に「専有部分」であるとは限りません。また同様に、「共用部分」が「共有部分」であることは当然ですが、「専有部分」の共有の場合のように「共有部分」が当然に「共用部分」であるとは限りません。この文字のこのような関係から、建物の一定部分を正確に定義するため、1棟の建物のうち区分所有権の目的たる建物の部分を「専有部分」といい、専有部分以外の建物の部分を「共用部分」といっております。

共用部分の例
このように、4号により専有部分のある1棟の建物のうち専有部分を除いた残りの部分、エントランス、廊下、エレベーターホールや屋上、外壁等を共用部分といいますが、建物には建物本体のみならずその効用を果たすための電気・空調・給排水設備が附属しておりますから、これも附属物として(専有部分の附属物を除いたものが)共用部分となります。

専有部分と共用部分の境界
なお、専有部分の配管・配線等は通常物理的に連続しておりますから、これらについてどこまでが専有部分でどこからが共用部分かは疑問があります。常識的には結点部分で分岐しているため、ここが責任分界点と思われますが、法律的にはその材質の物理的性質にはよらず専有部分と共用部分の接線で分けられます。これは物理的に一体の壁の中心で専有部分の範囲を分ける壁芯説と同様の考え方です。尤も、この点は法律の条文で明確には決まっておりませんから物理的な接点で分けるという規約上の合意をしておけばそこが責任分界点となります。

付属の建物
共用部分で残るのは第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物です。附属の建物とは、マンション本体とは別棟として建てられた集会室・水道ポンプ室・下水道処理室等の本体建物に付随する建物をいいます。これらは主たる建物から一応独立した建物ですから当然には共用部分とはなりませんが、規約で共用部分とすることができます。

規約共用部分とすべき場合。
共用部分とした場合としない場合の違いは、適用される法律が民法か区分所有法かの違いとなって現れます。共用部分とした場合は区分所有法が適用されますからその扱いは他の共用部分と同じですが、共用部分としない場合は民法が適用されますから、その施設の保存行為は単独で、管理行為は持分の過半数で、変更行為は全員の合意で行い、各自の持分は全て登記され持分の処分や分割請求も自由となります。従って、附属の建物の性格、用途にもよりますが、他の共用部分と同様の全員の共同利用施設である場合は規約で共用部分とするべきでしょう。

敷地
第5号は建物の敷地を定義しています。それによれば建物の敷地は原則として建物が所在する土地とされます。これはマンションの水平投影下の土地をいいその土地の地番がここでいう建物の所在地となります。従って、付置公園・駐車場等事実上マンションと一体として利用されている土地の地番が異なり且つそれがマンションの水平投影下にない場合は当然には区分所有法上の建物の敷地とはなりませんから区分所有法の定める分離処分禁止効が及ばないこととなります。それでは不都合ですから規約で建物の敷地と規定することにより区分所有法上の建物の敷地とすることができます。

敷地利用権とは。
ところで、我が国では土地と建物を別個の不動産としておりますので、建物を所有するためには建物に対する権利の他土地に対する権利が必要となります。第6号で定める敷地利用権とはこの土地に対する権利のことです。ただし、第6号自体は敷地利用権自体の権利の性質・発生原因・効果その他権利の創設に関する必要事項に何ら触れるところがありませんから、第6号は新たな権利を創設した規定ではなく建物を所有するための土地に対する既存の権利の総称であると理解されます。そうすると敷地利用権の種類は所有権、地上権、賃借権(地上権、賃借権を総称して借地権といいます。)、使用借権(現実にはありえません。)の4種類をいうことになります。

(区分所有者の団体)
第3条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

1.管理組合
第3条は、区分所有者の権能を定める基本規定です。@区分所有者は全員で団体を構成すること、及びA区分所有者はこの法律の範囲内で集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができることが定められています。
この区分所有者の団体は、通称、管理組合といわれていますが管理組合法人の場合を除き、法律上の正式名称ではありません。

2.団体の当然設立とは。
ところで、@の団体は結成手続きなしに当然に結成されていることを宣言したものと一般に説明されていますが、一面、区分所有者(当然複数を予定します。)は前条で定義された共用部分や建物の敷地を共同で所有・管理する一定の集団ですから、この集団をここでいう団体と考えれば「団体を構成」することはこの条項を待たなくとも当然のことように思われます。
他面、団体とは、一定の目的の下に一定の組織を備えて代表者によって活動する一定の集団をいいますから、単に、複数の者が1棟の建物を区分所有したという事実をもって現実に組織も代表者も決まらない段階で団体が結成されたとするのはおかしいようにも思われます。

団体の設立要件の具備
しかしながら、目的、構成員及び組織が確定してさえいれば、即ち現実に代表者が定まっていなくともその選定方法さえ定まっていれば団体の存在を肯定することができ、区分所有者の団体の場合は、本条で構成員が「全員」、目的が「建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行う」と定まり、組織面では集会の方法による内部意思の決定等最低限必要な機関が法定されておりますから、団体の存在が肯定できる場合にあたると考えられます。
このように、区分所有者の団体は、通常の任意・自主的結成の団体と異なり、この法律による法定の強制設立団体ということになります。

団体が実際に行動できるためには。
ただこのことは、代表者により活動しうる団体が存在するというにとどまり、実際に活動するためには具体的な代表者を定める必要があることはいうまでもありません。その場合は、実際の組織ももう少し詳しいものが必要となるものと思われますが、そのような必要に備え、本条では「集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」として、区分所有者の団体が現実的に活動するために必要な権能を認めています。この規定の結果、この権能をどの程度どのように行使する又は行使しないかはこの法律の範囲内で各団体が自由に決定することができます。

普通、法が団体の結成を強制する場合は、団体の性格や組織・代表の方法等実際に活動しうるだけの事項を法定するのが通常ですが、この区分所有者の団体の場合はそうではありません。これは区分所有者の団体の規模等でその性格が異なり一律に組織・代表の方法等を法定することが困難だったためと思われます。

管理組合の法的性格−社団か組合か−
では、通常管理組合と称するこの区分所有者の団体の法的性格はどのように考えるべきでしょうか。
法的性格の異なる団体(人の集団によるもの)の典型は民法に規定される社団(社団法人)と組合です。一般に、社団は社団と各社員が社員関係で結合する団体で、個々の構成員たる社員とは別個の社会的存在が認識されるために社団の権利義務は社団に帰属して社員個人には帰属せず、代表機関を通じて行動し、社員は総会等に参加することで社団の運営に参画するのみであるもの。これに対し、組合は各組合員相互が契約関係で結合する団体とされ、この団体は個々人の集合に過ぎないので権利義務の帰属主体とはなりえないため権利義務は組合員全員に帰属し、その行動も全員又はその代理人が行うもの、とされております。
もとより、これらは団体の典型ですから実際の団体がすべてこの2つに割り切れるとは限りません。従って、管理組合もその実態によりこれらの団体のどちらかにより近いものかを具体的に判断する必要があります。
そうすると、ごく少数で互いに権利義務関係を認識しうるような組合員相互の関係が濃厚な場合を除き、通常の管理組合では組合員は管理組合との関係は認識しつつも組合員相互の関係の認識は希薄であって、理事長という代表者を通じて行動し、組合に関する事項は総会に参画するのみであるのが一般ですから社団的要素の濃厚な団体というべきでしょう。
即ち、管理組合は、一般には最高裁のいう団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ構成員の変更にかかわらず団体が存続しその組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定している、いわゆる権利能力なき社団に該当するものといえます。

なお、一部共用部分があって、それを当該共有者たる区分所有者が管理する場合はやはり当該部分を管理する団体が形成され、その関係は全体共用部分の場合と同様になることになります。

(共用部分)
第四条 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
2 第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

1.共用部分とは。
数個の専有部分に通ずる廊下が誰かの専用となったのでは他の人の専有部分の使用に支障が生じます。従って、そのような部分は共用部分即ち区分所有権の目的即ち専有部分とはなし得ないわけです。このことは、第2条4号と同じ結論ですが、第2条4号が消極的な定義であるのに対し本条は共用に供されるべき建物の部分として共用部分を積極的に定義しています。

2.共用部分の例
それではどこがその部分に該当するでしょう。それは本条でいう共用に供されるべき建物の部分ということになります。従って、客観的に見て、即ち誰が見ても数個の専有部分の共用と見られる部分が共用部分ということになります。具体的にどの部分が共用部分に該当するかは個々のマンションに応じて具体的に判断されますが、外壁・屋上は勿論、一般には本条で例示された廊下又は階段室の外、エントランスホール、エレベーターホール、エレベーター機械室、電気室等がこれに該当します。

3.法定共用部分
これら1項の要件に該当する共用部分は誰が見ても共用部分ですから、法律上当然の共用部分として法定共用部分といわれ、且つ共用部分であることに関し紛争が生じる恐れがありませんので(理屈の上でそうであるだけで、実際には共用部分であるかどうかの紛争があります。)、紛争当事者間の権利関係決定基準たる登記を必要とせず、かえって登記をすることができないものとされています。

4.規約共用部分
しかしながら、現実には法定共用部分だけで共同生活ができるわけではありません。完全な自主管理である場合を除き管理人室が必要ですし、自主管理の場合であっても集会室や組合用倉庫が必要になります。これらの部屋は使用する立場からは共同利用といえますが、他に転用が可能である以上その性格はあくまで利用者の主観的なものであり客観的な共同使用要件を満たさないものです。また、これらの部分は「区分された部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することのできる部分」であり本来的には専有部分でもあります。従って、このような部分を共用部分とする必要性がある一方、他方で共用部分であることやその共有者であること又はないことに関し紛争の生じる可能性があることになりますので、このような部分を規約により共用部分とすることができるとすると共に共用部分であるの旨の登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することができないこととされています。

5.規約共用部分の登記
共用部分である旨の登記の手続きは、不動産登記法99条の4に規定されており、これによりますと、登記簿の表題部又は甲区に記載された所有者が規約を添付して申請し、受理されると表題部に共用部分である旨が記載されて表題部又は甲区に記載された所有者名は抹消されることとなっております。当該部分がこのように名実共に共用部分になりますと当該部分が単独で所有権移転や担保権設定の目的となることがなくなりますから、それらの事項の記載欄である甲区・乙区は不要となるためこれらは閉じられ、表題部のみの登記簿となります。

なお、新築分譲時の規約共用部分の設定は、分譲業者が公正規約証書を作成、添付の上規約共用部分の設定・登記を行いますが、中途で設定する場合は規約事項のため規約変更手続きで行うことになります。このことは規約共用部分を廃止する場合でも同様です。

ところで、本条及び第2条より区分所有権には共用部分の権利は含まれないことになりましたから区分所有者が有する権利は区分所有権及び共用部分の権利と敷地に対する権利の3つということになります。

(規約による建物の敷地)
第五条 区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。
2 建物が所在する土地が建物の一部の滅失により建物が所在する土地以外の土地となつたときは、その土地は、前項の規定により規約で建物の敷地と定められたものとみなす。建物が所在する土地の一部が分割により建物が所在する土地以外の土地となつたときも、同様とする。

1.敷地の種類
第5条は規約敷地に関する規定です。第2条の定義で建物の敷地には建物が所在する土地と本条により敷地とされる土地の2つのものがあることとなっています。前者は敷地の要件(建物が所在すること)が法定されていますから法定敷地と呼ばれ、後者は規約敷地と呼ばれています。

規約敷地とするか否かで、当該土地が管理組合の管理対象となるか否か、敷地に関する権利の分離処分ができるか否か、敷地権の設定ができるか否かが違ってきますので(分離処分と敷地権の点は敷地であっても原則と異なる取扱いがありますが。)、法定敷地と一体として利用される土地であれば法定敷地と運命を共にさせる意味からも規約敷地を設定するべきでしょう。

2.規約敷地
規約敷地とするには、その土地が@建物の所在する土地(法定敷地)以外の土地で、A建物及び法定敷地と一体として管理・使用される土地であることです。そして最後にB規約で敷地に取り込む必要があります。
@は当然です。いくら建物から離れていても建物の登記簿に記載された所在地の地番(複数ある場合もあります。)と当該公園等が同じ土地の場合には法定敷地となるので規約敷地にすべきかどうかの問題は発生しません。しかし、Aには多少問題があります。一体性の要件は法定要件ですから当事者の主観において一体であることでは足らず建物と法定敷地との関係においてその利用なり管理の実態が客観的に一体性を認められることが必要でしょう。そのような一体性が認められる限り法定敷地に接続しない土地であっても規約敷地となしうるものと考えられます。また、法定敷地を別とする一団のマンション群が中央公園等を共同する等の場合は中央公園等の土地を各々規約敷地とするようなことも考えられます。@及びAの要件を満たした土地は規約で定めることにより規約敷地とすることができます。その方法は、規約の敷地の表示に当該規約敷地の所在・地番等を法定敷地と同様表示することで可能です。

3.規約敷地の登記
規約敷地としても、規約共用部分と異なり規約敷地という特別な登記があるわけではありません。ただ、法定敷地は一定の要件(敷地利用権が全員の共有又は準共有で且つその旨登記されていること)を満たしたときに敷地権の登記が可能ですが、規約敷地も同様な要件の下に敷地権登記が可能であるにすぎません(不動産登記法93条の3)。この関係で単に規約に規約敷地を定めたとしても敷地権の登記無しには善意の相手方に規約敷地であることを対抗できません。

4.建物の一部滅失や分筆の場合の取り扱い。
ところで、法定敷地は建物が所在するという現状と建物の登記の敷地の所在の表示で建物の敷地であることを公示していますが、建物の現状又は土地の表示の変更により建物が所在する土地でなくなる場合がありえます。しかし、法定敷地はもともと一体として建物の敷地として利用・管理されていた土地のはずですからこのように法定敷地から分離された土地であっても原則として規約敷地の要件は満たすものと考えられます。このような考えから、本条の2項では建物の一部滅失や土地の分筆により建物の所在する土地でなくなった場合には当該土地は当然の規約敷地になるものとしています。このことは法律の見做し規定の効力によりますので法律上当然に生じ規約の定めを必要としません。
しかし、建物の敷地が広大な土地の一部であるような特殊な場合には、分筆後に建物やその法定敷地と一体性のない部分にはこの規定の効力は及ばないものと思われますし、規約敷地だった土地の場合は建物の一部滅失に影響されることはなく、土地が分筆されても当該土地全部が規約敷地であることは当然ですからこのような見做し規定は必要ありません。

(区分所有者の権利義務等)
第六条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
2 区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。
3 第一項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。

1.義務の種類。
第6条は、区分所有者の権利義務規定です。このうち1項は義務を、2項は一定の権利とそれに付随する義務を、3項で占有者の義務を規定しています。

2.共同の利益とは。
1項は区分所有者の共同の利益に反する行為を禁止する義務規定ですが、区分所有者の共同の利益という一般的・抽象的表現という曖昧な表現の一般条項となっています。従って、このままでは何が禁止され、何を守ればいいのかよく分かりませんが、次のように具体化することができるでしょう。

まず、区分所有者の利益とは所有物(資産価値、使用価値と交換価値の双方を含みます。)を維持し、これを自由に使用・収益・処分できることと考えることができます。次に、この利益に反する行為は積極的にこの利益を侵害する行為と消極的にこの利益を守らない行為に分割することができ、前者はさらに@所有物たる建物(専有部分を含む。)を毀損しその価値を減少させる行為とA他人の所有権の行使を妨害する行為に分けることができます。後者はB区分所有者として負担する諸義務の履行を怠る行為のことです。@の例は、建物を物理的に毀損したり汚損する行為、美観を毀損する行為等により建物の交換価値や使用価値を減少させる行為であり、Aの例は、騒音、振動等により他人の専有部分の円滑な使用を妨害したり共用部分に物品を廃棄・放置する等により他人の使用を妨害する行為等がこれにあたります。Bの例は、管理費等の負担の支払義務、用法違反、その他管理規約や使用細則に定められた義務の違反行為が広くこれに該当すると思われます。

3.立入権。
ところで、区分所有者の最も重要なものは所有権ですが、専有部分はその躯体から諸設備にいたるまで他の専有部分や共用部分と有機的に関連しあって存在していますから、その維持管理の実施に自己の権利の及ばない部分の使用が必要となる場合があります。この場合に当該使用ができないことはとりもなおさず区分所有者相互の建物の保存・利用に支障をきたし、また社会的にも不経済なことになりますから、第2項で立ち入り権を認めています。これは民法の相隣関係と同様の考え方ですが、民法では認めない他人の建物内への立ち入りを認める点で民法の特則となっています。

対象となるのは他人の専有部分の外、自己が権利を有しない一部共用部分です。自己が権利を有する共用部分はその権利に基づき当然に使用することができるのでこのような定めは必要ありません。

この権利に基づき他の部屋等に立ち入った場合は、そこで工事等を実施するのでしょうから相手方に損害が発生します。従って立ち入り者はその損害を補填すべきですが、違法行為の場合にこの補填金を賠償金と称するのに対し、この場合は正当な権利行使の場合ですから償い金と称しています。

4.義務の占有者への拡張。
なお、第1項で区分所有者に対し利益背反行為の禁止を謳いますが、専有部分の居住者等が常に区分所有者とは限りません。元来、利益背反行為の禁止はマンションに関係する全員が遵守して初めてその成果が期待できるものです。そこで、3項で区分所有者に対する利益背反行為の禁止を専有部分の占有者にも準用することとしています。

5.占有者の種類。
専有部分の占有者とは、当該専有部分を事実上支配している者をいい、賃借人が代表的ですが、受寄者、管理人、破産管財人等の正当な占有権限者の他、不法占拠者等の正当な占有権限を有しない者も占有者ですが、家族、同居人等正当な権利者の権利の履行補助者の地位にいるものは占有者ではありません。

6.準用の範囲。
また、3項は準用規定ですから、1項の全てが適用されるのではなく占有者と区分所有者との地位の差から所有者にのみ適用されるべき規定(上記@、Aは所有の有無に係らず誰でも遵守すべきで、Bの用法も同様ですから不適用は主にBの所有者としての経済的負担となるようです。)は適用がありません。

(先取特権)
第七条 区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
2 前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。
3 民法(明治二十九年法律第八十九号)第三百十九条の規定は、第一項の先取特権に準用する。

1.先取特権とは。
第7条は先取特権(さきどりとっけん)の規定です。先取特権とは、抵当権と同様に担保物の価値で債権を担保する方法の一つで、担保される債務の履行がないときに担保権を実行(民事執行法に基づく競売)して債権を優先的に回収することができます。

2.先取特権の成立。
先取特権は、公平、当事者の一般的な意思及び社会政策的理由の全部又は一部の理由により法律がその成立を認める法定担保物権の一つであり、区分所有者が建物の管理等に関する債務を負担する場合には区分所有者の有する専有部分やその中の動産、敷地利用権をその担保とすることが公平且つ当事者の意思に適うものであることから認められたものと思われます。
この点は共有物に関しその持分の上に特別の担保権(先取特権類似の権利)を認める民法259条と同様です。

この先取特権は法定担保物権ですから区分所有者が建物の管理等に関する債務を負担すると当然に発生し、約定担保権の抵当権と異なり、設定行為は必要ありません。
そのため、被担保債権額の公示等がなされませんので債務者の一般債権者を害する虞がありますが、一般に債権額が多額にならないためやむを得ないものとされています。

3.先取特権の効力。
この先取特権は、債務者の特定財産に関する担保権であるのにもかかわらず共益費用即ち民法306条1号の一般の先取特権(債務者の全財産を本来対象とするもの)とされていますので、登記なしに一般債権者(対抗力ある担保権等の優先的権利を持たない者)に優先して債権を回収することができますが、登記なしには登記した抵当権者等の担保権者には優先されます(民法336条)。
なお、一般にこの先取特権の登記はなされませんから、現行の過剰担保の状況下で抵当権実行の手続きに参加して配当要求を行っても配当を受けられる可能性は低いでしょう。
この点に対しては民法329条2項の共益費用の先取特権は其利益を受けたる総債権者に対して優先の効力を有す、という趣旨からこの先取特権の被担保債権は建物保存の費用で抵当権者の担保価値保存に利益を与えているはずとの考えから抵当権に優先して配当を受けられるべきだ、とも思われますが、この先取特権の被担保債権にはいろいろのものがありますので、真に建物保存の費用で抵当権者の担保価値保存の有益なものである場合は、抵当権に対する優先権が認められている民法325条1号の不動産保存の先取特権として登記しその順位を保存しておくべきでしょう。

4.先取特権の被担保債権。
この先取特権の被担保債権は、@区分所有者が、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権、A規約又は集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権です。
@は共用部分、建物の敷地及び附属施設の保存・管理・変更・処分に関する一切の費用であり、具体的には管理費・修繕費・修繕積立金・同基金・専用使用料等の債権及びその立替金債権がこれに該当します。なお、この点は@の債権は保存行為等で個人の区分所有者が立替えた現在の債権をいい、Aの債権は管理費・積立金・義務違反者の違約金等団体としての管理組合が有する債権をいうとするのが一般のようです(コンメンタールマンション区分所有法(日本評論社 稲本洋之助・鎌野邦樹共著)P58・59、区分所有法(丸山英気)、新しいマンション法(法務省民事局参事官室編))。しかし、立替金という不当利得請求債権なら区分法で規定しなくとも当然ですし、次に記載のとおりこれらの債権の主体が@とAで異なるとは思えませんし、@が民法の特則規定とするのであれば上記のとおり@は債権の目的からAは発生手続きからの規定とするのが妥当と考えます。尤も、@に該当しようとAに該当しようと被担保債権となることに変わりはなく実務上は問題ありません。
Aは規約又は総会決議に基づく債権で、@の債権に限らず管理組合が精算を行う専有部分の水道光熱費等がこれに該当します。

5.先取特権の主体。
ところで、1項の主語が区分所有者となっていますが、これらの債権は通常は総体としての区分所有者、即ち区分所有者の団体たる管理組合に帰属するものですから、本来は管理組合が主語であるべきですが管理組合に正規の権利帰属主体たる法人格がないため区分所有者という主語となっているものと思われます。
なお、このように区分所有者は複数形と読むべきですが、各区分所有者は単独で保存行為が可能ですし、管理・変更行為も総会で当該区分所有者が実施するとされれば実施でき、その場合には管理組合に対する債権の外、持分に応じて負担に応じるという規定を通し個々の区分所有者に対しても債権を行使できると考えられますから、単数形の場合がないわけではありません。
また、個々の区分所有者が他の区分所有者の負担金を立替えた場合は、その実態はこの先取特権が付着した債権の第三者弁済による求償債権ですから、この先取特権を行使することができ、この場合も単数形となります。
ついでながら、この単数形の場合で単独で職務を行う者が管理者(ただし区分所有者とは限らない。)であり、複数形で正規の権利帰属主体たる法人格を持つ場合が管理組合法人ですから、管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても同様とするのは当然です。

6.先取特権の客体・対象物。
この先取特権の対象物は、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産とされます。
このうち、区分所有権、共用部分に関する権利および敷地利用権は不動産担保権の抵当権の対象となるため上記のように抵当権に優先されますが、建物に備え付けた動産は抵当権の目的とならないため抽象的にはこの先取特権で優先して債権を回収することが可能です。
ただ、現実的にはこの種の動産は新品価格の数%で競落されるのが通常ですからあまり期待はできません。3項でこの先取特権に民法319条、同192条から195条が準用されていますから、この先取特権成立時即ち被担保債権取得時点において建物に備え付けた動産が債務者の物であることについて善意無過失(そうでないことを知らず、知らないことに過失がないこと。)の場合は、たとえそれが他人の物であってもこの先取特権の目的物となります。

建物に備え付けた動産の範囲は、建物使用に伴いある程度継続して建物に置かれる家具、電気器具その他の設備で単に建物内に存在する物では足りないものと思われますが、この規定に類する民法313条に関しある程度継続して置いてあれば金銭、有価証券、宝石類もこれに該当するとするのが判例です(大判大3.7.4民録20―587)。ただし、個人の生存に不可欠なものとして差押禁止財産とされているものが除外されることは勿論です(民事執行法第131条)。

(特定承継人の責任)
第八条 前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。

1.特定承継人とは。
第8条は特定承継人の責任規定です。

ここで特定承継人とは、一般承継人と対比されるもので一般承継人が被承継人の地位を一般的・包括的に承継する者であるのと異なり被承継人の地位の一部・特定部分を承継する者という概念です。包括承継の場合はその人の年金等一身専属的な権利を除きその人の権利義務の一切(包括的地位)を包括的に承継しますが、特定承継の場合はある不動産の所有者の地位等特定の地位しか承継しません。
一般承継は個人の場合は相続、法人の場合は合併がその適例で、承継人は被承継人に属していた権利・義務の一切(前述のとおり、一身専属的なものは除外されます。)を当然に承継します。
特定承継は特定の財産権の譲渡の場合がその例で、区分建物の売買や競売・公売による買主、贈与の受贈者、特定遺贈による受遺者等がこれに該当します。

このように、包括承継の場合は前条の債務を当然に承継しますから第8条のような規定は必要ありませんが、特定承継の場合は承継された特定の財産に内在又は付着した物的・法律的な瑕疵や負担しか承継しないことが原則ですから、本条がなければ前条の債務を特定承継人が承継することはありません(循環論気味ですが、本条の存在が上記原則適用上の法律的瑕疵・負担を構成している関係となっています。)。

2.債務が承継される理由。
それでは本条はどういう趣旨の規定でしょうか。
本条と同様の規定である民法254条の趣旨は共有者間の取り決め事項や共有物に関する負担が、それを是としない共有者が持分を譲渡することにより事実上廃棄・消滅されることを防止しもって共有者間の共有物の管理を全うさせることにある、とされています。
つまり、共有物を管理し使用するには共有者間で一定のルールを定めてそれに従うことが必要ですが、対人的なルールは取り決めた当事者間でしか効力がないのが原則ですから、そのルールを気に入らない者が持分を譲渡してしまうとルールに縛られない新持分権者が出現し全体としてルールが無効になってしまうこと、また共有者は民法259条により共有物の管理等の負担について互いにその持分を担保に出し合っている関係にありますが、持分の譲渡により担保を消滅できるのでは不当であること、ということです。

前者の理由については区分所有の場合には、共有物に関する取り決め事項は一般に30条による規約でなされ、規約の特定承継時の取扱いは別途46条に本条と同趣旨の規定がありますから、本条が問題となる場合はないようです(ただし、規約がない場合は区分所有者間の取り決め事項の承継に本条が適用されることはあります。)。
従って、本条の立法趣旨は、金銭債権に関し前条の先取特権の目的物(区分建物等)を譲渡することにより先取特権を消滅させることを防止するものといえるでしょう。

3.特定承継人となりうる者。
従ってまた、本条の特定承継人は前条の先取特権の目的物の現在の所有者である必要がありますから、元々の本来の債務者から何度特定承継がなされていようと現在の区分所有者ということになります。
その反面、この責任は法が特に現在の区分所有者に認めたものですから、本来の債務者でもなく、たとえ債務を認めても先取特権の保存に何ら意味のない中間の取得者は本条の承継人にあたらないこととなります。

4.特定承継のもう一つの立法理由について。
なお、この立法理由に関しましては、不払い費用相当額が建物に化体し又は組合財産を形成しているので当該持分を取得した特定承継人が支払い義務を負担するのが当然であるとその不当利得性を根拠とするのが立法担当者の説明ですが、58年改正による被担保債権が拡張され必ずしも不当利得者の地位を承継したとはいえない債権もありうる以上、統一的な説明(積極的な理由付けとはいえませんが)としては上記のように理解するのが妥当であろうと考えます。

5.特定承継人の責任。
本条により、前条の債務について特定承継人と本来の債務者が連帯して弁済する責任が生じます。
この関係は当事者の合意によらない法律の規定に基づくことから不真正連帯債務とされますが、実体は本来の債務者の肩代わりをするのですから通常の場合(当事者の合意により承継人が支払うこととした場合以外の場合)は、保証債務の規定を準用して催告・検索の抗弁権を認めても良いでしょう。
通常の場合に承継人が支払った場合は本来の債務者に求償する訳ですから、組合としてもまず本来の債務者から回収することを要求されても不当とはいえないでしょう。

なお、この特定承継人の承継義務は本条に基づく法定責任ですから、特定承継人がその債務の存在を予め知っていることを要しません。
従って、通常の売買(重要事項説明書にどういう記載があろうと)であろうと競売(物件調書にどういう記載があろうと)であろうと買主が知らなかったというのは言い訳にはなりません。
ただし、この特定承継人の負担は当該売買契約や手続きの瑕疵として売買当事者間等で精算されることとなります。

(建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定)
第九条 建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。

1.推定規定。
第9条は不法行為の原因の推定規定です。マンションの建物は不動産即ち土地工作物に当たりますから、一般不法行為責任のほか所謂民法717条の土地工作物責任が生じます。本条は民法717条の土地工作物責任の特則としての責任者および因果関係の存在の推定規定です。

2.土地工作物責任。
土地工作物責任とは、一般不法行為の特則として土地の工作物から生じる危険をその支配者たる占有者と所有者に負担させるもので、設置又は保存に瑕疵があるとは、建物等の新設・増改築・変更時やその後これらを維持管理している状況下において欠陥があること、即ち建物等としてその用法に使用されるに際し通常要求される安全性を欠いていることをいいますから、何らかの損害が発生すれば通常は安全性に欠陥があると判断されることになります。
更に、この責任では占有者は損害発生防止に必要な注意を払うことで免責されますが(現実にはほとんどこの免責は認められませんが)、所有者は不可抗力以外免責の無い無過失責任となっていますので、被害者に対する救済が厚く、所有者に対する責任が重くなっています。

3.責任発生の例。
建物での事故として一般に想定されるのはいろいろありますが、建物本体に起因するものとして看板、外壁タイルやコンクリート片の落下による人損や物損事故、エレベーター閉じ込め事故等があり、被害者の過失も競合する例としてエレベーターやエントランスドアの挟まりや衝突事故、建物内外の転倒事故や駐車場設備に係る事故等があります。また、加害者が競合する例としてベランダからの落下物事故、加害者が発生時には不明確なものとしての漏水事故などがあります。

4.推定規定が必要な理由。
これらの事故の被害者が損害を賠償してもらおうとするときに誰が占有者や所有者であるかが問題となります。
即ち、建物から被害を受けても正当な責任者である占有者や所有者を相手にしなければ賠償を受けることはできません。
ところが、区分所有建物を含む一棟の建物の場合は共用部分と専有部分が存在しそれぞれ所有者と占有者が異なりますから、誤った相手に請求しても賠償を得ることはできません。
このように、1棟の建物を区分することにより被害者に一般の建物より不利益な結果となるのは不当ですし、更に一般には被害者が加害の部位を特定して当該部位が共用部分か専有部分か調査判定することも困難です。
そこで、区分所有建物を含む一棟の建物から被害を受けたときに共用部分に起因する損害と推定することにより裁判時に被害者が共用部分の所有者と占有者を相手に損害賠償を請求すればよいとして被害者の便宜をはかる必要があるわけです。
一般的な事例としての外壁タイルやコンクリート片の落下事故、エレベーター閉じ込め事故や駐車場設備事故等を考えても外壁・躯体・諸設備等他人に損害を与える惧れのある建物の部位はほとんど共用部分ですから一般常識にも適う規定といえます。

5.推定規定の効果。
この規定の存在により、被害者は建物の設置・保存の瑕疵により損害を蒙ったことを主張立証すればよく、共用部分からの損害かどうかを立証する必要はありません。そして、被害者は建物に起因する損害について管理組合に請求すれば管理組合が占有者や所有者(正確には組合員全員)として土地工作物責任を負うこととなります。
勿論、被害者に過失があれば過失相殺として賠償額がそれだけ減額されますし、また加害者の競合の場合は他の加害者に相当額の分担を求償することができます。
更に、原因が専有部分にある場合には、この規定の効力は推定ですから、原告たる被害者は専有部分からの被害であることを主張立証して損害賠償を請求することもでき、被告たる管理組合は専有部分に起因するものであることを主張立証して責任を免れることができます。

(区分所有権売渡請求権)
第十条 敷地利用権を有しない区分所有者があるときは、その専有部分の収去を請求する権利を有する者は、その区分所有者に対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。

1.この請求権が必要な理由。
第10条は、区分所有権の売渡請求に関する規定です。
我が国では土地と建物は別個の不動産とされていますから、建物と土地をそれぞれ所有や利用するにはそれぞれ所有権や利用権を取得する必要があります。
従って建物を所有するには建物の所有権があれば足りますが、その建物は土地上にあるわけですから建物所有を目的とする土地の権利がない場合は、当該土地から建物を収去しなければなりません。
このように土地に対する権利即ち敷地利用権がない建物がある場合に、1棟の建物の場合はこの原則どおりでよいのですが、区分建物の場合は当該区分建物だけ収去することは不可能です。
そこで、土地の権利者に建物の買い取り請求権を認め、土地の権利者に土地の不法占拠者たる区分所有者を排除できるようにすることで区分所有者と土地の権利者との利益の調整を図ったのが本条です。
ただし、一般の場合は土地の権利者は不法占拠者に対し自らの費用で建物を収去し土地を明渡すことができるので不法占拠者の排除に費用負担がないのに比べ、この場合は建物の買い取り代金が発生する分負担が重くなっていますが、建物を取得する以上やむを得ない負担でしょう。

2.請求権の行使方法・性質。
本条は買い取り請求権という権利を認めた規定ですから、通常の売買契約と異なり申込みと承諾という意思の合致は必要ではなく、一方的な意思表示により売買が成立します。
即ちこの権利の性質は形成権の一種です。

売買代金は時価とされ、その内訳は勿論敷地利用権のない建物だけの価格となりますが、一次的には当事者の協議により決定されるものであり、協議がまとまらない場合は不動産鑑定を参考に裁判所の決定する価格となります。

3.行使者・買主とは。
この規定で、売り主の立場は敷地利用権を有しない区分所有者と明確ですが、売渡請求権を行使できる買主の立場は専有部分の収去を請求する権利を有する者とあまり明確ではありません。
元来、区分建物の場合は収去は物理的に不可能ですから、ここで収去を請求する権利とは通常の1棟の建物であった場合に収去を請求できる権利と読み替えて考えるべきでしょう。
そうすると、敷地の所有権者・共有権者(共有権者も各自自己の持分に基づき明渡し請求ができます。)、借地権者・借地権の準共有権者(借地権の性質が賃借権の場合は対抗要件が必要です。)ということになるのでしようか。
なお、条文上何らの制限もありませんから、敷地利用権のみ有し区分建物を有しない者が請求できることは勿論、敷地利用権と区分建物を有する者でも収去を請求できる権利を有する者であれば請求ができ、これらの者が複数いる場合は、原則として各自が単独で請求することも共同で請求することも可能と考えられます。

4.買取請求が生じる場合。
ところで、区分所有権と敷地利用権の分離処分が禁止され(22条)、敷地権の登記がされる一般の場合は本条の適用が問題となるケースが生じるのは稀だと思われます。
しかし、分離処分禁止効が保証されている敷地権(登記された共同で有する敷地利用権)が設定されている場合を除き、そもそも分離処分禁止効は完全には保証されておらず、敷地利用権と区分建物とが別々に抵当権が設定され競売される事態が発生する可能性は否定できません(敷地権登記がない場合も善意の譲受人の権利取得を阻めません。)。また、土地全体に地上権の成立を認めると他の共有者の土地利用権を排除しその利益を害するため競売等により成立する法定地上権は持分の上には成立できず、区分建物の競落人が別途敷地利用権の手当てができない場合にも敷地利用権のない区分所有者になります。更に、準共有の場合で地代不払い等により借地契約を解除される場合にもまた敷地利用権のない区分所有者が出現しますから、本条が必要な場合が無いわけではありません。

5.請求の相手方・売主。
さて、先に敷地利用権を有しない区分所有者は明確と書きましたが、実はそれほど明確とはいえません。
これについては敷地利用権の及ぶべき範囲の他、質的(性質)・量的(割合ないし量)な問題があります。
まず敷地利用権の範囲では、自己の専有部分の存在する空中の立方的な空間という考えもあるようですが、専有部分は空中に遊泳しているわけではなく共用部分たる1棟の建物の基礎や躯体に支えられて存在しているのですから支持物に対する権利も考慮せざるを得ません。そうすると当該支持物は各区分所有者の所有物ですから民法上は少なくとも当該支持物の直下の土地について利用権が必要で、且つそれさえあれば十分です。
従って、各区分所有者は1棟の建物全体の水平投影面積の直下の土地全部に敷地利用権がなければなりません。
この点については、互いの土地を連結して横割り長屋方式の区分建物を建築・所有するケースが問題となりますが、上記の原則からすると黙示的に相互に自己の土地に借地権を設定しあい全敷地について借地権の準共有の形態になっているものと考えられます。
従って、単に敷地の一部に明示的権利がなくとも敷地利用権がないということにはなりません。
次に敷地利用権の性質ですが、これは第2条に記載のとおり所有権又は借地権が原則で稀に使用借権と考えられます。
従って、これ以外の権利でない限り敷地利用権としては十分です。
最後に敷地利用権の量ないし割合ですが、これについては本法にも民法にも明確な規定はありません。
民法上土地との関係では共有や準共有で少しでも権利があれば土地を利用することができますから土地の権利者に対しては建物所有の目的達成自体に量的な支障はなさそうです。
ただ、持分権者は持分に応じての使用権を有するのが原則(民法249条)ですから抽象的には持分権者相互の関係では建物の割合と敷地利用権の割合が合致していることが必要だと言えるでしょう。
ただし、その場合の建物割合が面積を基準とするのか価値を基準とするのか、はたまた他の事情をどこまで盛り込むことが可能か等困難な問題があり、区分所有法改正の論議毎に論点になりながら結論が出ない問題となっています。
従って、以上を総合すると敷地利用権が0の場合でない限り、確定的には敷地利用権を有しない区分所有者にはならず、本条の売主の資格者は敷地利用権をまったく有しない区分所有者ということになります。

第二節 共用部分等

(共用部分の共有関係)
第十一条 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。
3 民法第百七十七条の規定は、共用部分には適用しない。

1.共用部分の共有。
第11条は共用部分の帰属とその法的性質に関する規定です。
共有とは共同で所有することです。第4条にあるように共用部分は区分所有権の目的にはなりませんし、無主物のままに置いておくわけにもいきませんからその帰属を決定する必要があります。
共用部分は読んで字のごとく共同して利用する部分ですから共同利用者に帰属させるのが利用権の安全のために一番望ましいことですから共同利用者の共同所有とされています。
このことは一部の者の共同利用部分も同様ですから一部共用部分は一部利用者の共有とされています。
この結果、共同利用者の利用権限は所有権に基づくものであることになります。

2.共有の種類−共有・合有・総有。
ところで共有には、民法上通常の共有、合有、総有の3種があるとされております。
@共有
通常の共有では、その考え方として、1個の所有権が共有者の持分割合で分属しているという学説と共有者の数だけの所有権が1個の物に成立し各所有権が持分割合で制限しあっていてその総和が1個のものに対する1個の所有権の大きさに等しいとの学説の両説がありますが、いずれも持分の性質が他の持分により制約を受けるとはいえ所有権そのものとしていますから、所有権の性質即ち物を自由に使用・収益・処分することのうち、目的物全体にかかわる使用・収益権は他の共有者の持分の制限を受け持分に応じた使用・収益権となり、処分権には制約がなく持分を自由に処分できるとされています。
勿論、物全体としての処分は持分全部の処分を意味しますから全員で行わなければ効果はありません。

A合有
合有の場合は、民法の組合における共有形態が代表例であり、共同事業のために各自の持分を供出し物の合同所有となる形態で、使用・収益権は共同事業に組み入れられ各自のための利用は不可能となり、持分の処分も共同事業に支障を生じるため禁止されるものです。
ただ、業務執行者(執行代理人)が選任されればその者が、選任がない場合は各自が共同事業の業務執行権の一環として他の者の代理権を有しますから、全員を代理して物の使用・収益・処分を行うことができます。
業務執行権の一環といえない場合は各自に代理権がありませんから、物全体として全員の持分を全員が処分する必要があるのは通常の共有と同様です。

B総有
総有の場合は、部落の入会権における共有形態が代表例であり、部落民に入会地の使用・収益権が認められますが、持分の観念が認められずその処分もありえない形態です。
入会地に関する権利は総体としての部落民全員に帰属し、従ってその権利の処分は全員の合意が必要とされています。

3.共用部分の共有とは。
このように、共有といっても上記のどれにあたるかで各共有者のなしうる権限を異にするので本条の共有がどの種類の共用であるかが問題となります。
ここで法の規定を見ると本条で共有とし、第14条で持分を認めていますから総有ではないようです。また、第15条で持分の処分を制限していますからこれらを総合すると、本条の共有とは合有であると見るのが素直な理解のようです。
しかしながら、構成員の財産所有の性質が合有というのは民法上の組合財産とする考え方であり、管理組合を民法上の組合と理解する考え方です。
団体を構成する場合の各構成員の財産所有の形態は団体の性格により左右されるので、管理組合がどの団体かで結論が異なるはずです。
本条が制定された昭和37年当時の支配的な学説(我妻栄 民法講義中巻二P752)は管理組合を民法上の組合と構成していましたから、本法も合有を前提に立法されたことは想像に難くありませんが、現在では管理組合は一般には(権利能力なき)社団とするものが大勢をしめておりますので立法時と見解が異なっています。
そうすると管理組合財産は社団である管理組合自身の財産と考えるのが現在の見解の結論てあるべきでしょう。
従って、この社団即ち管理組合が法人の場合は名実ともに管理組合の財産であり、権利能力なき社団の場合は形式上の権利帰属能力がないため実質的には組合の形式的にはその構成員総員の財産(構成員各自からは総有と見られる状態)となることになります。

結局、本条1項は管理組合が民法上の組合であるケースには組合員各自が共用部分を合有する旨の規定となりますが、管理組合が権利能力なき社団である場合は総有を、更に管理組合が法人の場合は意味のない規定(社団の財産に対する潜在的権利を表すのみ)ということになります。
但し、総有だからといって、共用部分の取扱いが入会地の処分例のように全員一致が要件になるわけでは有りません。
また、本条は2項の規約という手段以外に共有しない場合を認めていませんから、共用部分の負担等を逃れるため持分の放棄をしても無効です。

4.規約による所有形態の変更。
第2項は、規約で定めることにより、共用部分が全員の共有であることや一部共用部分が当該一部の者の共有であることを変更することができるとする規定です。
共用部分や設備でも、全ての階に着床する非常用エレベーターと低層階用・高層階用エレベーターのように全員が均等に恩恵等を受けるものや一部の者がより多く受けるものなどがありその全体共用性は様々です。
また、一部共用部分については一部共有者が組合を構成して独自に管理できるのですが、組合内の小組合を結成運営するのも手続きが煩瑣なことは避けられません。
そこで、各々の実態に即した共用部分・設備等の帰属や管理単位を規約にて確認・設定できるとするのが本項です。
ただし、共用部分が区分所有者に帰属することは当該部分の共同の利用を保証する担保ですから、区分所有者か管理者でなければ共用部分の所有者にはなれないこととなっています(第2項但書)。

5.民法177条の適用除外とは。
共用部分は、専有部分と分離して処分ができず、且つ法定共用部分は単独で所有権の目的はなりえない部分です。
また、規約共用部分も規約共用である旨の登記を行うことにより取引を記録する甲・乙の両区が閉じられ取引の客体性を喪失しますから、いずれも取引の目的となりえません。
従って、共用部分に関し権利の得喪変更を第三者に対抗するという自体は生ぜず民法177条の対抗要件としての登記は不要です(第3項)。

第十二条
共用部分が区分所有者の全員又はその一部の共有に属する場合には、その共用部分の共有については、次条から第十九条までに定めるところによる。

第12条は、共用部分に対する共有についての民法に対する特則を定めることの宣言規定です。
13条からの7か条の総則的な位置付けですが、あまり内容がありません。
本条の積極的な意義としては、13条からの7か条に記載した事項については当該条項が民法の原則ないし条文に優先して適用されるということ、消極的には13条からの7か条に記載のない事項はなお民法の条項ないし原則の適用があるということ、を規定するものです。
しかし、両者の条文を比較すると概ね重なり合っていますから民法の条文の適用の余地はなさそうです。

ところで、全員又はその一部の共有に属する場合にはとされていますから、そうでない場合は13条からの7か条の適用はないことになりますが、11条で共有が原則であることを宣言している以上13条からの7か条の適用があるケースが原則ということになります。
ちなみに共有に属さない場合とは管理所有が設定されている場合の当該管理所有部分です。

(共用部分の使用)
第十三条 各共有者は、共用部分をその用方に従つて使用することができる。

1.民法との違い。
第13条は使用方法に関する規定です。
民法249条では共有物の全部につき持分に応じた使用ができると定めていますからその特則ということになります。
民法が対象とするのは1個の物であり、1個の一部の使用というのも通常考えにくく、誰かが使用すれば他の人はその間使用できなくなるのが原則です。
そのため持分に基づく使用権は持分割合によるとして公平を保つ考えに立っています。
しかし、共用部分は通常共同使用が可能な部分であり、持分に応じた使用とする必要性もなく又そうした結果は妥当でもありません。
従って、各区分所有者は持分の多寡にかかわらず共用部分を使用することができるとするのがこの規定の趣旨です。

2.用法とは。
なお、用方とはその物の本来的な目的・性質・用途により定まった使用方法という意味ですから、この点は民法249条でも当然のことです。

ところで、用方に従った使用とは玄関を玄関、廊下を廊下、壁を壁として使用するということであり、その意味では至極常識的で当然の規定ですが、共用部分の多様性からも用法の内容が必ずしも一義的に明確なものとはいえません。
しかし、共用部分は専有部分の便益のための部分ですから共同の利益を害しない限り専有部分の便益に資する方向でその用法を決定するのが望ましいと思われます。
従って、特定の専有部分を構成し又はそれに隣接する床・壁・天井・ドア・窓等の障壁の用法は当該専有部分の十全たる使用に支障がない範囲(壁に額や時計をビス留めし、床にカーペットをビス留めする等)に及び、エントランス・エレベーター・屋上等の用法は建物の全体としての専有部分の十全な使用に支障がない範囲(共用部分を通してインターネットの配線を行う等)に及ぶと思われます。
以上のように解しても用法の理解の多様性の結果、各自が勝手に共用部分を使用することによる混乱を防止するため、一定の事項を管理組合の承諾事項とすることができることは勿論です。

(共用部分の持分の割合)
第十四条 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
2 前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
3 前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。
4 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

1.持分とは。
第14条は持分に関する規定です。
持分という用語には持分権という意味での共有の権利そのものを指す場合とその割合(持分割合)を指す場合がありますが、ここでは割合を意味しています。
共用部分は区分所有者の共有ですから共有者間の関係を適正に処理するためには各共有者の権利や義務の割合を定める必要があります。それが持分割合です。

2.持分決定の基準。
持分割合を何を基準に定めるかについては、いろいろな考え方があり大別して面積を基準とするか価値を基準とするかに分かれますが、単一的且つ客観的な基準として一般には面積基準が勝るというべきでしょう。
1棟の建物を物理的に観察すれば専有面積の単位面積当たりに必要な共用部分は一定のはずですから各専有部分が必要とする(即ち各専有部分に付随する)共用部分の量(割合)は専有部分の面積に比例するというのは一応の合理性がある考え方です。
そこで本条1項では面積基準の採用を宣言しています。ちなみに民法や商法では一般に出資割合が基準となっております。

3.持分の実際の効果。
ただし、民法と異なり共用部分を使用する権利は持分の多寡に係りませんから、持分を決定する実益は議決権という名の発言権の割合と管理費等の負担の割合の決定基準となることとなります。
そうすると区分建物の用途が異なる等により発言権の割合と管理費等の負担の割合を他の用途の建物と異にすべき理由のあるときは建物価値も考慮した持分割合を設定する必要があります。

4.持分算定の方法。
第2項は、一部共用部分の面積算入規定です。
一部共用部分は一部の者のみの共有に属するため全体共用部分との関係においては専有部分に準ずるものと考えられます。このことは当該一部共用部分(に関する専有部分)を1人の者が所有している時を考えれば明らかであり、これらの者と全体共用部分のみを所有する者との関係を公平に取り扱うためには一部共用部分の面積を当該一部共有者の専有面積に加算して全体共用部分の持分算定の基礎とすることが必要だとするのが本項の趣旨です。

しかしながら、一部共用部分はあくまで共用部分で専有部分ではなく、一部共用部分が専有部分と同程度に共用部分に負荷を掛け又はその恩恵を蒙る部分であるかは疑問です。この規定により一部共有者は一部共用部分の負担に応ずる他一部共用部分の負担する全体共用部分の負担にも応じなければならずその結果が妥当かには疑問があります。

5.専有面積の算定方法とその意味。
3項は、専有面積の算定方法を定めた規定です。
所謂内法面積を採用しています。これはまた区分建物の登記面積でもあります(1棟の建物面積は戸建てと同様壁芯面積ですが。)。
専有部分の範囲に関しては壁芯説と上塗り説(内法説)が有りましたので面積計算の両基準もこれらに対応しているものといえます。
しかし、本項の面積は専有部分の範囲を計測する趣旨ではなく共有持分算定の根拠としての基準を求めているにすぎません。
従って、専有部分の範囲に関する内法説等のどれを採用するかという問題と本項の面積算定基準をどれにするかとは全く無関係といえます。事実標準管理規約でも専有部分の範囲は上塗り説ですが持分算定上の面積は壁芯面積としております。

6.壁芯面積と内法面積との違い。
壁芯面積を採用した方が将来的な区分建物の合併・分割時に専有総面積の変更が必要ないこと、建築中で内法面積が算定できない時期に規約等を作成する場合は壁芯面積(建築確認申請面積)を使用する必要があること等から、この面積の計算方法は壁芯面積基準が望ましいといえます。

7.任意規定−規約による変更の許容−。
4項では、前3項(これは前の第3項を指すのではなく、これより前の3つの項という意味です。)即ち第1項から第3項の原則を規約で別の定めに変更することの許容規定です。
従って、1項の持分算定の面積基準を不動産鑑定に基づく価格基準に変更したり、複合用途建物で各用途別に一定の乗数を乗ずる等により合理的な持分算定方法に必要に応じて変更することができます。
また、2項では一部共用部分の面積算入をしないとする扱いやその半分だけ算入する扱い等その建物にあった変更ができ、3項の内法計算の原則を壁芯計算に変更すること(実際のほとんどの規約はこの変更を行っています。)ができることになります。

(共用部分の持分の処分)
第十五条 共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。
2 共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。

1.一体性の原則。
第15条1項は、専有部分と共用部分の処分の一体性を定めた規定です。
この法律では区分所有権と共用部分の持分権は別個の権利とされており、専有部分と共用部分は建物の部分として別個の部分とされていますが1棟の建物の主役はあくまで専有部分たる区分建物であり共用部分は専有部分が十全な効用を発揮できるための従たる部分にすぎません。
従って従物は主物の処分に従う(民法87条2項)との原則に基づき共用部分の権利は専有部分の権利の処分に従うとしたのがこの規定です。

尤も民法での従物は独立した物で本来単独処分が可能なものですが、共用部分はそのような独立した権利の客体となるには本来なじまないものですから主物たる専有部分との結びつきはより強固な関係にあります。

更に別の観点から考えると、共用部分の持分は合有又は総有における持分ですからもともとそれ自体の処分はありえず団体の意思による他構成員の地位と共にしなければ処分できないものです。そしてこの団体の構成員の地位は専有部分の得喪により、あるいは取得しあるいは失いますから、共用部分の持分(ここでは14条と異なり権利の意味です。)は専有部分の得喪による団体構成員の地位の得喪に応じて得喪することとなります。即ちこの規定は共用部分の権利は専有部分の権利と一体となって、移転しあるいは消滅することを宣言した規定と理解することもできます。

2.一体性の効果。
この規定により、特定の区分所有者が自己の専有部分を譲渡や担保の設定をすれば自己の共用部分の持分も当然に(仮に譲渡等の意思がなくても、譲渡・担保目録から漏れていようとも)譲渡等をしたことになる反面自己の専有部分と分離して共用部分の持分を譲渡しても、共用部分の持分を留保して専有部分を譲渡しても共用部分の譲渡や留保は無効となります。
なお、処分とは所有権の譲渡・その原因となりうる各種担保権の設定・放棄・民法602条を超える使用権の設定等をいいます(民法602条内のものは管理行為として18条の規制を受けるものと考えられます。)。

3.一体性の例外。
2項は、第1項の例外規定です。この項の「その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。」ということは第1項の「専有部分の処分に従う。」ことを言い換えたにすぎませんから、2項の代わりに第1項に「ただし、この法律に別段の定めがある場合はこの限りでない。」と規定するのと同じです。

そこで何が特段の定めになるかですが、全体財産としての共用部分全体の持分の場合は、まず管理所有が専有部分の権利を保持したまま共用部分の所有権を管理所有者に移転するものですからこれに該当し、次に持分は規約で設定・変更することができるという意味で持分変更を内容とする規約の変更がまたこれに該当します。

ただ、規約変更による場合は各区分所有者の所有権の割合を変更することとなるため増築等によって持分算定の基礎が変更された場合等特段の事由がない限り、特別な影響があるものとしてその承諾(全員の合意)が必要となるでしょう。
更に個々の財産としての特定の共用部分の持分の場合では、特定の共用部分はその所有団体たる管理組合の意思により処分されますからその場合も当該部分の持分が専有部分と分離して処分されます。

(一部共用部分の管理)
第十六条 一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの又は第三十一条第二項の規約に定めがあるものは区分所有者全員で、その他のものはこれを共用すべき区分所有者のみで行う。

1.一部共用部分の管理方法。
第16条は、一部共用部分の管理の管理の特則を定めた規定です。
一部共用部分は一部の者のみの共有に属しますから所有者の責任として当該一部共有者のみの責任と負担で管理するのが原則です。
しかし、このように全体管理組合と一部管理組合が並存して各々の管理対象を管理するのは組織が重複して不経済でもありますから全部全体管理組合が管理することにしても当事者がそれを望むならかまわないわけですし、反面一部共用部分の管理が全体に影響を与える場合には全体の利益のためには一部共有者が勝手に管理することは全体に迷惑損害を与える虞がありますので、それを未然に防止するため初めから全体管理組合で管理する必要もあります。
このような理由により、16条で一部共用部分の管理の管理組合への強制移管と任意移管を規定しています。

2.一部共用部分の例。
ところで、一部共用部分とは一部の者のみの共用に供されることが明らかである部分(3条後段)とされますが、具体的にどのようなものがそれに該当するのかよく分かりません。
考えうる事例としては駐車場は3方が閉じられていれば区分建物登記が可能ですので地下駐車場の3方が閉じられたブース単位で区分登記すれば車路が駐車場のみの一部共用となり、駐車場の消防設備等が全員の利害に関係するものとしてその管理が管理組合に強制移管されることですが、通常のマンションでは各階の廊下といってもその階だけの共用とされることが明らかかは疑問がありますので、一般にはあまり利用されない規定のようです。

3.一部共用部分の組合による管理の場合。
なお、強制管理の場合は本条で強制的に管理がなされますが、任意管理の場合は規約でその旨(管理対象範囲に明記するだけですが。なお、強制管理の場合も同様です。)記載する必要があり、且つその規約設定・変更には一部共用部分の共有者の議決権及び員数の1/4を超える反対があるときはできないこととして(法31条2項)一部共有者の意思も尊重しています。

本条による管理移管で管理組合に当該一部共用部分の管理権限が生じますが、その場合の管理費用は本来の負担者である当該一部共用部分の一部共有者の負担のままであることが原則でしょう。

(共用部分の変更)
十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

参考 旧法(共用部分の変更)
第十七条 共用部分の変更(改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

1.民法との違い−要件緩和の理由−。
第17条は変更行為に関する規定です。
1項は、共有物の変更を共有者の議決権(規約で特段の変更のない場合には持分)および共有者数の各3/4の多数決でできるとして、同様の事項に関する民法251条の全員の合意の原則の特則を定めた規定です。
区分法でも昭和58年改正前の旧法では民法の原則である全員の合意を必要としていましたが、それでは1名でも反対の人がいると多くの人が必要とする改善工事ができなくなる等の不都合がありますので、全員の合意を所有者及び議決権の各3/4の多数という条件に緩和したものです。

2.強行規定。
本来全員の合意を必要とする行為を法が緩和した規定ですから、規約等の当事者の合意でこれを更に緩和したり制限を強めたりすることはできません。その意味でこの規定は強行規定です。
ただし、持分の帰属に偏りがあって一部の者が大多数の持分を有するような場合に多数の少数持分権者の一部の者の反対で必要とする改善工事ができなくなる等の不都合を回避するため区分所有者の定数要件は、規約でその過半数まで減ずることができるとされていますので、この範囲の緩和は法が認めているといえます。
この緩和の趣旨が妥当なものかどうかは議論のあるところですが、区分法が財産管理の法である民法の特則規定である性格が現れている規定と言えます。

3.変更とは。
ところで、区分法は民法の規定方式を受けて、最広義の管理を変更・管理・保存(広義の管理の一種)の3形態に分け、これを17条・18条1項本文・18条1項但書にそれぞれ規定しています。
このうち、保存は物の価値(使用価値・交換価値)を維持・保存すること、管理は物の使用(使用価値の実現)及び改良(使用価値や交換価値の増加)すること、変更は物の形状・性質・特性を改変(使用価値や交換価値の改変)することを意味する概念といえます。
このように変更とは物の形状・性質・特性を改変しもってその使用価値や交換価値の改変することをいいますから、目に見える物理的な概念としての既存の物の増設・除去・追加・改変のみならず、用途の変更、管理行為を超える使用権の設定等の無形の行為も使用価値や交換価値の改変として変更に該当することになります。

新法では、変更行為をその形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除くとして、民法での通常の定義どおりのものに変更規定を改正しましたから、形状又は効用の著しい変更を伴わずに原状を回復するものであれば所謂大規模修繕工事も管理行為の一環として通常決議で実施できることになります(これがこの条項の改正の趣旨でもありますが。)。

4.変更判断の基準。
なお、ここでいうところの変更・管理・保存は対象とする1棟の建物全体の価値に対する概念であり、特定の一部分を対象とするものではありません。
なぜならば、そうでないと全体的見地からは管理行為や保存行為であっても当該一部分から見ると変更や処分に該当してしまい18条で過半数要件や単独行使を認めた趣旨が意味をなさなくなってしまうからです。

以上のとおり変更を定義しても抽象的なものに止まり具体的場合に管理行為と区別される共用部分の変更行為とは果たして何かはあまり判然としませんが、その実施手続きが通常決議と特別決議に分かれることから双方に該当すると思われる事項については当該行為の性格、内容、実施方法や各人に及ぼす影響、負担額等を当該時点の社会常識に照らし総合的に判断して決することになるようです。
これを端的に表現すれば、変更行為の場合は皆を呼んで相談しなければ決められないと思われる事項であり、管理行為の場合は来た人だけで決めても欠席した人から文句を言われないと思われる事項と言えるでしょう。

5.変更か否かの判断。
ちなみに、エレベーターに遠隔監視装置を設置する場合は、安全性の向上として使用価値や交換価値の増加が見込まれ改良概念に該当すると共に機器の新設や価値の変更という意味で変更概念にも該当しそうですが(設置工事に伴う共用部分への加工自体を変更とすべきではありません。)、既存の機器の常識的な範囲の機能向上を目的とするものに過ぎず管理行為に含む改良と思われます。
また、インターネット回線の新設も現在では同様に管理行為といえるものと考えます(この点に関しましては何を選択するかの方が問題かもしれません。)。


6.旧法での著しく多額とは。
なお、以上は、共用部分の変更は、形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除き、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決するものとするとする本条の改正後でも同様と思われますが、旧法では性質上の変更となるかどうかに係らず著しく多額の費用の場合を変更に含めておりました。
ただし、、この規定自体は新法と矛盾するものではなく、そのままこの規定を存続させる場合には管理行為のうち特に特別決議を要する規約の別段の定めとして新法施行後も有効といえますので、この規定を持つ管理組合では新法施行後も著しく多額とはいくらかが問題となります。

これも抽象的で巾のある概念であり、結論的にはケースバイケースの判断となりますが、経常的に支出する修繕費等の額と比べて絶対額が明らかに多額であるか、又は各自の負担額が一時金で徴収するとしたら皆を集めて相談する必要がある程度に高額かを(反対から言えば、この程度の負担でいちいち呼ぶなと思われない額)、判断することとなるものと思われます。

7.特別の影響とは。
2項は、共用部分に係る既得権者の既得権保護の規定です。
共用部分の変更は既存の共用部分の形状や使用方法等の現状を改変するため全員に何らかの影響を及ぼすことは避けられませんが、その影響が特定の専有部分や専用使用権設定部分その他特定の区分所有者の共用部分との係わり合いに特に強く発現する場合もあります。
この場合に一方で、多少の影響があるからといって変更を拒絶されるのでは円滑な共同生活は成り立ちませんが、他方で特定の者に通常受忍すべき範囲を超える程度の受忍を強いる場合は多数による少数の圧迫としてそのような行為が制限されるのもまた当然です。
このような趣旨により、変更が特定の区分所有者に通常の受忍範囲を超える場合にはその承諾を必要とするのが2項です(この反対の解釈として、特別の影響がない限り個々の承諾は不要ということで、現実にはこの意味で使われるのが多い条項です。)。

何がこの特別の影響かもまた抽象概念ですから個別的な判断となりますが、工事の目的、性格、内容、方法、必要性と影響の性質、内容、程度、必然性ないし回避可能性、代償措置等を総合的に判断する必要があるでしょう。

(共用部分の管理)
第十八条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。
4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。

1.民法との違い−員数要件−。
18条は共用部分の管理に関する規定です。
1項では、最広義の管理のうち前条の変更の場合を除く範囲の管理(広義の管理)について集会の決議で決するものとされています。
そして、集会の決議は法39条1項で区分所有者及び議決権の各過半数で決するとされていますから、前条、本項本文及び但書を総合すると最広義の管理のうち、変更は区分所有者及び議決権の各3/4以上(3/4を含み、可決となります。)、保存を除く狭義の管理は区分所有者及び議決権の各過半数(半数は含まず、否決となります。)、保存は本項但書により集会の決議も不要で区分所有者が単独でそれぞれ可能ということになります。

このことを法の原則である民法を例に対比してみますと、民法では1個の物を対象とし、且つ各共有者の所有権が並存する通常の共有についての規定ですから、各自の意思を無視することはできずその物の使用価値や交換価値を維持することは保存行為者のみならず全員の利益となるため各自が単独でできるとし、またある人の使用価値の実現は他の共有者の使用価値の実現と衝突することになるためその調整を持分の過半数という方法で行うこととしています。更に目的物の形状・性質・特性の改変である変更に関しては全所有者の個人的利害にかかわるため全員の承諾を要することは当然と思われます。
これに対し、区分法では、保存行為は全員の利益行為として民法の原則どおりですが、管理行為は民法と異なり各人個人的な利益も配慮に値することから区分所有者数もカウントの対象とし、且つ民法と異なり当然の区分所有者団体の成立を認め、集会という組織・機関を設置していますからその承認も集会の決議で決するとしています。
更に、変更は前条での説明のとおり全員の合意では事実上管理が不可能となることに鑑み民法の原則を強制的に緩和して集会の区分所有者及び議決権の各3/4以上の決議に変更していることが分かります。

2.管理と保存。
ここで管理(狭義)とは、前条の変更に至らない共用部分の使用・収益・修繕・改良その他一切の行為のうち保存を除いた行為を指称する概念といえ、変更・保存行為以外は全て管理行為です。
従って、本条は変更の場合の取扱いを定める前条と一体として、共用部分に関する全ての行為は原則として集会の議決に基づく必要があるとする集会中心主義を定めた規定と言えます。

なお、保存行為は物の現状を維持する行為で、その使用価値や交換価値を保存する行為をいいます。
一般には不法占拠の排除や管理費用の立替え等がその例に挙げられていますが、単独行為での行使を認められていることからも分かるように、保存行為とはその実施が全員の利益になりこそすれ誰からも反対がなさそうなものが想定されていますので、価値の保存ということから新築時の価値を保存・回復する工事のようなものはその範囲を超過するものといえます。

3.処分行為という考え。
ところで、最広義の管理とは処分に対する概念ですが、法が明文で規定する変更・管理・保存の場合以外に処分行為がありうるかは一つの問題です。
これに関しましては、対象とする共用部分全体の見地から考察するときには管理・保存行為にも部分的な処分が包含されること、本来全員の合意が必要な変更を特別多数の賛成と緩和していること、共用部分は形式的には全員の総有であるとしても実質的には管理組合団体の所有でありその処分というのは実質的に団体の事務の執行に過ぎないこと等からすると、当該処分行為は本来処分行為として独立にその是非を判断すべき問題ではなく当該行為が1個の行為の場合は当該行為自体または当該行為がある目的を達成するための一連の行為の一部の場合は当該行為を含む全体としての行為が共用部分全体の見地から変更に該当するのか、それとも管理か、保存かで必要な手続きを踏めば足り、当該行為自体を抜き出して処分行為云々する必要はないものと思われます。

4.任意規定−規約による変更の許容−。
2項は、第1項の原則である管理行為は集会の決議で決すること、保存行為は、各共有者がすることができることについて規約で変更を認める容認規定です。

具体的には、管理行為を理事会の決議で決することにしたり、管理者の判断で実施したりし、また保存行為が各人の判断で実施できることには保存行為の該当性判断が各人各様では収拾がつかなくなりますから規約で原則として個人の行使を禁止すること等が考えられるでしょう。

ただ一般のマンションで範囲の広範な管理行為の実施権限の全てを総会以外の機関に委譲する必要性や妥当性は考え難いところですが、集会(総会)は区分所有者全員で組織する非恒常的な機関ですから総会が共用部分の管理運営の全てを行うということは決して現実的ではありませんので管理行為の軽微又は総会で大綱を定めた細目的な部分を理事会等の下位機関に委譲することは必要性や合理性が認められるでしょう。
このように2項は各管理組合の実情に合わせ規約により総会と理事会・理事長との間で相当な管理行為の権限の配分を行うときの根拠規定となるものといえます。

5.特別の影響。
3項は変更の場合の特別の影響を受ける者に対する承諾取得義務の管理行為への準用規定です。
管理行為と変更行為は程度の差に過ぎないともいえ、特定の区分所有者に対する影響も管理行為の場合には発生しないとはいえませんから、管理行為が特定の区分所有者に特別の影響即ち受忍限度を超える受忍を強いる場合には当該区分所有者の承諾が必要とされるのは当然でしょう。その場合の判断基準等は前条2項の場合と同様です。

6.損害保険の特則。
4項は、損害保険の付保契約を管理行為とみなす見做し規定です。
見做し規定とは、本当はそうではないものをそう扱う特別規定で、損害保険の付保契約は内容に如何にかかわらず、この規定により管理行為として扱われることになります。

損害保険とは、火災保険等のように偶然の事故で物に生じた損害を填補する保険をいいますが、その場合に保険金を受領できるのは被害者即ち物の所有者となります。
そこで誰が共用部分の所有者かが問題ですが、これを管理組合自身とせず区分所有者個人とした場合(合有や総有の考えはこういう結論となります。)は、各個人が自己の保険金をそれぞれ請求することになります。
しかし、もともとこの保険金は事故で傷ついた共用部分の修復に使用されるべきものですから、この請求を組合の事務として一括して請求できることがその目的に添う結果です。
このような理由により組合事務であることを正面から認めて(みなす、とする限度ではありますが。)個々の区分所有者の請求を認めないとするのが、保険事項を管理事項(即ち組合の事務ということ。)とする本項の趣旨といえます。

(共用部分の負担及び利益収取)
第十九条 各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。

1.趣旨。
第19条は共用部分の負担及び利益収取に関する規定です。
物の所有者は、その所有権に基づきその物を自由に使用収益することにより(民法206条)その利益を享受する訳ですから、その反面、受益の責任としてその物の費用を負担することは当然です。

そして、物が共有の場合は各所有者(共用者)の所有権の割合が持分ですから共有者の利益の享受(民法249条)と負担(民法253条)が持分に応ずることもまた当然であり、19条は区分所有の場合においてこのことを確認する規定といえます。

即ち、19条は、1棟の建物のうち専有部分を除く部分の共用部分は区分所有者全員の共有とされ(11条1項)、その持分は原則として床面積の割合によるとされていることから(14条1項)、区分所有者全員が共用部分の所有者としてその費用を分担し、その利益を享受するという原則を宣言する規定です。

尤も、この負担義務ということも、物が単独所有の場合には所有者がその物をどう管理するかは他人に損害を与えない限り自由であり、極論すれば廃棄するのも自由ですから管理費の負担義務といっても他に負担する者がいないという消極的な意味合いですが、共有の場合には複数の所有者が存在しますので持分を放棄しない限り廃棄も自由とはいかず、持分の多数決で管理方針が決定されればその費用は各自が持分に応じて強制的に徴収されるという積極的なものになるという違いは有ります。

更に、11条で共用部分の実際の所有者が団体としての管理組合であって個々の区分所有者ではなく、区分所有者は形式上の所有名義人に過ぎないと考える場合は、19条の規定は所有者の権利義務ではなく管理組合という団体構成員としての区分所有者の権利・義務を定めた規定であるといえるでしょう。

2.負担の内容。
ここで、負担とは、共用部分の清掃費・照明代・動力費・管理人人件費・エレベーターその他機器の保守点検費等からなる管理費と大規模・計画修繕費からなる修繕積立金のように共用部分を維持・保全・修繕・改良するための費用および共用部分に起因する不法行為の賠償金その他共用部分に関して発生する一切の責任をいいます。

なお、このような定義付けや「共用部分の負担」という文面からは管理や修繕に関する直接費用のみが本条に該当し、会議費や通信費等の組合費的な費用や徴収費等の間接費については定めていないようにも思われますが、このような間接費も区分所有者に便益を与える一方、他に負担者がいないという点では共用部分の負担である直接費と同様ですからこれらの間接費用に関しても本条が準用又は類推適用され、それらの費用も持分に応じて全員で負担するものであると考えるべきでしょう。

3.負担の内部関係と対外的関係。
ところで、一般に実際に管理業務を実施するのは管理会社等(工事業者や電気ガス水道の供給者等管理組合に物品サービスを提供する者を広く含む。)であり、現実的な費用負担の流れは管理会社に対して管理組合が委託費を負担する、各区分所有者は管理組合に対して委託費の持分負担分を負担するという形態になります。

従って、このような費用の負担を考える場合には、ここに登場する管理会社等、管理組合、区分所有者の三者間の問題として@管理組合と実際の管理業務や修繕業務を実施する管理業者等との関係、A管理組合とその構成員である区分所有者との関係、およびB管理業者等と区分所有者との関係を検討する必要があります。

このうち@は純然たる民法上の契約関係ですから特に区分法上考慮を要する問題はありませんが(管理組合側の契約主体が管理組合の実体が管理組合法人と権利能力なき社団の場合と民法上の組合の場合とで異なりますが、その相違の結果は結局Bの問題に帰着します。)、AとBは問題です。

なぜなら、団体の構成員の責任には、団体内部関係における責任としての構成員の団体に対する責任とその団体外部関係における責任としての構成員の団体外部の者に対する責任が区別され、それぞれが問題になるからです。

4.内部関係。
そこで、まずAの管理組合とその構成員である区分所有者との関係ですが、一般に構成員は団体の資金の出資・負担者ですから出資又は損失負担の割合ないし関係がこれに該当します。

このことは民法上の組合では出資の割合(民法674条、出資自体は最初の組合契約で定まる。)であり、社団の場合は定款で定めることとなりますが、出資額が平等でない限り組合の場合と同様に出資の割合とする取扱いが最も公平な方法といえるでしょう。

ところで、管理組合はその性質が稀に民法上の組合である場合もあるものの概ね権利能力なき社団と考えるべきであり、且つ各区分所有者の出資額はその持分がこれに該当しますから、各区分所有者の損益分配は持分の割合によるとするのが最も公平です。

また、管理組合が民法上の組合の場合も同様でありこの場合も各区分所有者の損益分配は持分の割合によるとするのが最も公平です。そして、この結論は19条に記載する内容そのままですから、19条は第1次的には管理組合とその構成員である区分所有者との内部関係における責任を確認的に定めたものといえます。

5.負担の具体化。
ただ、この19条が単に存在するだけでは、管理組合に対する区分所有者の債務は抽象的な負担義務に止まります。これを現実的・具体的なものにするには、その負担内容が集会決議や実際の費用発生により具体化されなければなりません。具体化された債務は、管理組合に対する現実の支払債務として請求(裁判上の請求を含む)することができ、法7条の先取特権の被担保債権となり、法8条の特定承継人の被承継債務となります。

6.債務の時効期間。
さて、このように具体化された管理組合の債権に関し、その消滅時効期間について定期給付債権(民法169条)に該当し5年間とする考えと一般債権(民法167条1項)に該当して10年間とする考えがあります。

定期給付債権とは、地代家賃や年金のように原則として毎月定期的に支払がなされる債権であり、怠られがちであると共に支払い証書が債務者の手元にないことが一般のため債務者を保護の目的で短期の消滅時効を認められたものです。

確かに実際の管理組合の管理費は月払いが一般で毎月定額の点では地代家賃と同様ですが、地代家賃等が期間の経過による便益の対価を期間経過毎に支払うというルーティンな債務で正に定期給付債権の短期時効の趣旨に合致するものであるのに対し、管理組合の区分所有者に対する債権は組合債務の各区分所有者の分担であって、その実態は元本債務の分割返済(これは定期給付債権ではない。)というべきものですから定期給付債権には該当せず一般債権(民法167条1項)に該当して10年間と考えるべきです。

この点、が論点となった事件の高裁判決では10年説が採られましたが、その上告審の最高裁判決では定期給付債権だとして5年説が採られました。判決理由は高裁判決の方が説得力があります。

7.債権の放棄。
更に、具体化された管理組合の債権の放棄の方法についても争いがあります。

現在の主要な考え方は組合財産は区分所有者の合有ですから、民法の原則どおりその放棄には全員の合意が必要であるとするものです。
民法上合有の場合は持分の存在は肯定されますが、通常の共有と異なり個々の持分の放棄は認められません。
従って、合有財産全体を放棄するには全員が一致して全持分を放棄する必要がありこの意味で全員の合意が必要とされるわけです。

しかし、この考え方は我妻民法講義中2(組合の部)によるものと思われますが、共用部分の変更に全員の合意を要した旧区分法制定時の昭和38年代のもので現在も妥当するものかは疑問があります。

なにより、管理組合を民法上の組合と前提していることが現状にあわず、管理組合は組合ではなく原則として社団と解するべきですからその所有形態は合有ではなく総有として考えなければなりません。
しかも、放棄も処分行為の一種とされますが、合有の代表例である民法上の組合でさえ、少なくとも組合事業に使用される限りにおいては個々の組合財産の処分に全員の合意を要求しておりませんから管理組合が組合の場合でも結論が妥当とはいいがたいものがあります。

そこで総有財産の処分方法が問題となりますが、この問題の検討には区分所有者の総有というアプローチよりも社団財産の処分として民法の規定を参照するアプローチがより適切でしょう。
なぜなら管理組合が社団であるとすれば民法の社団法人の規定が権利能力なき社団にも適用のある社団の本質を規定したものとして社団の通則規定であることに関し異説がないからです。

そうすると、管理組合という社団の財産の処分が社団の事務に該当するのは明らかですから民法63条の精神により総会の決議で処理される事項となることが結論となるはずです。
この結論は、管理組合法人の財産処分がその法人の事務として総会決議で処理されるとする現時の通説と結論を同じくしますが、法52条が民法63条の特則であり且つ民法の社団法人の規定が法人格に関する規定ではなく社団に関する規定であることの当然の結果といえるでしょう。
その意味では、法52条も同様に法人格を認められた結果としての規定というより社団の特則というべきですから、権利能力なき社団としての管理組合の場合に準用ないし類推適用すべきは最終的には民法63条よりは法52条ということになります。

従って、財産の処分が管理行為となるか変更行為となるかの区分により総会の絶対多数決と単純多数決の別や理事等への委任の可能性が検討されるものの全員の合意が必要となるものではないはずです。
また、放棄の対象とされる財産が共用部分か付属施設や設備か(これらが管理行為や変更行為で既存部分が廃棄(放棄)されることは明らかです。)、はたまた債権かに違いはないことになります。

尤も、以上は財産放棄の法的方法に関する検討であり、個々のケースの財産放棄の是非や当・不当は別問題です。法的に有効に放棄(債権の放棄は相手方のある意思表示ですから相手方に意思表示しなければ効力がありません。)したとしても、不当に組合員の権利を侵害した場合は不法行為の損害賠償責任を負うことがあります。

8.対外関係。
次にBの管理業者等と区分所有者との関係ですが、@のように団体が結んだ契約上の債務は一次的には団体がその財産で支弁するのが原則ですから、Bが問題となるのは団体の財産で支弁できない場合の構成員の責任ということになります。

この点、管理組合が単なる民法上の共有者の集合に過ぎない場合は@の契約も構成員が合同で契約した契約当事者となりその契約上の利益を不可分的に享受することになりますので、その反対給付たる債務も不可分債務となることが民法の原則です。
即ち各区分所有者が管理会社等への支払いの全額につき支払い債務を負う関係です。
このような結論をとる学説もあるようですが、管理組合が社団若しくは組合であることを考慮していない結論で妥当とは考えられません。

尤も、専有部分の共有は原則として民法上の共有ですからAの組合債務を各共有者が全額につき不可分債務を負います。

そこで、社団たる管理組合の場合の区分所有者の対外的責任ですが、民法上、権利能力なき社団の場合は構成員は社団債務の責任を負わないというのが原則です。
しかし、社団の債権者がすべからく社団財産のみからの弁済を期待すべきとするこの結論は社団の性格も考慮しなくては不当なことになりかねません。

管理組合は公益を目的とする社団ではなく構成員の利益を目的とするもので社団債務の全てが構成員の便益の対価であることを考慮すると社団債務の最終責任は構成員が負うのが公平といえます。
従って、構成員の対外的責任を肯定すべきですが、管理組合が民法上の組合の場合は民法675条により、社団の場合は法53条の準用ないし類推適用による責任を負うものと考えるべきでしょう。

このことは、法19条の内容と同じですから、19条は区分所有者の対内的責任のみならず対外的責任に関する規定でもあるといえることになります。
このように見てくると、結論的には、管理組合法人の場合に53条が適用されるほか、管理組合が権利能力なき社団と組合の場合は等しく19条が区分所有者の対内的・対外的責任を定めた規定であると理解すべきでしょう。
従って、組合財産で完済されない債務については各区分所有者は持分に応じてその債務を弁済する責任を負うこととなります。
このことは、まさか管理会社等も個々の区分所有者に全額請求を期待してはいないでしょうから結論としても妥当なものと考えます。

9.利益。
以上は区分所有者の負担に関する検討ですが利益の場合もほぼ同様です。
このうち、共用部分の使用に関する利益については法13条で持分ではなく用法に従い平等に使用できることになっていますから、ここで利益とは使用以外の駐車場使用料・各種専用使用料・電柱や看板の設置料等の共用部分の使用の対価が主なものでしょう。
勿論共用部分や附属施設・設備の売却代金や資源ゴミの回収収益等が発生すればそれも含みます。

これらは可分債権である金銭債権となりますので19条をストレートに適用すれば、持分に応じた債権を各区分所有者が取得するようにも思えますが、これらの実態が社団財産の使用の対価等である以上、この財産はまず社団(若しくは組合)に帰属しますので(区分所有者単位で表現すれば総有的帰属と合有的帰属となります。)、各区分所有者への配分も組合財産の処分の一環として総会決議が必要であることは上記の組合財産の放棄の場合と同様です。
従って、この決議無しには各区分所有者は当然には自己の収益分を組合に請求する権利はありません。
その意味で、利益の収取の場合にも19条は総会決議で具体的な債権にならない限り抽象的な権利に止まります。

10.任意規定−規約での変更の許容−。
ところで、19条は負担や利益の持分での配分を原則としてますが例外的に規約で別段の定めを許容しています。専有部分の用途が異なり管理仕様が異なる場合は面積按分の管理費負担は不合理ですし、その他持分によるべきではない合理的な理由があれば規約で相当な負担や利益の配分基準を定めるべきでしょう。
この際、管理費の負担基準と修繕費の負担基準を別に定めることも当然に可能です。

なお、この規定の消極的に使用方法では有りますが、19条の持分負担の原則は1階でエレベーターを使用しないから当該エレベーター管理費の負担を拒絶する意見に対する法の反論という意味合いでの使用も可能かもしれません。
ただし、当該クレームに合理性のある範囲で別の負担基準を策定する事がより公平であることは勿論です。

(管理所有者の権限)
第二十条 第十一条第二項の規定により規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者は、区分所有者全員(一部共用部分については、これを共用すべき区分所有者)のためにその共用部分を管理する義務を負う。この場合には、それらの区分所有者に対し、相当な管理費用を請求することができる。
2 前項の共用部分の所有者は、第十七条第一項に規定する共用部分の変更をすることができない。

1.趣旨。
20条は管理所有者の権限に関する規定です。
尤も、文面上明らかのように権限そのものの規定ではなく権限の制限に関する規定というのがより正確といえます。

2.管理所有とは。
管理所有とは、第11条第2項の規定に基づき共用部分が全員の共有との原則を規約で特定の区分所有者の単独所有又は一部の者の共有(但し、本来的に一部の者の共有である一部共用部分とは異なる。)とした場合の特殊な所有方法を指称する概念で、その主体は区分所有者(法27条で管理者であれば区分所有者でなくとも可)であり、目的物は共用部分、権利の性質は所有権であることは第11条第2項の規定から分かりますが、それ以外の内容に関しては法に規定がなく定かでは有りません。しかし、共用部分が共有から管理所有により単独所有(管理所有者が複数の場合はこれらの者の共有となります。)と変わっても共用部分たる性質には変更がないものというべきですから、その性質に反しない限り13条から19条までの規定が依然として適用されるものと考えるべきでしょう。

3.管理所有の立法趣旨とは。
管理所有制度の立法趣旨に関しては、立法担当者の説明によれば(新しいマンション法)、区分法制定当時に共用部分を実際に管理する者の所有にしているケースがあって、その実態を認めるために規定したものとのことであり、このように管理対象が単独所有であればその委託契約もその者が単独で可能であり管理の便宜に資する、というものです。

確かに、集団的な管理体制が未成熟で、且つ管理組合の団体性もはっきりしていなかった当時において、管理委託契約一つをとっても区分所有者全員が契約当事者として署名捺印しなければならないことを考えると、管理所有の方式により誰か一名にその処理を任せることは、管理の円滑化が望めたわけですからその意義は十分認められる所です。

しかし、管理組合の団体性が肯定され、各区分所有者の権利意識も向上し、多数決で決定したその意思を代表機関が表示するという現行においては、管理の便宜という点ではこの制度を利用する必要性は感じられないでしょう。

3.管理所有の法的性質。
そのためもあってか、管理所有方式はあまり見られませんが、一応の検討をしてみますと、まず、管理所有者は規約の設定又は変更により共用部分の所有権移転を受け所有者となり、20条1項により区分所有者全員(一部共用部分については、これを共用すべき区分所有者)のためにその共用部分を管理する義務を負うとされていますから、全員のための管理義務が付着した所有権を取得するに過ぎないこととなります。

元来、所有権は他の制約や負担なしに自由に物を支配する権利ですから、このような制約を伴った所有権の移転というのは通常のものとはいえません。

ところが、このような制限付きな権利移転とは、まさに「本法ニ於テ信託ト称スルハ財産権ノ移転其ノ他ノ処分ヲ為シ他人ヲシテ一定ノ目的ニ従ヒ財産ノ管理又ハ処分ヲ為サシムルヲ謂フ」(信託法第1条)ということですから、共用部分の管理を目的としてその所有権を移転するという管理所有が信託の一種であることを示しています。

これは即ち、管理所有が信託的譲渡といわれる所以です。

なお、信託的譲渡とは、特別の意味のある表現ではなく、この信託における譲渡行為ないし単純な譲渡ではなく信託上の制約のある譲渡行為という程度の意味合いです。

4.信託とする結果。
さて、管理所有が信託だとすると、信託における三主体、即ち委託者は区分所有者全員(一部共用部分は当該一部共有者、以下同じ。)であり、受託者は管理所有者たる区分所有者又は管理者、受益者は区分所有者全員ということになります。

この信託財産たる共用部分は受託者たる管理所有者の固有財産には含まれない独立財産とされ(信託法22条)、管理所有者は善管注意義務を負い(信託法20条)、事務の報告義務があり(信託法40条)、また管理の失当の時には損害賠償責任を負いますし(信託法27条)、その他の事項も信託法が適用ないし準用されるものとして考えるべきでしょう。

5.管理所有者の権限。
問題は、管理所有者の管理方法の内容が不明確であることですが、信託では信託行為(信託契約)で定められることを予定し、区分法では単に管理としか表現していませんので、13条以下の規定の外より詳細な内容は管理所有を定める規約で規定されることを予定しているものと思われます。

しかし、この規定がないか不明確な場合は、管理所有者が善管注意義務をもって判断・実施するしかありません。
その場合、管理所有者が単独所有することとなる共用部分について、管理所有者は総会の決議や共用部分の管理義務の趣旨に反しない限りその有する所有権に基づき自由に(集会の決議なく)共用部分を管理(維持・保全の意味)・使用・収益できることになりそうです。
尤も、信託された権限が管理ですから処分や変更が除外されることは当然で、20条の2項もこのことを確認的に規定しています。

そこで管理(維持・保全の意味)・使用・収益の可否ですが、管理(維持・保全の意味)については18条1項で保存行為の場合を除いて、総会の決議により定めることが原則ですが、18条2項により規約で別段の定めをした場合にはその範囲で管理所有者の自由な判断で可能として良いでしょう。

使用については、排他的使用を意味するとすれば共用部分の性質に反しますから管理所有という信託の趣旨に反するといえます。尤も、管理室や機械室等一般の区分所有者の現実的な利用が予定されない部分は別に考えることができるでしょう。

収益については、本来無償利用が予定される部分を有償とするのは信託の趣旨に反しますが、共用駐車場等本来有償の部分の収益権限は認めてもよいようです。
この場合、利用金設定や徴収方法も規約で定めれば管理所有者が総会決議なしに決定できると思われます。
ただし、この収益は信託財産の一部を構成するのであって管理所有者の個人財産になるものではないことは当然です。

6.管理所有部分の費用。
また、管理所有者がその信託事務として実施するこれらの費用は、本来信託財産をもって支弁するのが原則ですが、共用部分という性質からその処分を考えることはできませんから、上記の収益を越える費用については委託者が負担するのが当然です。20条1項後段はこのことを確認しています。

(共用部分に関する規定の準用)
第二十一条 建物の敷地又は共用部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第十七条から第十九条までの規定は、その敷地又は附属施設に準用する。

1.準用の対象
21条は、敷地と共用部分以外の附属施設について17条の管理、18条の変更、19条の管理所有の規定がそれぞれ準用される旨の規定です。

区分法では、共用部分として専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物を定義することにより(2条4号)、建物内の設備関係も含めて共用部分に網羅し、民法の特則としての取扱いを17条から19条に規定しておりますから、管理組合や区分所有者間において残る問題は付属施設と敷地及び債権等の財産関係となります。

2.敷地の場合 このうち、敷地は区分法上共用部分とは別個の区分所有者個人の財産であり、その保存・管理・変更は特段の定めのない限り民法の適用を受けますが、共用部分が民法の原則では全員の合意を必要とするなど共同で管理・変更することが現実的に困難であることから区分法で17条以下の特則を置き、区分所有者団体の現実的な運営を可能とする手段を講じています。
そして、このことは敷地の場合も同様に要請される扱いです。そのため共用部分と同様の特則を定めたものがこの規定です。

3.付属施設の場合 そこで、後に残るのは付属施設と債権関係ですが、このうち付属施設はその存在意義は共用部分と同様に区分所有者全員の便益に供されることにあるのですから、共有の場合には共有関係に伴う管理や処分・変更行為の実施について他の共有者間との団体的共同が必要なことは共用部分の場合と同様です。

従って、その場合の多数決要件等も、民法のように単に持分で且つ変更等に全員の合意が必要とすることは実態に合うとはいえませんから、付属施設については共用部分の場合と同様の取扱いをすべき必要性と合理性が認められます。

このように付属施設については共用部分の取扱いと同様に取り扱うのが妥当であり、仮にこの規定がなくとも民法の規定を適用するのではなく、区分法の17条から19条の規定を類推適用すべきですから、このことを正面から認めたのが本条の準用の趣旨といえます。

なお、本条で付属施設とは、前述の共用部分(2条4号)以外のものですから、機械式駐車施設・駐輪施設等外構の諸施設および規約共用から洩れた附属の建物およびそれらの附属物を言うものと思われます。

4.20条管理所有の不準用 上記のように敷地及び附属施設の変更等の場合の取り扱いは共用部分と同じですが、管理所有は認められていません。
これは両者に20条の準用が規定されていないことから明らかですが、その理由としてはこれらには共用部分と異なり管理所有を認める必要性がないか、性質上認められないかのいずれかが考えられます。
この点、管理所有が対象物の管理の便宜を図る制度であることからするとこれらの場合も管理所有により管理の簡便化を図るメリットは認められますし、これらは単独所有が可能なものですからこれらの所有名義を管理所有者に集中させることに障害があるとも思われません。
そうすると、必要性、可能性は肯定できることになりますが、これらは共用部分とは異なり強制的・本来的な共有関係にはないもので、上記のように単独所有は事後的にも可能なものです。
そうであれば管理所有という特則がなくとも正規の信託の方法により管理所有の実態を実現できることになりますからあえて管理所有制度を必要としないものであるといえます。
要するに、これらは管理所有的扱いの合理性は肯定されても管理所有制度を必要としないものであることから20条の準用がないと考えられます。

5.債権の場合
最後の債権関係に関しては、21条に規定がありません。区分所有者の間に21条に定める物的権利関係以外に債権的権利関係が生じることは明らかですから、何らかの規定を置くべきであるとも思います。
しかし、債権の場合はその発生原因が様々であり、そのためもあってか団体ないし全員に総体的に帰属するものから個人に帰属するものまで様々のものが予想されます。

例えば、管理費・積立金や各種使用料等の組合対個人の関係で発生する債権は団体に帰属し、団体的処理に適するものといえますが、個人財産である敷地の収用対価や補償料は個人に、また共有の共用部分や付属施設は団体に帰属するともいえる半面専有部分との一体性の原則にもあるように個人財産としての性格もあり、こと交換価値という面では個人財産性が勝るというべきでしょうから、共用部分の瑕疵や損害による交換価値の減少補償の賠償金は個人に帰属する債権といえます。

このように、債権関係に関するこの法の沈黙は単なる規定の失念という訳ではなくケースバイケースの処理が必要な事項にため一律的な規定が馴染まないとして解釈に任せたものと考えるべきでしょう。
従って、区分法に規定がないからすべて民法の原則によるという考え方には賛成できません。

この債権関係の帰属の違いが現実の取扱いにどういう違いをもたらすかといいますと、組合ないし区分所有者総体に帰属する場合は管理者ないし区分所有者の代表者が当事者適格者として管理組合ないし区分所有者を代表して訴訟することになり、個人に帰属する場合は当該個人が自己の権利につき当事者適格者として訴訟することになります。

第三節 敷地利用権

(分離処分の禁止)
第二十二条 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2 前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
3 前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。

1.建物所有に土地の権利が必要な理由
22条は区分所有権と敷地利用権の分離処分禁止規定です。

前記のように、日本では土地の権利と建物の権利は別個の権利とされていますので、建物を所有するためには土地の権利が必要となります。
ただ、この意味は土地の権利無しに建物を持つことが現実的に不可能という訳ではなく、権利は抽象概念で目に見えず手で触れないものですが、土地や建物は五感で感知できる現実の物体で両者はその性質が異なり土地の権利が無くとも事実上建物を所有することはできます。
ただし、権利が本来あるべき状態を表しますから権利に附合しない状態は権利に附合するように現状が変更されなければなりません。
即ち、建物所有者に土地の権利が無い時は土地の権利者から見ればその土地には建物が無いこととなりますから、現実にある建物は取り壊して収去されるという意味で建物所有に土地の権利が必要という訳です。

2.分離処分禁止の理由
この土地・建物の権利が別であることと建物所有に土地の権利が必要なことから、区分建物の場合も土地の権利がない場合の処理が問題となります。
これは第10条で取り扱われる問題ですが、本来は土地と建物の権利を別箇のものとはせず一体であればこのような問題は発生しないわけですから、そう取り扱うことがより望ましい訳です。
しかし、土地と建物は別箇独立の物であるというのが日本独自の従来からの考え方であるため区分建物だけを一体化するわけにも行きません。
このような趣旨により、区分所有権と敷地利用権の権利が別であることを前提にその分離処分を禁止して処分時での一体性を図ったものがこの規定です。

3.敷地利用権とは。
ここで、敷地利用権とは、再説しますと、区分法自体に定義が無く新たな土地の利用権を創設したものとは思われませんので、既存の建物所有を目的とする土地の利用権である所有権・地上権・賃借権・使用借権の4種の権利のことであり、本条の分離処分禁止効があるのはそれらが数人で共同保有されている場合というのですから、敷地の権利が共有や借地権・使用借権の準共有の場合ということになります。

4.違反の効果
本条の規定により区分所有権と敷地利用権の分離処分が禁止されその一体化が図られますが、本条では、同じく一体化が図られている専有部分と共用部分の場合において15条により共用部分の随伴性が規定されているのと異なり単に禁止が規定されているに止まるため、本条の効果としては、この規定に違反する行為を無効とすることになります。
従って、敷地の権利が共有や借地権・使用借権の準共有の場合には、敷地の権利と区分所有権のどちらか一方の譲渡・抵当権や質権の担保権設定行為は無効です(ただし、23条)。

5.分離処分可能な場合
なお、本条の処分禁止効は、敷地利用権が共有や借地権・使用借権の準共有の場合でなければそもそも適用が無く、本来適用がある場合でも規約で分離処分可能を積極的に規定すれば(単に禁止条項を削除するのではだめ。)適用を免れます。
そこをあえて、土地建物の権利者が分離し10条の問題を発生させる危険を冒すのですから、土地の権利を動かさない約束の共同建築や増築計画等があり新築後の建物に既存の土地の権利を分け与える必要がある場合等でなければ規約で分離処分を可能とする必要はないでしょう。

6.2項の趣旨
ところで、区分建物とその敷地利用権の一体性は、各区分建物は独立して譲渡の対象になるわけですから、区分建物単位で構成されなければ意味がありません。
従って、ある人が複数の区分建物を持ち一定の土地の共有持分を持つ場合は各区分建物と一体となるべき土地持分を割り付けてやる必要があります。
この場合の割付は共有持分に準拠するのが通常は最も合理的ですので、各区分建物への割り付けが持分によるとするのが2項の規定です。
ただ、区分法では持分は専有面積によるものとし、且つその場合の面積計算は内法計算によるのが原則ですから(14条1項から3項)、持分を壁芯計算面積比や価値比で計算する場合には規約で別段の定めができることとなっています。

なお、この2項と次の3項では、同一人が複数または全部の専有部分を持つ場合の敷地利用権の割合について規定していますが、それを規定するくらいならはじめから一個の専有部分が持つべき敷地利用権の割合を規定する方が簡明ではないか、と考えられます。この点は区分所有法の改正のつど問題となった点のようですが、それは建物と土地の対応関係を規定することにほかならず区分所有法の範囲を超えて民法にかかわる問題であることから既定が見送られて現在に至っています。

7.3項の趣旨
以上のこと(専有部分と敷地利用権の分離処分禁止および一体性)は、1人の人が全専有部分と土地の単独所有権を有している場合も同様ですから、3項でこの場合にも前2項すなわち前の2個の項(3項から前2つですから第1項と第2項のこと、前の第2項と読んではいけません。)を準用することとしています。ここでは土地利用権は単独所有権で持分権ではありませんが、前2項を準用して土地の単独所有権を全共有持分の所有とみなして各専有部分に敷地利用権を割り振る必要があります。ただし、単独所有のままで土地所有権の共有登記は23条の敷地権の登記をする場合を除いてできませんから、その割り振りは潜在的なものとなります。その後、どれか専有部分を譲渡したときに本来当該専有部分と一体である割合の土地持分を2項に定める割合で譲渡することにより(そういうふうな譲渡をしない場合は第2項で無効です。)、実施した割り振りが顕在化し正規の形になります。

(分離処分の無効の主張の制限)
第二十三条 前条第一項本文(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反する専有部分又は敷地利用権の処分については、その無効を善意の相手方に主張することができない。ただし、不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)の定めるところにより分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることを登記した後に、その処分がされたときは、この限りでない。

1.善意の相手方に主張できないことの趣旨
23条は22条に定める分離処分禁止の効力に関する規定です。
その本文(ただし、で続く但書の前の文章)では、22条違反の分離処分の無効の主張を善意の相手方に主張できないと規定します。

22条で説明したように土地と建物は別の物でありそれぞれ自由に処分できることが日本の原則ですから、区分法の一篇の条文で一定の場合は分離で処分すると無効ということを貫徹すると、その取引が一定の場合に該当するものであるかどうかは一般には分かりませんので、他の土地建物と同様であるはずとの原則的な考えの下に分離処分が禁止されている物件と知らずに(これが善意の意味です。)敷地又は区分建物を取得した者(これが相手方です。)は不測の損害を受けてしまいます。
そのような結果を回避するため、22条の分離処分禁止もそのことを知らない者には主張できないとして善意の相手方を保護するのが本文の趣旨です。

2.その結果と悪意の場合
このように23条本文により善意の相手方には無効を主張できない場合は、分離処分が有効となりますが、その後の処理は10条等の問題になり結果的に問題は先送りされることとなります。
また、この規定は善意の相手方保護の規定ですから、相手方自ら無効を認めることは差し支えなく更に、悪意(分離処分禁止の物件であることを知っている。)の相手方は保護に値しませんから、22条の原則どおり無効のままということになります。

3.敷地権の意味と効果
しかし、善意者と悪意者の取扱いを区別しても、本来分離処分すべきでないものの分離を認める結果はけっして好ましいものではありません。
本来、善意悪意の区別無く同一の結果にすべきですが、その手段として土地と建物の別の物との前提を修正できない以上、分離処分禁止の旨を広く知らしめることが次善の策となります。
このような考えから、不動産登記簿に区分建物と敷地利用権を一体表示してその一体性を公示し、その旨知ろうと思えば知れるようにして分離処分禁止効を貫徹しようとするのが、但書で定める敷地権の制度です。

但書で本文の無効である旨を主張できないことを二重否定することにより、善意の相手方にもその無効主張できることになりますので、敷地権登記のある区分建物は、分離処分禁止効が善意の相手方にも主張でき、分離して処分しても無効となります。
このように見ると、本文は但書で新設した敷地権制度を強調する枕詞的な部分のようであまり意味は無く敷地権の新設を強調した方がよかったようにも思われます。

4.敷地権の登記
なお、敷地権とは不動産登記法上の概念であり、区分法に敷地権なる言葉はありませんが、不登法によれば敷地権とは登記された敷地利用権で専有部分との分離処分が禁止された権利(不登法91条2項4号)、即ち登記された敷地たる土地の共有持分、借地権(地上権又は賃借権)の準共有持分をいうものとされています。

敷地権は、1棟の建物の登記の表題部に対象たる敷地の所在・地番・面積等の表示がなされ、専有部分の登記の表題部に対象たる敷地権が所有権か賃借権か等の権利の種類とその割合(持分)が公示されます。
同時に、土地登記簿にも敷地権設定の登記がなされて(不登法93条の4)土地の移転登記が登記上規制され、それ以後は建物の登記にそれに付随する敷地権が同居している形態となって、建物に敷地権が随伴するようになります。
このように敷地権登記は、22条の定める分離処分禁止という消極的規制を越え、区分建物に敷地権が随伴するという共用部分の一体性と同様な一体性を認める積極規制の方向に更に一歩踏み込んでいる感があります。

(民法第二百五十五条の適用除外)
第二十四条 第二十二条第一項本文の場合には、民法第二百五十五条(同法第二百六十四条において準用する場合を合む。)の規定は、敷地利用権には適用しない。

1.24条の趣旨
24条は、敷地利用権に民法255条即ち、持分放棄や相続人無しの死亡の場合の持分の他の共有者への帰属の規定が適用されない旨の規定です。
敷地利用権の性質には、所有権・地上権・賃借権・使用借権の4種類がありますが、民法255条では共有の場合(民法264条により地上権・賃借権・使用借権の準共有にも準用)に、持分を放棄し又は相続人無しに死亡すると当該持分が他の共有者に帰属するものとされています。
これは最終的な国庫への帰属ということに対する国家の自制と共有者の意思の推定に基づく結論ですが、せっかく22条で専有部分と敷地利用権の一体性を認めても、敷地利用権に民法255条を適用すると専有部分とその敷地利用権たる共有持分の帰属が異なりその一体性が害されてしまいます。
従って、22条1項本文の専有部分とその敷地利用権の一体性が認められている場合には、民法255条の適用が無くその敷地利用権は他の共有者に属さずに専有部分に随伴してその所有者に帰属するというのが24条の趣旨です。

2.規定の理由
このようにみると、24条も22条と同じ一体性を定めているに過ぎず22条の外に24条が必要か疑問があるかもしれませんが、22条は分離処分という当事者の売買その他の意思表示を要素とする法律行為を規制しているに過ぎず、放棄や相続に伴う権利の取得は意思表示を要素とする法律行為ではないため、これをも規制するには重ねて規定する必要があります。

尤も、放棄は意思表示による法律行為ですから専有部分又は敷地利用権の一方の放棄は22条で規制されていますが、双方いっしょの放棄は規制できませんし、また放棄の効果は権利の消滅であり、その物に対する権利をその後誰が取得するかは法律行為による効果ではなく22条で規制できません。
なお、土地が分有である等で専有部分と敷地利用権の一体性が認められていないケースでは、もともと民法255条の適用が無く、放棄(一方の放棄の場合は10条の問題)や相続人なしで権利者が死亡した場合でも専有部分と敷地利用権は運命を共にするでしょうから、特に問題とする必要はないでしょう。
ちなみに、不動産たる敷地利用権付き区分建物は放棄により国庫に帰属し(民法239条2項)、相続人無しの場合には、所謂、特別縁故者(民法958条の3)に付与されない限り国庫に帰属することになります(民法959条)。

第四節 管理者

(選任及び解任)
第二十五条 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。
2 管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。

1.管理者とは
25条は管理者の選解任に関する規定です。
区分法では管理者に関し、第4節では26条に管理者の権限を、27条に管理者による管理所有を、28条に委任規定の準用、29条に管理者の行為に関する区分所有者の責任を規定していますが、他の条項にも管理者に関する規定が存在し、これには総会の招集(34条)、総会の議長(41条)等が存在します。
区分法自体には管理者の定義条項はありませんが、条文に即して簡略に定義するとすれば、管理者とは総会によって選任され区分所有者の代理人として共用部分等を保存し、総会決議事項を実行する者ということになるのでしょうか。

しかし、管理組合が民法の組合であればそのとおりですが、管理組合が社団である場合には管理者をもってその代表機関と考えるのが妥当ではないでしょうか。
そもそも、社団の代表機関である理事の諸規定を見ても民法53条では代表とするものの同44条や同54条では理事を代理人と規定しており、法文自体代表と代理を厳密に使い分けているわけではありません。
この点、区分法では管理組合の性格を当初は組合と認識していたようですから、これを社団とするときは代理人ではなく代表者と考えるのが自然です。
そうすると、管理者とは総会の通常決議で選任され、(権利能力なき)社団たる管理組合の代表者として管理組合の各種事務を外部に代表する機関ということになります。

2.管理者の設置
このように管理者は25条により、原則として総会の通常決議で選任され、また解任されますが、25条の規定は「できる」と表現しておりますから、区分法では管理者の設置を必要的とは考えていないようです。
この理由は、代理であれば本人も行為ができますから、区分法は区分所有者全員が自ら行うことと代理人としての管理者を選任して管理者に行わせることとの選択を区分所有者に認めたという趣旨なのでしょうが、社団の場合は行為主体としての本人が存在しないため代表機関は必須のものとなります。
ただ、このように管理組合が団体として活動するためには区分法の規定に関わらず管理者等の代表機関の設置が不可欠ですが、一般に活動している管理組合では理事会を組織しその代表者たる理事長が管理組合を代表するとされていますから(標準規約36条)、現実には問題がないでしょう。
なお、(権利能力なき)社団では機関名称が法定されていませんから代表機関の名称が管理者に限らず理事長でもかまわないことは勿論です。

3.選解任の別段の定め
更に、1項では管理者の選解任に関し、規約で別段の定めをすることを認めています。
この別段の定めの例としては、規約で管理者を明記する(管理者の規約への登載と解任は規約の設定・変更に当たり特別決議事項となります。)、解任又は選解任を通常決議から特別決議へ加重し、または組合員(議決権)総数の過半数という通常決議を総会出席組合員(議決権)の過半数、更には候補者の最多投票取得者とすること等に軽減するなどが考えられますが、各組合の実態に即して適切な変更をすべきでしょう。
この点、標準規約では、役員の選任を総会の通常決議(ただし、過半数の議決権の出席で総会が成立し、出席議決権の過半数で可決するので全体の1/4を超える賛成があれば可決の可能性がある。)で行い、管理者たる理事長は理事の互選という間接代表制を採用していますが、これも別段の定めと認められます。

4.管理者となる資格
ところで、1項では選解任方法を規定するのみで、管理者たる資格の規定がありませんから、管理者は区分所有者に限らず誰でも適任者を選任できると考えられます。
このように、管理組合の代表者としての管理者はその業務範囲が広範に及びますから、広く適任者を選任できるとすることは妥当でもあるでしょう。
そして、その被選任資格としては個人に限らず法人でも可能と思われます。
ただし、個人の場合には意思能力さえあれば未成年や被保佐人等でも法律上は可能でしょうが、管理者としての責任を考慮すると現実には避けるべきでしょうし、法人でも管理組合と継続的な取引関係を持つ管理会社等も法律的には可能ですが、その利益相反関係から現実には避けるべきです。

なお、管理組合と管理者との関係は委任契約又はそれに類似する契約関係にあると考えられますので、管理者は受任者の立場にあるものとして民法の委任の規定を広く適用ないし準用すべきです。そして、就任も委任契約の成立ということですから、申し込みと承諾で成立するので、例えば総会で藤原紀香を管理者に選任しても本人が就任承諾をしない限り管理者となることはありません。

5.裁判所による解任
第2項は、裁判所による管理者解任の規定です。
管理者は第1項により総会で解任することが可能ですが、総会は多数決原理で運営されるため、仮に管理者に不正行為その他地位にそぐわない行為があっても解任決議が可決されるという保証はありませんし、管理組合が機能していない場合には総会の開催自体がままならないことも有り得ますから、このように区分所有者による解任請求を認める必要性と実益があります。
ただし、必ずしも区分所有者の解任行為が常に正しいとは限らず、且つ管理組合の執行機関であり代表機関でもある管理者の解任は区分所有者の全員に重大な利害関係が有るため区分所有者の請求の正当性を裁判所に判断させることにより相互の利益調整を図っています。

この裁判は管理組合と管理者との委任契約ないし委任類似の契約を解除する効果を形成するものですから所謂形成訴訟であり、その判決の効力は管理組合と管理者との両者に及ぼす必要がありますから、両者を被告としなければならない必要的共同訴訟となります。原告側の区分所有者は特に規定がないので一人でも複数人でもかまいませんが、複数人の場合には全員に同じ裁判の効力を及ぼす必要がありますから所謂類似必要的共同訴訟となります。

6.その他の退任原因
その他、管理者は任期(法に規定がないため規約で定めることになります。)の満了又は、委任の規定の準用(法28条)により、管理者の死亡・破産・被後見開始(民法653条)、管理組合の破産により退任します。

(権限)
第二十六条 管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
2 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
3 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
4 管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
5 管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。

参考 旧法(権限)
第二十六条 管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
2 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額の請求及び受領についても、同様とする。
3 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。 4 管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
5 管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。

1.管理者の地位・権利・権限
26条は、管理者の権限(権利を有し、義務を負うといっても、権利と義務とは反対概念で両立しませんからここで権利というのは権限のことです。)に関する規定です。
管理者は管理組合の代表者または全区分所有者からの受任者として管理組合の業務を執行する立場にありますが、1項では管理者の職務として区分所有者の共有に属する共用部分や敷地・付属施設を保存し、且つこれらを集会決議に基づき管理・変更し、その他集会決議や規約に定める事務を行うものとしています。

民法その他の法令において、不在者の財産管理人や権原の不明な任意代理人の規定等法令による受任者・代理人を定める場合にはその権限を定めるのが通常です。
26条もそれらの規定と同様に、区分法の創設した管理者という地位ないし機関の権限を定めたものといえます。
その場合、代理人の権限は代理人と取引をする第三者にとって明確なものであることが要請される一方、他方として本人の利益を守りその意思になるべく合致した範囲に止まることが要請されますから、一般的には保存行為(民法103条1号)と管理行為(民法103条2号)がその範囲とされ、それ以外の処分・変更行為を行う場合には本人または代理人監督機関の特別の授権が必要とされています。

そこで区分法では、変更・管理行為は集会の決議事項とされ、保存行為は区分所有者各自の単独行為とされていますから、管理者にも保存行為の単独決定権およびその執行権を認め、共用部分等の管理・変更・処分行為については特別の授権として本人の意思たる集会決議または規約の規定に基づき執行することとされます。
要するに、管理者の権限として保存行為のみが明記され管理や変更行為が明記されていないことから、管理者は管理・変更行為を自ら決定することはできませんが(但し、規約で管理について決定権を授権することはできる。)、これらの執行は上記のとおり規約または集会の決議の実行に含まれているということです。

ただ、このように管理者を区分所有者の法定の代理人・受任者として位置付けるということは、区分法が管理組合の団体性の承認に冷淡な結果といえますが、管理組合の社団性を肯定する場合には管理者は社団の代表者と位置付けられますから、1項の権利義務は社団たる管理組合の権利義務そのものであり、管理者はその執行機関として管理組合の権利義務を執行することを1項が確認したものと理解されることになります。

なお、このような管理者の職務については26条に規定するもの以外に次のものがあります。
規約の保管(33)、集会の召集(34)、集会の議長(41)、事務の報告(43)、共同の利益に反する行為に対する訴訟の提起(57)

2.管理者の代理権
どちらの考え方をとりましても、管理者は管理組合又は区分所有者全体との間において委任又は委任類似の契約に基づく受任者であり、広く管理組合に関する業務一般を執行する権利・権限を持つのですから、対外的執行の権限として代表権ないし代理権があることはその地位からして当然といえます。
2項はこの当然の権限を代理権として認めたものです。

更に、2項では管理者に損害保険の保険金受領権等を認めています。
旧法では18条で損害保険の付保行為を管理行為と認めたこととセットとして@損害保険の保険金受領権のみが確認されていましたが、新法ではこれに加えてA共用部分等について生じた損害賠償金及びB不当利得による返還金の請求及び受領が追加されました。

この規定の趣旨は、共用部分の所有者が管理組合と考えれば当然の規定ということになりますが、通常は、@の損害保険は区分所有者個人の財産的損害の填補を目的とする保険ですから本来は管理組合の権限には属さないものですが、保険金は共用部分の修復に使用されるべきものであることから、共用部分の修復にあたるべき管理組合の業務として特に認めたものと考えられています。
Aの共用部分等の損害賠償金とは端的には共用部分が毀損された場合や不法占拠された場合の賠償額のことですが、これらも本来共用部分等の共有者がその持分に応じて個人的に受ける損害のため各自に帰属する債権と考えられており、その金額は結局毀損部分の補修に支出されるべきであることは保険金と同様といえます。
この点、Bの不当利得に基づく債権(例えば第三者が善意で敷地の一部を不法占拠していた場合の地代相当額や無効な駐車場使用契約による駐車料相当額等)はやや特殊といえ、例の駐車料は組合に最終的に帰属さすべきものといえても地代も同様かは問題です。
はたして組合に当該利益に対応する損失があるといえるのでしょうか。

3.代理権の制限
代理権(代表権)を認めた結果、管理者は、管理組合又は区分所有者全体の代表者として外部の第三者との間でいろいろな取引行為を行うことになりますが、管理者の行為が有効に管理組合に効力を及ぼすのは原則としてその代表権ないし代理権の範囲で行った行為に限りますし、その範囲をどうするかも委任者である管理組合(総会)で任意に決定できるのが原則です。
ところが外部の相手方は管理組合内部の事情は知りませんから、内部事情である代理権の制限で当該行為が代表権や代理権の範囲の行為ではないとされて無権代理として取引が無効となったのでは管理組合の保護にはなりますが、外部の相手方は不測の損害を蒙ることになりかねません。
管理者は管理組合内部の者であり、その執行の監督は管理組合自身がすべき事柄ですから、内部事情での代表権ないし代理権の範囲の制限はその存在を知らない相手方(善意の第三者)に主張(対抗)することができないことは、代表・代理制度の本質といえます。
これらは民商法の各規定でも見られますが区分法でも3項でこの当然の事理を明記しています。

4.管理者の訴訟担当
4項では、管理者の訴訟における当事者(原告・被告)への就任権を規定しています。
これは一般に管理者に訴訟担当を認めた規定といわれています。
裁判は、相手方との法的な紛争を解決する制度で憲法上も裁判を受ける権利が保障されていますが(憲32条)、誰でも何にでも裁判ができるというものではありません。
民事裁判では判決で白黒をつける判決(本案判決といいます。)をもらえる前提として民事訴訟で訴訟要件といわれる前提条件を満たす必要がありますが、ここで問題となる訴訟要件は当事者適格といわれるもので、これは当該紛争の判決による解決にあたってもっとも妥当な当事者が裁判に携わっているかどうかを判断して認められる原告または被告としての地位です。
すなわち、裁判の効力は原則として当事者にしか及びませんし、当事者の裁判を受ける権利を保障して紛争解決の実効性を図るためには当該紛争の当事者が原告又は被告になっているのが最も望ましいことから、通常はこの紛争の当事者に原告又は被告となる当事者適格が認められます。
そして、裁判は権利義務の存否を判断して判決しますから、権利や義務の主体であることを合い争う当事者に当事者適格が認められ、具体的には、民法その他の権利義務を定める法律の規定により権利者又は義務者となる者に当事者適格が認められる関係にあります。
ところが、他方で権利義務の主体そのものではないものの、他人の権利義務に対し干渉する権限を法的に認められる場合(債権者代位等)や権利義務の帰属主体に実際上訴訟の当事者になりうる機会や能力がないためそのものになり代わって当事者となる場合(被後見人の離婚訴訟における後見人等職務上の当事者といわれる。)にも当事者の地位が認められておりこれを第三者の訴訟担当と称しています。
2項からすれば本来、管理者の訴訟上の地位は代理人で十分のはずですが、管理者の代表者的地位を重く見て管理者を区分所有者全員を代表して訴訟を追行する職務上の当事者として当事者適格を認めたものでしょう。
しかし、管理組合を社団とし、管理者をその代表者とすればこの条項で訴訟担当を認めるまでもなく管理組合自身が訴訟することができるのですから(民訴法29条)その方が実体に即し簡便のように思われます。

なお、管理者がいない場合には合有や総有関係の事項については区分所有者が全員連名で訴訟するしかありませんが、この場合や管理者が当事者となる場合でも当事者には訴訟代理人の選任権がありますから別途訴訟代理人として弁護士に実際の裁判を依頼できるのは当然です。

5.管理者の訴訟のできる範囲
実際の裁判では、管理者が訴訟担当として行っても、管理組合が社団として行ってもどちらでも当事者適格が認められることに変わりは有りません(民訴法29条)。
ただし、両者が当事者適格が認められるのはあくまで管理組合ないし区分所有者全員のための共用部分並びに敷地及び附属施設の保存・管理・変更に関する事項や集会の決議並びに規約で定めた事項に限られることは当然であり、区分所有者の個人的利益や個人財産に関する事項に及びません(例外26条2項の3項目)。

6.判決の効力
裁判は私的紛争の解決を目的としていますから、その解決指針たる判決が確定するとその内容が当該紛争の唯一の解決方法として何人も異議を挿めないこととなっています(判決の既判力)。
管理者が管理組合の代表者として裁判を行った場合には管理組合は判決を受ける本人としてその判決に拘束され、その構成員たる区分所有者も同様です。
また、管理者が区分所有者の訴訟担当者として裁判を行った場合、紛争当事者は本人たる区分所有者自身ですから、判決の効力は当然本人たる区分所有者に及び区分所有者を拘束します(民訴法115条1項2号)。
従って、これらのものが受けた判決に不服があっても確定すると再審事由(民訴法338条)がない限り、重ねて同じ訴えを起こすことができませんから、そのために損害を受けた場合はこれらのものに対して損害賠償をすることで対処するしかありません。

なお、民法上の組合が受けた給付判決や合名会社が受けた給付判決の執行力は民法675条、商法80条を通して構成員の責任に当然に及ぶと解されているようですから、管理組合の場合も区分法29条により当然に及ぶものと考えられます。

7.管理者の報告義務
ところで、管理者は受任者の立場にありますから委任者たる管理組合や区分所有者に適宜その事務の報告をする義務があることは当然であり、このことは報告内容が裁判事項である場合に限りませんが、裁判は管理組合にとって重要事項である以上、管理者が原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならないこととされています。
ただし、5項では規約に基づき(集会決議なしに管理者の判断で)原告または被告となったときにその旨区分所有者に通知する旨が規定され、集会の決議で原告または被告となったときの報告が要求されていません。
これは集会決議がある場合には当該集会またはその招集手続きや議事録等で欠席者も含めて全区分所有者に裁判の存在が明らかであるためでしょうが、管理者の報告義務からすればその場合でも適時必要な情報の提供を行うべきでしょう。
なお、この場合の通知方法は総会の召集通知の規定が準用されています。

8.管理者の報酬
管理者には委任の規定(民法648条)が準用されますから、無報酬が原則であり特約のない限り報酬は貰えません。
しかし、区分所有者以外のマンション管理士等有償で他人のために事務を処理する者がその職務として行う場合には有償とする合意があるものと見るのが通常です。

9.管理者の義務
管理者には委任の規定が準用され、無報酬でも善良なる管理者の注意義務(略して善管注意義務といわれます。)が課されます。
尤も、民法上の有償契約ではすべてこの善管注意義務が課されていますから、無報酬でも課されるという点が特色といえるでしょう。
善管注意義務とは、抽象的にはその者の職業、社会的・経済的位置に基づき一般的に要求される程度の注意をいいますが、ようするに管理会社を管理監督する立場の管理者は有償の管理会社が負う責任と同じ程度の責任を負すべきですから、一般組合員が管理会社に期待し且つ要求するのと同程度の義務が理事長に要求されているということになります。

(管理所有)
第二十七条 管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。
2 第六条第二項及び第二十条の規定は、前項の場合に準用する。

1.管理者による管理所有
管理所有に関しては区分法11条2項では区分所有者による管理所有だけを認めて部外者が共用部分を所有することを排除していますが、管理者が共用部分の保存・管理行為を執行する職責のある者であることに鑑み、管理者に所有を認めても区分所有者の利益に反しないものとして管理者に対しても共用部分の管理所有を認めたものと理解できます。

管理者の就任資格には区分所有者であることを要求されませんから、27条によって区分所有者以外の者でも管理者としてであれば管理所有することができることになります。
なお、管理者が管理所有する場合でも区分所有者の場合と同様に、その旨を規約で定める必要があるとされています。

2.法6条2項および20条の準用
管理者による管理所有の場合においては2項で専有部分や共用部分の立ち入りに関する6条2項と管理所有者の権限に関する20条が準用されています。
このうち、法6条2項の準用の意味は、共用部分の管理のために専有部分等に立ち入りの必要があることは区分所有者が管理所有者である場合と同様ですが、区分所有者は管理者になっても区分所有者の地位で法6条2項に基づき必要な立ち入りが可能であるのに対し、管理者が区分所有者でない場合には直接には法6条2項の適用がないため、法6条2項の準用を認めて管理所有する管理者の地位自体に立入り権を認めて業務に支障がないように配慮したものです。
また、管理者による管理所有が管理のための信託の受託であり、その権限は受託者としての権限であることは区分所有者の場合(20条の解説参照)と同様ですから、この旨を明らかにするために20条が準用されています。

(委任の規定の準用)
第二十八条 この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。

1.準用の意味
28条は管理者の権利義務について民法の委任の規定が準用される旨の規定です。

管理者を管理組合という社団の代表者と見ようと、区分所有者の受任者と見ようと、いずれも委託されて他人のために事務を行う者であることには変りがありません。
そして他人から委託を受けて他人の事務を執行する場合の通則(原則的な取扱い)が民法の委任の規定ですから、管理者に委任の規定が適用ないし準用されるのは当然といえます。
この点、民法の理事や株式会社の取締役なども同様であり、区分法では28条で委任の規定を準用する旨規定してその旨明らかにしています。

尤も、民法の委任は法律行為の委任が主眼ですから、管理組合の各種事務を執行する管理者の行為の大部分は事実行為となるでしょうからその本質は準委任といえます。

28条の規定上は区分法と規約が民法に優先適用されるとしていますので、同種の規定の場合には民法の適用は有りませんが、区分法と民法とで重複していそうな規定は民法645条の報告義務と区分法43条の事務報告ぐらいのようです。
従って、民法の委任に関する14か条のほぼ全てが区分法の管理者に関する規定に追加適用されることになります。

2.具体的な準用
民法643条委任の意義(成立)
委任も契約ですから申込みと承諾の意思表示の合致により成立します。区分法では25条で集会の決議で選任するとしていますが、集会は管理組合の意思決定機関であっても意思の表示機関ではありません。
従って、集会が決議しただけでは管理者委託の契約はいまだ未成立といわざるを得ません。
本来はこの集会が決定した意志を、その表示機関たる代表機関が表示して初めて申込みの意思表示が完成するのですが、こと団体内部の機関選任の場合に限っては総会自体が意思の表示機関も兼ねることができると解されているようで、総会の選任決議に被選任者が就任受託の意思表示をすることにより役員就任契約が成立するとされているようです。

民法644条善管注意義務
区分法には規定がないので民法の規定が適用になり管理者はその職務を執行するにあたって善良なる管理者の注意義務を負うことになります。

区分法でいう管理者とは法25条で選任され26条の職責を持つ特定の役職の者を指しますが、同じ文字でも善良なる管理者という場合の管理者は一般的に管理する者という程度の意味で特に特定の役職にある者を指す概念ではありません。
これは注意義務の程度の区別をするときに用いられる概念で一般に有償契約の当事者は物の保管や事務の処理にあたって社会通念上要求される万全の注意を払うべき地位にあるということを善良なる管理者の注意義務を負うと称しています。
これに対する概念は自己の物と同一の注意といわれ、無償契約ではこれが一般です。
現実には自分の物のほうに払う注意の方が高い場合も往々にしてあるでしょうが、民法上は他人の物については高度な善管注意義務が要求され、自己の物については程度の注意義務でよいものとしています。

委任は民法648条にあるように無償が原則ですが、受任者を特に信頼しておこなう契約である点で有償契約と同様であり、この場合の委任者の信頼を保護するため有償契約並みの善管注意義務が課されています。

民法645条報告義務
報告義務に関しては区分法43条に年1回の定期総会での報告、法26条5項に訴訟時の報告が規定されていますので、これらが民法645条の特則ということになります。
しかし、民法645条の趣旨は必要なときに適宜報告することですから、これらの区分法の規定が民法645条の規定を完全に排除するものと理解すると民法規定の緩和規定となってしまい委任の趣旨に合致しません。
従って、区分法の報告規定は報告義務の最低限を定めたものであり、それ以外にも必要なときには適宜報告する義務があるものと理解すべきでしょう。

通常、理事会等の内容が組合員に定期的に報告されますが、それはこの報告義務の履行行為と理解することができます。

報告受領権は解任権と共に委任者たる管理組合が管理者の職務執行を監督するための重要な権利ですから、委任者との信頼関係の維持と受任者の職務執行の適正を保障するため必要なコミュニケーションに努めることが必要です。

民法646条受領物の引渡義務
管理者の場合には本人にあたる管理組合には物理的な受領能力がないので、管理者が本人の財産として保管することになります。

民法647条金銭消費の責任
これは単なる不法行為の一場合を規定したものであり、管理者の場合も同様です。

民法648条報酬請求権
委任の場合が無償が原則なのは、信頼関係による役務提供が金銭精算されることに対する倫理的な反感に基づく立法の沿革によるものに過ぎません。
ただし、管理者にもこの規定は適用されますから報酬を与える場合にはその旨規約で定める必要があります。

民法649条費用前払い請求権
民法650条費用償還請求権
いずれも、委任者の事務を行うのですからその費用の一切は受任者が負担すべきは当然のことですから、受任者に費用面で何らの負担をかけないというものです。
管理者にも当然適用があります。

民法651条相互解除権
委任は相互の信頼関係が全てですので信頼関係が喪失した場合は委任関係の解消が認められなければなりません。
契約が守られなければならないのは契約の大原則であり、そのため契約の解消は違反行為や解約権留保の特約のない限り認められないのが通常ですが、委任の特質により相互の関係解消が認められています。
管理者にも適用がありますが、組合側の解消は総会決議又は裁判所の解任判決によるのであり、管理者側では辞任によることになります。

民法652条解除の非遡及
解任及び辞任は将来に向かってのみ効果を生ずることになります。

ただし、選任決議の瑕疵等就任契約自体の有効性に問題があるときには遡及的に無効となる場合があることは勿論です。

民法653条終了原因
管理者にも適用されますから、管理者の死亡・破産・被後見人の審判、管理組合の消滅・破産(管財人が引き継ぐので管理者は不要になります。破産的清算の実益があるかは疑問もありますが否定する必要もなさそうです。ただ、現実には債権者は組合の破産申立てよりも個々の区分所有者に請求することになるでしょう。)の場合に管理者は更迭されます。

民法654条緊急処分権
管理者にも適用され、辞任等で退任した管理者は管理組合の不測の損害を防止するため後任に引き継ぐまで緊急時の応急対処義務があります。
ただし、信頼関係の喪失により解任された場合には別と考えるべきでしょう。

民法655条終了の対抗要件
管理者は代表権ないし代理権をもって外部と折衝しており外部のものは管理者が代表者であることを信頼しているのが通常ですから、善意の第三者に対しては委任終了により管理者でなくなったことを対抗(主張)できないことは代理制度一般の原則です。

民法656条準委任
法律行為以外の事実行為の委任を準委任といいい、委任の規定が準用されます。
委任が法律行為を目的としたことも沿革上の理由に過ぎず、信頼関係を基礎に契約されることに変りはありませんから、準委任の場合にも委任の規定が準用(適用)されます。
管理者との関係は管理者の事実行為の委任が主ですからその性質が本来的には準委任であること前記のとおりです。

(区分所有者の責任等)
第二十九条 管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為につき区分所有者がその責めに任ずべき割合は、第十四条に定める割合と同一の割合とする。ただし、規約で建物並びにその敷地及び附属施設の管理に要する経費につき負担の割合が定められているときは、その割合による。
2 前項の行為により第三者が区分所有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行うことができる。

1.区分所有者の対外的責任の理由
第29条は区分所有者の対外的責任に関する規定です。
この規定では区分所有者は管理者の行為の責任を当然負うものとしてその割合を区分所有者の有する共有持分の割合と同一のものと規定しています。

代理人の代理行為は本人に効力を及ぼすのですから、管理者を区分所有者の代理人と位置付ける区分法の立場では(26条2項)この結論は当然かもしれません。
しかし、管理者は区分所有者全員のために行為し、その効果は区分所有者全員に等しく及ぶことになりますから、民法の原則によればその債務も全員が共同して負う(不可分又は連帯債務となる)のが原則のはずです。
そうすると、この規定は民法の原則を制限して区分所有者に分割債務を認める責任の緩和規定ということになりそうです。

しかし、そう考えるべきではなく、区分所有者は管理組合という社団又は組合を組織し、管理者はその代表ないし代理機関として行為するわけですから、その債務は一義的には社団又は組合に、社団又は組合の財産を引当に帰属するものと考えるべきです。
この場合、団体の債務が団体の財産で全て弁済できれば問題がないのですが、弁済ができなかった場合にその債務に対する構成員の個人責任が問題となります。
この点、組合の場合は組合員の責任を加重して組合財産で弁済できなかったものにつき各組合員が第二次的にその出資割合で責任に応じることとされています(民法675条)。

尤も、各組合員は出資の割合で組合の損失の負担義務を負いますから、組合財産が不足する時はその割合に応じて組合に対し財産の補填を行いその財産で組合が債権者に弁済することを考えれば、この対外的責任というのは単に組合が各組合員に有する損失負担請求権の債権者による直接行使を認めたものに過ぎないともいえますが。

それはともあれ、負担割合が出資の割合か共有持分割合かの違いはあるものの民法675条の規定内容は29条と同一です。
従って、管理組合の社団性肯定に消極的な区分法の規定からすれば管理組合を民法上の組合と構成して民法675条の趣旨を確認したものが29条ということになり、29条は区分所有者の責任加重規定といえます。

ところで、管理組合を社団とした場合、その代表者たる管理者の代表行為の効果は管理組合に帰属して管理組合がその財産をもって債務の弁済にあたることになりますが、この社団の財産で弁済できないものにつき民法の原則どおり構成員の責任を追求できないとすることは民法上の組合と同様な管理組合の私益的性格から不当であり、構成員の責任を認めるべき必要性と理由があることも組合の場合と同様です。
この考えからすれば、29条は民法上の社団の構成員の例外規定として、その個人責任を認めたものといえます。

2.責任の割合
この負担割合は、原則として法14条に定める内法面積による共用持分割合によりますが、規約で管理費等の負担割合が別途規定されているときはそれによるものとされます。これは規約自体の公示性はそれほど強度とはいえませんが、一応の公示力を認めて民法675条の頭割り規定の特則を定めたものといえます。

3.承継人が責任を負う理由
なお、第2項でこの区分所有者の個人責任に関し特定承継人の責任が規定されています。
一旦負担した個人責任は区分所有者が区分所有権を譲渡しても免れることはできませんが、この条項により譲渡人と並んで譲受人も責任を負うものとされます。

しかし、組合の債権者の保護としては区分所有者個々人に管理組合と共に責任追及ができることで十分であり、区分所有者は区分所有権を譲渡してもその確定した負担分を免れませんから、わざわざ承継人に請求を認める必要は本来ありません。
尤も、上記のとおり管理組合は区分所有者に対しその費用負担割合(通常は持分割合)で費用請求ができる債権を持ち、この債権は7条で先取特権が認められると同時に8条で特定承継人に承継されるものとされています。
従って、この規定がなくとも組合の債権者は組合が区分所有者に対して有する先取特権付の費用徴収債権を差し押さえて回収し、又は組合が承継人に対して有する債権を差し押さえて回収することができることになります。
このように考えると、29条がなくとも組合債権者は29条の場合と同様の結果が得られますから29条はますます不要の条項となりそうです。

結局、29条は管理組合の債権者を特に保護しようとしたものではなく、組合の債権者が上記のように組合の債権に基づき各区分所有者の承継人に請求するという迂遠な手段を回避して直接請求を認めたものであると考えられます。

そうであるとすれば先取特権も認めてもいいようですが、先取特権は一般に特定の債権の保護を目的とするものであって組合債権者の債権というだけでは保護する謂れがないことから、先取特権については認めないものとしたようです。

第五節 規約及び集会

(規約事項)
第三十条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
2 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。
3 前二項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。
4 第一項及び第二項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。
5 規約は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することのできない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。)により、これを作成しなければならない。

参考 旧法(規約事項)
第三十条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
2 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。
3 前二項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。

1.規約とは
30条は規約に関する規定です。
区分法では単に規約と称していますが一般には管理規約といわれています。

規約とは、区分所有建物において建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する事項に関し区分所有者の権利義務を定める区分所有者団体という部分社会における自治法の一種と考えられます。
30条1項はその制定の根拠を示し、その規定可能範囲を規制する授権法規且つ制限法規です。

2.実質的意味の規約と形式的意味の規約
ところで、規約には実質上の規約と形式上の規約を区別することができます。
実質上の規約とは30条1項による建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項について31条1項の手続きにより定められた規則そのものをいい、形式上の規約は、通常は管理規約というタイトルが付された文書、即ち文書の形式で存在する規約をいいます。
そして、33条により規約は保管・閲覧の対象となることにより物質性が要求されていると考えられますから、規約の制定とは実質的意味の規約を形式的意味の規約で作成することと考えられます。
従って、実質的意味の規約で定めるべき事項は形式的意味の規約で定めなければ効力がなく、実質的意味の規約で定めることができない事項は形式的意味の規約で定めても効力がありません。

例えば、ペットの飼育の制限等建物の使用に関する事項は実質的意味の規約事項ですから、形式的意味の規約で定めなければならず形式的意味の規約以外の使用細則等で定めても効力がありません(但しあらゆる細目の一切を定める必要はなく根本的・基本的制約事項が形式的意味の規約にあればその細目的事項を細則に委任することは可能です。)。

また、区分所有権の譲渡制限等は建物等の管理使用に関する事項ではありませんから形式的意味の規約で定めても効力がありません。
その他、実質的意味の規約も広義の合意の一種として強行法規や公序良俗に反することはできず、不合理に権利を制限し義務を規定するような場合にはその効力が認められないことは勿論です。

尤も、上記のとおり、規約は本来は建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する事項を定めるものではありますが、同時に区分所有者団体が制定する自治法である性格から区分所有者団体の組織・運営に関する事項を定めることができることも団体自治権から当然であり、実際管理組合の組織・運営に関する事項も盛り込んで管理規約が制定されるのが一般的です。

3.規約内容の衡平
ところで、規約は設定が任意となっていますから、必ず規約を設定しなければならないものではありません。しかし、区分法の規定だけでは区分所有者団体を運営し、建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用を円滑に実施することは困難ですから、規約が設定されることが通常です。

これについては、一定のマンションモデルを前提にした標準管理規約が公表されていますから、これに準拠した規約が作成されるのが一般のようです。
通常は、分譲会社が分譲するにあたって宅建業法上、分譲契約書、重要事項説明書、管理規約の所謂3点セットを現地販売所やモデルルームに備えることとなっていますので、この時点で規約原案が作成されます。
そして販売が進むにつれ、購入者から規約の合意書を取り付けることにより最終的に全員の合意を集めて所謂書面決議により規約(一番最初の規約という意味で原始規約といわれています。)が成立することになりますが、この形態では規約の中身は分譲業者が決定し本来の当事者であるべき購入者がその内容の決定に加わる余地が事実上ありません。
そのため、一部の分譲業者が不当な内容の規約を作成することも起こりえることになります。

このような場合への対処として新法では3項を新設し、規約内容の実質的衡平を要求しています。
このことは規約の新設でも変更でも変りはありませんが、制定の趣旨からは特に原始規約を事実上作成する分譲業者へ向けたものといえるでしょう。

3項は規約内容に形式的に不公平もの(取扱いの差異)がある場合に、その扱いを是認しうる程度の合理性の存在を要求するもので、民法90条の定める一般条項たる公序良俗を具体化したものといえます。
従って、この規定に抵触する場合は管理規約の当該抵触部分はその限度で無効となりますが、3項自体も抽象的規定ですからある事項の合理性の有無の判断は解釈者毎に結論が分かれる非常に幅広いものになりそうです。
今後の裁判例の蓄積を通じて規定内容の明確化が図られるのを待つ必要があります。

4.相対的記載事項
このように規約はその制定が強制されていませんから、規約の書式があるというものでもなく内容的にも必ず記載されないと規約が無効となるような必要的記載事項があるわけではありません。
しかし、30条1項の事項等規約に定めなければ効力がない(相対的記載事項)とされる多くの事項がありますから、規約の内容は相対的記載事項の集合体となっています。

相対的記載事項として30条1項で規約の規定内容となっている事項は、建物(共用部分は勿論附属設備や専有部分も含めた1棟の建物)又はその敷地(法定敷地は勿論規約敷地を含みます)若しくは附属施設の管理(広義の管理を言うと解するべきですから保存・管理・改良・変更の各行為をいいます)又は使用に関する事項です。

30条1項以外で規約事項となっている項目は、規約共用部分の設定(4条2項)、規約敷地の設定(5条1項)、先取特権の被担保債権の創設(7条1項)、共用部分の共有に関する別段の定め・管理所有の設定(11条1項)、共用部分の持分割合の別段の定め(14条4項)、一部は共用部分の全体での管理の定め(30条2項)、変更の決議での定数の減少の定め(17条1項但書)、共用部分の管理の別段の定め(18条2項)、共用部分の負担及び利益収取方法の別段の定め(19条)、分離処分禁止解除の定め(23条)、管理者選解任の別段の定め(25条1項)、管理者への訴訟担当の授権(26条4項)、管理者による管理所有の設定(27条)、区分所有視野の対外的責任の割合の別段の定め(29条1項但書)、規約保管者の別段の定め(33条1項)、少数総会召集権の定数の減少の定め(34条3・5項)、決議事項の事前通知の別段の定め(37条2項)、議決権割合の別段の定め(38条)、集会の議決要件の別段の定め(39条)、集会議長の別段の定め(41条)、管理組合法人を代表する理事の定め(49条4項)、管理組合法人の理事の員数(49条6項)、管理組合法人の残余財産の帰属先(56条)、軽微復旧の別段の定め(61条4項)等があります。

5.任意的記載事項
なお、相対的記載事項ではありませんが、形式的意味の規約に記載した事項はその変更が規約変更にあたるという意味で手続きが厳重であり、それらは管理組合の重要事項と認識される効果がありますから、各管理組合で重要事項と認識した項目を任意的記載事項として規約に記載することは自由です。
一般にこのことを規約自由の原則と称する場合があります。標準管理規約でも管理費や特別修繕費、会計規定等管理組合にとって重要と思われる事項を規約に記載しています。

6.一部共用部分の規約
一部共用部分については、全体共用部分と同様その共有者だけで団体(全体に対する部会)を形成し(3条)、全員の利害にかかわるものを除きその者だけで管理を行うことが原則(16条)ですが、規約に定めれば管理組合の管理に管理を移管することができることは16条の解説のとおりです(ただし、31条2項)。
それと同じ趣旨により、一部共用部分の団体(部会)においても当該団体の団体自治および一部共用部分の管理のために規約を設定することができ、その内容や権限は管理組合の場合と異なりません。

ただ、この部会の決議が必須となるのは一部共用部分の変更のとき以外にはありませんから、管理組合の組織と重複して部会を組織化するのは煩瑣且つ不経済です。
そのため用途の異なる複合建物の場合以外には部会規約を設定して部会を構成する例はあまりないようです。

7.規約の対外的効力
3項で規約は区分所有者以外の者の権利を害することができないと規定しますが、規約が区分所有者(一部共有者)団体の自治法であることから団体外の者に効力を及ぼすことができないのは当然です。
従って、3項はその当然の事柄の確認規定ということになります。

ただし、この区分所有者団体の周辺にいる関係者にも全く及ばないとすると団体の目的達成に支障が出る場合がありますから、必要な関係者には規約の効力が及ぶことを個別に定めています。
46条1項の特定承継人および同2項の占有者がこれにあたります。

8.書面又は電磁的記録による規約
新法により4項が新設され、規約は書面又は電磁的記録により作成されるべきことが明記されました。
これは規約が形式的意味(閲覧・保管の対象となる物質的な存在)で存在する必要があるということですが、このこと自体は1項および区分法の他の条項で当然のことでしたから、4項新設の意味は正に電磁的記録による規約を認めたことにあります。

尤も、電磁的記録による規約の新設は、マンション住民の皆がみんなコンピューターを使えるわけでは有りませんから、一般の要望に応えたというものではなくIT普及を重要政策とする政府行政当局の都合によるものと思われます。
従って、これが普及するかは未知数といえるでしょう。

ところで、電磁的記録による規約としてどのようなものが認められるかは、法務省令で定めるとされていますから省令が公布されるまで待たざるを得ませんが、書面という物体と並列に扱われるものですから規約データー自体を指すものではなくそのデーターを記録したフロッピーディスク、MO、DVDその他の物体としての記録媒体を指すように思われます(商法施行規則2条から5条参照)。

(規約の設定、変更及び廃止)
第三十一条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
2 前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。

1.規約設定等の要件
31条は規約の設定、変更及び廃止の手続きに関する規定です。
規約が契約だとすれば当然その効力の及ぶ全員の合意が必要となりますが、団体の活動に全員合意を要求することは不可能ですから区分法でも多くの団体と同様に多数決原理が採用されています。
31条は団体の根本規則である規約の設定・変更時における多数決原理を表した規定です。
団体の根本規則であることやその内容が区分所有者の共用部分や専有部分に関する権利を制限し義務を課すこと、しかも反対者に対してもその効力が及ぶことからこの種の多数決では一般に単純多数では足らず特別の要件を設けた特別多数が必要とされます。
それがどの程度であればよいかは難しい問題で原則的には立法機関たる国会の合理的判断に任せるしかありません。
31条では、規約の設定、変更又は廃止について区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数の賛成を成立要件としています。

このように、議決要件に区分所有者及び議決権の双方を要求されていますが、区分所有者数だけを要件とすることは区分所有法の本来的機能である民法物権編の特則としての財産管理法の趣旨に反しますし(財産の量に比例して制約を受けるのだから発言権もそれに比例するのが合理的)、議決権だけを要件とする場合には弱小権利者の権利が守られず規約という団体管理法の趣旨に反するので、両者の調和を図った巧妙な方法と思われます。もとよりどちらか一方のみを要件とした場合に比べて議決要件は窮屈なものとなりますが、対立する利益の調和(妥協)を図る場合のやむを得ない結果であり、特に非難するにはおよびません。

2.強行法規
そして、この定数は立法者が賛成者と反対者の利益調整として妥当と考えて決定した基準であり、且つ規約で別段の定めを許容していませんから、加重することも緩和することもできません。

この点、共用部分の変更では区分所有者の要件を規約で過半数まで減じることを認めております(17条1項但書)。
これは、共用部分の変更では財産管理面が主眼であり、そのため弱小の持分権者が多数持分権者を規制することが忌諱された結果ですが、規約の場合はその規制内容が必ずしも財産関係には限られないため弱小の持分権者の利益も軽視することはできないとされた結果です。

3.付加条件の場合
さて、このように規約は区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数により設定・変更ができますが、一定の場合には更に条件が付けられています。
それは一つは、規約の変更等が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない、ということであり、もう一つは一部共用部分に関する事項で全員の利害に関係しないものについて全員の規約に定める場合に当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない、ということです。

4.付加条件1−特別の影響のある場合−
では、一部の区分所有者に特別の影響を及ぼす時とはどういうことでしょうか。
特別の影響条項は共用部分の変更や管理の場合にも同様に存在し、その必要な理由もまた同様です。
即ち、規約の変更等は全員にその効力が及びますから、全員が多かれ少なかれその影響を受けることは明らかです。
しかし、規約は区分所有者団体の基本的ルールですから多数決で成立するものであれ、いったん決まったことは反対者もその団体の一員である以上これを守ることは当然です。
この意味で区分所有者には自己の意に添わない又は自分に不利なことでも規約を遵守するという受忍義務があります。

しかし、多数者の意思が常に少数者の意思に優越するとした場合には何時自分が少数者の立場になるかもわからないのですから安心して住むことができません。
物事には全て限界というものがあり、それは規約の場合も同様です。
その限界が特別な影響で、それは規約の変更等が特定の区分所有者の権利義務に通常受忍すべき程度を質的又は量的に超えた特別の犠牲を強いるようなときは多数者による少数者への不当な圧迫と評価されてその効力を認めないというものと考えられます。
もとより、特別な影響といっても抽象的な概念であり、具体的場合に何がそれに該当するかは一概には言えません。
ケースバイケースである変更等が特定の区分所有者に対し、受忍限度を明らかに越えたものかどうかを、変更等の必要性・合理性・緊急性と制約を受ける権利等の性質・内容・制約の程度等を総合的に判断して結論を下すべきものです。
このような具体例は裁判例が参考となりますが、単に制約を受けるだけではとくべのものとは認定されてはいませんが、専用使用権の制約では特別と認定される場合と否定される場合とがあり、認定の困難さを反映した結論となっています。

5.付加条件2−一部共用部分の場合場合−
一部共用部分の場合には、当該一部共有者の一定の割合の者が反対した場合には規約の変更等ができないこととなっていますが、これは本来、全体の利益に関係しない場合には(この場合には一部共有者の反対があっても強制的に全体の規約に取り込める。)、当該部分に関する規約の設定変更権限は一部共有者の専権に属すべきものであるから当然のことです。
従って、一部共用部分について全体の利益に関係しない事項を全体の規約に取り込むためには、一部共有者だけでもその旨の一部共有部分の規約の変更等が有効に成立する場合にのみ認めることが、当該部分を共有する一部共有者の自治権を守る所以となります。
この意味で、一部共有者での一部共用部分に関する規約の変更等が成立しない場合、即ち、一部共有者の区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数を得られない場合(それは一部共有者の区分所有者または議決権の各四分の一以上の人が反対した場合です。)には一部共有部分の規約も不成立の場合ですから、全体の規約でもまた、定めることができないものとしています。

(公正証書による規約の設定)
第三十二条 最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、第四条第二項、第五条第一項並びに第二十二条第一項ただし書及び第二項ただし書(これらの規定を同条第三項において準用する場合を含む。)の規約を設定することができる。

1.公正証書規約
32条は、公正証書規約に関する規定です。
規約は原則として、31条の集会の決議または45条の書面決議で作成されるのが通常です。
規約はもともと区分所有者団体のルールであり、専有部分を含む1棟の建物の管理・使用に関する規定なのですから、その作成には当然に複数者の存在を予定し、それらの者の共同的な合意という合同行為によって成立するものであるからです。
ところが、規約の相対的記載事項の中には各区分建物の敷地権割合等のように建物竣工と同時または分譲開始前の購入者が存在しない段階で決定しておく必要のある項目が含まれておりますから、区分建物を含む1棟の建物が分譲業者の単独所有の段階でこれらを決定できるようにしなければ、円滑な分譲が望めません。
そこで、本来合同行為であるべき規約作成に関し、例外的に単独行為による作成を認めたものが32条の規定です。

2.規定内容の制限
ただし、団体の組織や内部規定等当事者自治に基づき当事者が自主的に形成すべき事項は分譲者が単独で決定するのは好ましくないため、単独行為で認められる事項は分譲に必要最低限と思われる次の4項目に限られます。

また、当該項目自体も多数の区分所有者の利害にかかわる重要事項であることから、その成立および内容を分譲者が恣意的に変更することを回避するため、それらを公に確認する手段として公正証書によらなければ効力がないものとして区分所有者の利益保護を図っています。

@4条2項の規約共用部分の設定、A5条1項の規約敷地の設定、B22条1項但書の敷地利用権の分離処分の許容、C同2項但書の敷地利用権の割合の特段の定め

(規約の保管及び閲覧)
第三十三条 規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。
2 前項の規定により規約を保管する者は、利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧(規約が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの当該規約の保管場所における閲覧)を拒んではならない。
3 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。

参考 旧法(規約の保管及び閲覧)
第三十三条 規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。
2 前項の規定により規約を保管する者は、利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧を拒んではならない。
3 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。

1.規定の趣旨
33条は規約の保管と閲覧に関する規定です。
規約は管理組合の根本規則を定めた規程であり、何らかの事態が発生した場合には規約を下にその解決が図られる重要書類ですから、通常、その作成・成立手続きを定めると共に必要な場合に規約を利用できるようにするため保管者も定めておくことが通常です。
従って、重要なことは右側通行か左側通行かと同様、保管者が定まっていること自体であり、保管者をどのように定めるかはあまり意味のない決め事に属します。

2.保管者−本人−
33条では保管者は、管理者がいる場合には管理者、管理者がいない場合(区分法では管理者の設置は任意であり、管理者がいない場合がありえます。
また、管理者がいたが辞任その他で欠けた場合もこれに該当します。)には、建物に現住の区分所有者またはその代理人の中から規約または総会決議で定める者としています。
管理者が保管者の第一順位にあることは、管理者が規約を実行する職責を持ち、2項に係る閲覧等の組合事務を執行する立場にあるのですから、妥当な規定といえます。
第二順位は建物に現住する組合員またはその代理人です。
現住(法文上は使用ですから事務所や店舗の場合には文字通り使用者となります。)の要件は、規約の閲覧の便宜から当該建物内に規約若しくはその保管者があるのが望ましいという趣旨の表れで、それなりに合理性があります。
ただし、重要文書ということで銀行の貸し金庫に保管する等現実の保管方法は特段の定めがない限り保管者がその責任において任意に判断実行できますので、規約が必ず建物内に存在するものではありません。

ところで、規約の保管はそれ自体は民法上は寄託契約に属しますので、有償寄託と無償寄託では責任の程度が異なることになりそうです。
しかし、区分法上はあまり明らかではありませんが無償だとしても管理者の場合は委任類似の契約に基づく管理者業務の一環としての業務ですから民法659条に係らず当然善管注意義務があると思われます。
従って、自分で保管場所を確保できない場合やより保管に適すると思われる場合には管理組合の事前の承諾(民法658条)がなくとも保管代行者を利用することが可能であり、むしろそれが要請されることもありますから、現実には直接の保管者が他の者がである場合も当然有り得ます。

他方、保管者が管理者でない場合は、規約の保管は純然たる寄託契約となりますので、無償の場合は責任が軽くなりますが(民法659条)、皆のためというだけで善管注意義務を負わせるのは酷ですからこの結論もやむを得ないでしょう。

3.保管者−代理人−
ついで、現住の区分所有者の代理人も指名を受ければ保管できるとされています。
保管という事実行為に代理人という法律行為を行う地位の者を規定するのはそぐわないきらいがないでもありませんが、代理人については区分法には規定がないため民法その他の法律による代理人ということになります。
この場合、規定の趣旨に最も適するのは本人の成り代わり(代行者)といえる法定代理人であり、親権者や後見人等の無能力者の法定代理人、裁判所の任命する不在者の管理人がこれに該当するといえます。
任意代理人の場合は本人が委任した不在中の財産管理人はともかく、それ以外の者の場合には規約保管を代理行為の付帯業務とするような代理の場合でないと代理人とはいえないでしょう。
なお、現住を要件とする以上、この代理人は占有代理人でもありますが、占有者というだけではこの代理人と解するのは困難でしょう。
代理人の場合も無償の場合は無償寄託として責任が自己の物と同一の注意となることは非管理者の保管の場合と同様です。

4.閲覧・利害関係者
ところで規約も保管するだけでは意味がなく、文書である以上必要なときに必要な人が内容を確認できる必要があります。
2項はこの閲覧が必要とされる範囲を利害関係人に限る規定です。

新法では、規約の形式に従前の文書形式の他に電磁的記録の形式を加えましたから、保管・閲覧の対象にも文書の他にフロッピーディスクやCD、DVD等のものが加わりました。
保管はこれでいいのですが、閲覧で閲覧者にフロッピーディスクやCD、DVDを見せても内容は分かりませんから、記録媒体がこれらの場合にはモニターで可読の状態にしたものを閲覧させるかプリントアウトする必要があります。
そのため、その旨を新法では2項の括弧書きで注書きしています。

なお、利害関係人とは、規約の規定内容について法律上の利害関係、すなわちその者の権利義務に何らかの影響が認められる者をいい、事実上の影響のある者は含まないとされています。
別に誰に見せても減るものではありませんが、この閲覧権者の制限は規約が管理組合という団体の内部規則であり、その団体のプライバシーや閲覧事務の手間との関係で法律上閲覧の利益を保護すべき者との調整の結果です。

そこで、法律上の利害関係者に誰があたるかが問題ですが、まず区分所有者は管理組合の構成員として当然これに該当します。
次に特定承継人は規約の適用を受け、占有者も建物の使用に関し区分所有者と同様な義務を負担しますから(区分法46条)当然法律上の利害関係があります。
区分建物の担保権者も規約の規定が担保価値に影響するので当然です。

問題は、買受を予定している者や借受を予定している者で、これらの者も買い受け等により特定承継人や占有者となるので利害関係人にあたるとする見解(マン管HPのQ&A)もありますが、それらの者は利害関係者となりうる者とはいえてもいまだ利害関係者自身とはいえないように思われます。
少なくとも予約契約等により利害関係の成立が確定的に予定されているのでなければ法律上の影響を肯定することは困難で、それを購入予定といえば誰でも閲覧権者になってしまうのでは、閲覧者の制限は事実上無意味となってしまうでしょう。

尤も、買受を予定している者や借受を予定している者にとって、規約の内容が重要であることは勿論であり、売主や貸主に取引上要求される開示義務項目であることは否定できません。
この点は宅建業者である売主や仲介業者の業法上の義務であることからも明らかですが、これらはあくまで売主や貸主がその相手方に対する義務であって管理組合自身の義務とはいえないように思えます。
これらの義務の履行は売主たる区分所有者が自己の有する閲覧権を通して間接的に実現されるものであって、利害関係者の範囲を拡張して実現するものではないように考えます。

ただし、2項は閲覧の拒絶権を認めているに過ぎず閲覧権者以外に開示することを禁止しているわけではありませんから、買受を予定している者や借受を予定している者、更には仲介業者に閲覧を許すことはそれらを予定する者やその当事者たる区分所有者の利益のために望ましいことと思われ、現実にはその方向で運用されているように思われます。

法律上の利害関係者以外の者は事実上の利害関係者といわれ、この解説上は買受を予定している者や借受を予定している者も含みますが、区分所有者の単なる債権者(区分所有権の差押等担保権者と同様に区分建物に直接の利害関係が認められる場合以外は経済上の利害関係にあるの過ぎません。)、友人(区分所有者の利害に心情的な利害関係が有るにすぎません。)、規約変更等を検討している他のマンションの理事等(単なる参考となる利益があるにすぎず規約の内容がどうであろうと当人の権利義務に何らの影響もありません。)等がこれに当たります。

5.正当な理由
なお、閲覧権者の閲覧請求でも正当な理由、即ち時間的な都合や閲覧理由との関係で拒絶することが認められます。
抽象的な概念である正当かどうかは請求者と義務者とのそれぞれの理由の相関関係を客観的に判断してどちらの利益が優越するかが決定される事柄であり、非常識な時間でも閲覧の必要性と緊急性が強度の場合には閲覧の利益が認められますし、嫌がらせのように閲覧の理由がない場合、常識的な時間でも義務者に閲覧させる余裕がないときに事前連絡なく突然閲覧要求があった時等の場合には拒絶しても正当と判断されます。

6.保管場所
ところで閲覧権者が閲覧を実現するためには閲覧義務者を発見することが必要です。
そのため3項で規約の保管場所を建物内で且つ見易い(発見しやすい)場所に掲示することが要求されます。
しかし、保管場所が分かっても閲覧は閲覧義務者の義務の履行で果たされるのですから、○○銀行の貸し金庫に保管中と掲示しても意味がありません。
従って、保管場所とは閲覧を実現できる保管義務者又はその履行補助者を発見できる場所即ち保管義務者等の住所・居所を意味するものと解されます。

(集会の招集)
第三十四条 集会は、管理者が招集する。
2 管理者は、少なくとも毎年一回集会を招集しなければならない。
3 区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。
4 前項の規定による請求がされた場合において、二週間以内にその請求の日から四週間以内の日を会日とする集会の招集の通知が発せられなかつたときは、その請求をした区分所有者は、集会を招集することができる。
5 管理者がないときは、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。

1.集会
34条は集会の招集に関する規定です。
この集会を一般には総会と称していますが、総会という名称が団体性のはっきりした社団等の議決機関という性格を帯びたものである一方、区分法では区分所有者団体の社団性に冷淡であることも反映して総会ではなく区分所有者個々人の一時的な集合体というイメージの集会という名称を用いています。
しかし、区分所有者団体たる管理組合は社団と解すべきですから集会を総会と理解して問題はありません。

2.集会の招集
このように集会とは、区分法や規約に定める事項を決定する権限を有する社団たる管理組合の最高の意思決定機関・議決機関です。
ただし、集会も国会や株主総会等の他の議決機関と同様に恒常的に活動する機関ではなく、一定の招集権者の招集により活動能力を取得し、会議の終了により活動を終了する非常設機関となっています。
そのため、誰が招集権者であり、招集権者がどのような方法で集会を招集するのかが重要な事項となります。34条はこのうちの招集権者に関する規定です。

3.管理者による招集
ここで、集会の召集はまず管理者にその権限が認められています。
管理者は組合の事務を執行し、組合を代表する代表機関であり、集会の招集も組合事務の執行の一環ですから招集権を管理者に認めることは当然といえます。

なお、2項では、管理者は少なくとも毎年1回集会を招集しなければならないとして管理者に招集義務を課しています。
これは集会がその有する管理者の解任権(25条)や報告聴取権(43条)等により管理者の監督機関でもあることから(組合内部の委任関係にあっては受任者たる管理者に対する委任者たる本人の立場に集会が相当します。)、少なくとも年1回は管理者の業務執行の監督の実を挙げる機会を保証しようとするものです。
従って、管理者がいない場合には年1回の集会招集義務はありません。

ただし、実務上は会計期間を1年とする予算制度で管理組合が運営されていることが多く、予算や決算の審議のために毎年定期に定期総会が招集されているのが一般であり、管理者(通常は理事長)の監督についてもその機会に行われます。

4.少数区分所有者の招集の趣旨
召集権者の第2番目は、少数区分所有者の招集権です。
一般に、第一順位の招集権者のみに召集権を認める例は少なく第二順位の招集権者またはそれに代わる招集義務を定めるのが通常です。
上記のとおり招集は集会を活動させる唯一の手段ですが、第一順位の招集権者が自己の意向に沿わない議題である等の理由により招集しない場合には管理組合の意思決定に必要な集会の成立が不可能となります。
そのための対処として、管理者の招集に代わる少数区分所有者の招集権を認めたのが3項及び4項の規定です。

5.少数区分所有者の招集の方法
この規定による少数区分所有者の招集権の要件は二段階に分かれています。

まず、少数区分所有者に管理者に対する会議の目的(議題)を示した集会の招集請求権を認めます(3項)、この請求により管理者が所定の期間内(二週間以内にその請求の日から四週間以内の日を会日とする集会の招集)に招集しなかった場合には自ら招集できることとしています(4項)。

少数区分所有者が自ら招集する場合には、その請求の日から四週間以内の日には縛られず、別途招集手続きを踏む必要のあることは当然です。

ここで、少数区分所有者の定数は区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上の者とされ、この要件を満たせば実際の人数は1人であろうと何人であろうと、この条項の少数区分所有者となります
。 あまり大きな定数を設けると実際上招集が不可能になって少数区分所有者の招集権を認める意味がなくなりますし、あまり少ない定数では濫用的な召集を防止できず問題ですから、その調和点を1/5としたものがこの規定の趣旨です。

ただ、この定数は区分法が具体的な区分建物の区分所有者数やその議決権の分布状況を無視して定めておりますから、これでも実際上招集が不可能または相当に困難なケースがありえます。
そのため、規約でこの定数を更に減じる(緩和する)ことが認められており、定数を減じる方法は、区分所有者数と議決権の一方または双方を1/5より減じる方法のほか、区分所有者数と議決権の一方のみを要件とすることも可能と考えられます。
しかし、少数区分所有者制度には少数権利者らによる濫用防止の目的がありますから、単独招集権は認めないのが区分法の趣旨のようです。

6.全員出席集会
招集権者の第3番目は、全員出席集会(36条)の場合です。
全員出席集会の場合にはそもそも招集手続きが必要ありませんから招集権者も不要ともいえます。
しかし、招集を集会の活動能力取得の要件とする場合には全員が集まった時点で集会の活動能力が取得それるのですから、全員出席集会における全員も招集権者の一つと考えられます。

7.管理者がいない場合の招集
以上は、管理者がいる場合の招集ですが、管理者がいない場合には少数区分所有者および全員出席集会が集会の招集を行うことになり、その場合の方法等は上記と同様です(5項)。

(招集の通知)
第三十五条 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。
2 専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第四十条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。
3 第一項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。
4 建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第一項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。
5 第一項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第十七条第一項、第三十一条第一項、第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。

参考 旧法(招集の通知)
第三十五条 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。
2 専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第四十条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。
3 第一項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。
4 建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第一項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。
5 第一項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第十七条第一項、第三十一条第一項、第六十一条第五項、第六十二条第一項又は第六十八条第一項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。

1.招集規定の趣旨
35条は集会の招集の通知に関する規定です。
集会は全区分所有者が参加して区分法や規約で定める重要事項を審議決定する管理組合の法定の最高の意思決定機関で、その決定は反対者を含めた全区分所有者を拘束し、更には特定承継人や占有者等決議に参加できない者に対してもその効力が及ぶ等により多数関係者に重大な影響を及ぼす会議です。
従って、その会議で決定される事項が適法であるべきことは勿論ですが、その手続き自体も法定されその適法性が要請されるのが通常です。
35条はその会議の端緒たる招集手続きに関する規定です。

そこでは会議参加者の参加の保証が図られるのと同時に招集者の便宜を図り多数者からなる参加者の一部に存する手続きの瑕疵で会議全体が違法となることを可及的に阻止して会議の適法な成立が予定されるのが通常です。
この観点からは、一定期間前の通知や各人宛の通知さらに通常議決事項の議題の通知や特別決議事項の議案の要領の通知は参加の便宜のためであり、通知の期間計算がが到達主義によらず発信主義によること、住所不明時の探索責任を免除すること、掲示による通知の見做し規定があること等は招集者の便宜と会議の適法な成立の確保のためのものといえます。

2.招集の原則
1項は招集の原則規定です。
招集通知は所謂観念の通知ですが、通常意思表示の規定が準用されますので原則は到達主義となりますが、通知すべき相手方が多数の場合には到達時を揃えるのは事実上不可能ですからこの規定のように発信主義が取られます。
従って、招集者は1週間前に本人宛に会議の目的即ち所謂議題を明示した招集の通知を発信しさえすればよく、この場合の到達の危険(その早遅や不到達)は受信者たる区分所有者が負担することになります。
このことにより一部の者に対する不到達が招集手続きの瑕疵ひいては集会決議の違法無効を結果することを防止しています。

1週間は、参加者に集会の議事内容の検討と出席の準備のための猶予期間です。
この期間の計算方法は区分法には規定がありませんから民法(民法138条から143条)により、通知日と集会日との間に中1週間以上の期間を置くということになります。

もとより、この期間も区分法の想定した決め事に過ぎません。
従って、個々の管理組合における構成員の住所地の分布状況に応じて1週間という期間が短すぎたり長すぎたりするでしょうから、この期間を延ばしたり縮めたりして適切な期間を規約で定めることができるものとされます。
ただし、区分所有者が参加できないような短期を設定した場合には区分所有者の集会議決権を侵害するものとしてその規定は無効です。

3.共有者の場合
専有部分の共有者は、その各々が区分所有者ですから(区分法2条2号)、1項の規定ではその全員が招集通知の送付対象者となります。
しかし、通常は専有部分1戸につき1区分所有者であるのが通常のため、議決権も区分所有者数のカウント上は共有者全員を併せて1名としていますし、招集は議決権行使のための召集ですから本来議決権保有者が招集対象者であるべきです。
このようなことから、専有部分が共有の場合には、そのうちの議決権行使者がいればその者に、いなければ招集者が選択する者1名に通知を発すればよいとしたのが2項です。

4.通知の宛先
ところで、通知するためには宛先が分からないと意味がありませんが、その宛先は召集権者が探索するよりも各区分所有者が届出るのが現実的ですから、宛先はまず区分所有者の届出た場所とし、それを怠っている者についてはその者の専有部分宛に発信するものとされます(3項)。
この場合、到達が擬制されますから、発信しさえすれば現実には到達しなくとも招集手続きの瑕疵にはなりません。
発信主義を採用した当然の結果です。
勿論、宛先を探索して現実の住所に送ることはかまいませんし、望ましいことでもありますが、この場合には到達の擬制は受けられませんから集会の適法性保持の面ではかえって危険な行為といえます。

5.掲示でよい場合
3項のように、建物内の専有部分宛に通知するのは、通知は建物から発信して郵便局を経由し建物に戻るという経路を取りますが、それが迂遠な方法であることは否めません。
そこで建物内ではもっと簡便なコミュニケーションが可能であるべきだとして、掲示板での招集を認めたのが4項です。

建物内への通知である点で建物内にいる区分所有者(当然建物内の場所を宛先として届出した者です。)も、届出がないために専有部分宛通知される者と変わりがありませんから、その者も対象となります。
ただし、この方法は個々の直接の通知ほど確実性がありませんから、この簡便な方法を取るためにはその旨の規約の定めが必要です。

6.議案の要旨の必要な場合
上記のとおり、事前の招集は審議内容を検討し会議の準備をさせるものですが、会議の目的たる事項すなわち議題が、所謂特別決議事項のうち管理組合法人となること(法47条1項)、管理組合法人の解散(法55条2項)、義務違反者に対する処置の使用禁止(58条)、競売(59条)、占有者の引渡(60条)である場合を除く、第17条第1項の共用部分の変更、第31条第1項の規約の設定・変更・廃止、第61条第5項共用部分の大規模復旧、第62条第1項の建替え又は第68条第1項の団地規約の設定・変更・廃止の場合にはその重要性に鑑み議案の要旨(概略的な議案の内容)も併せて通知するものとされます(5項)。
更に、新法では団地内建物の建替え規定が新設されたことに伴い、第69条7項の一括承認に付する旨の承認の決議が特別決議に追加されたため、これの議案の要旨の通知が加入されました。

7.議題・議案の提出権
議題・議案の提出権に関しては区分法では独立の条項で定められたものがありません。
35条に会議の目的たる事項として議題を特別決議のほとんどの場合に議案の要領を通知することとされていることから招集権者が議題・議案の提出権者と考えられているようです。
そうすると管理者と少数招集権者が議題・議案の提出権を持つことになります。

各個人が提出権を持つ場合には、不要不急の議題が提出されて集会の効率的な審議に支障が生ずる虞も否定できませんが、1/5という定数は少々過大な要求とも考えられます。
これは管理組合が共同体組織でありその連帯の中で少数意見も事前に管理者に伝達され、管理者の提出権の適切な行使で処理されることを法が予定した結果とも思われますが、現実の管理組合がそのような組織である保証はありませんから、規約により区分所有者の提出権を創設すべきでしょう。

なお、36条の場合、特に全員出席集会の場合には、当該集会で取り上げられる限り個人での提出が認められます。

(招集手続の省略)
第三十六条 集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができる。

1.規定の趣旨
36条は、召集手続きを省略できる場合の規定です。
集会は区分所有者の権利義務に影響を与える重要な会議ですから、会議のメンバーである区分所有者の会議への準備およびその出席の機会が確保されなければなりません。
35条に定める会議の招集手続きの法定は集会参加への準備およびその出席の機会の確保を目的とした招集手続きという重要な手段の法的保護の表れです。

このように、招集は各区分所有者の集会出席権を保護する手続きですから、その保護を受ける者が保護を辞退すれば招集手続きは不要となるはずです。
従って、全員が承諾すれば全員に対する招集手続きが不要になり、招集手続きなしで総会が開催できるというのがこの規定の趣旨です。

2.規定の対象
尤も、この規定が本来対象とするのは少人数の管理組合で相互の連絡が1週間の事前予告が長すぎるくらい速やかに取れるケースのようです。
しかし、大規模な組合においても理屈は変わりません。
ただ、多人数の組合では全員が召集手続きの省略を承諾することは事実上困難でしょうから、この規定が意味を持つのは少数の召集洩れの瑕疵をその者の承諾を得て集会開催前に補完することくらいでしょう。
ただし、手続きに瑕疵があるままで開催された場合にはその集会は違法なものであり、事後の承諾を得ても集会の違法性を阻却するものとは原則として考えられません。
この規定の文言も同意は集会の開催前のものであることを前提とした表現となっています。

3.省略される手続き
なお、この規定が適用される場合には、招集権者による招集・招集の猶予期間・議題や議案の要旨の通知その他招集に必要な諸手続きが不要となります。
尤も、承諾権者は一括して招集の利益を放棄する義務はありませんから、どの手続きを不要とし、どの手続きを必要とするかも自由であり、招集の猶予期間は妥協するが議題や議案の要旨の通知は必要だということも当然可能です。

4.全員出席集会
ところで、上記のとおり事実上は少人数の組合でのケースに限られるでしょうが、この規定が適用される典型的なケースは所謂全員出席集会です。
忘年会その他の懇親会や町内の他の会合等で組合員の全員がたまたま集まった場合に、管理組合の集会で決議すべき事項についてこの機会に決議しようと合意されればこの規定の適用により適法な集会を開くことができます。

ただし、この規定は召集手続きの省略を認めるだけにすぎませんから、特別決議や通常決議に必要な定数を満たすことや建替え決議等の特殊な決議を行う場合の決議内容の具備、利害関係人の意見聴取が必要な場合の当該人の出席確保等召集手続き以外の要件を満たす必要があることは勿論です。

(決議事項の制限)
第三十七条 集会においては、第三十五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。
2 前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前二項の規定は、前条の規定による集会には適用しない。

1.規定の趣旨
37条は決議事項の制限の規定です。
集会は組合員全員で構成される管理組合の最高の意思の決定機関であり、各組合員はそこでの討論や表決で各々の意思を表明することにより各々の利益を守ることができることになっています。
この審議権を十全のものとするために、35条で集会が何時どこで開催されるかの他、何について審議するのかを予め通知することが招集手続き上要求されていますが、予告された事項以外のことが審議・議決されたのでは35条定めは骨抜きとなってしまいます。
このように35条に定める召集手続きを実効性のあるものにして各区分所有者の審議権を保証するのが1項の趣旨です。

2.議案変更の範囲
尤も、予め通知した事項といっても一字一句同じのものを議決しなければならないというわけではありません。
集会は上程された議題ないし議案について出席者の様々な意見を集約して組合員の総意を形成する場ですから、この意見の中には当然議案の修正ないし変更というものも含まれます。
集会で諸々の事項に関し討議検討されることは常識であり、このことは欠席者も当然予測できることですから、修正ないし変更がこの予測の範囲内であるならこれも実質的に予め通知した事項に包含されると考えられます。
従って、予め通知した事項と同一性のある範囲であれば集会は原案を変更修正することができ、1項に違反するものではありません。

3.3項の趣旨
ところで、この決議事項の制限も結局の所区分所有者の権利・利益を守るための規定ですから、その利益の帰属主体がその利益を放棄するときは適用する必要がないことになります。
この点は招集手続きの場合と同様ですから、全員の同意がある36条の場合にはこの規定の適用もありません(3項)。

4.制限の緩和、2項の場合
更に、予め通知した事項という決議事項の制限は、何かを決める場合には常に35条に定める1週間または規約に定める招集期間が必要ということですから、招集通知後に判明した緊急議題や集会での変更が通知事項の同一性を超えるような場合には、再度招集する必要があります。
しかし、欠席者の意向がどうであれ出席者で議決要件に満ちる賛成があればその議案は可決されるわけですから、再度招集する時間がないような場合には出席者のみで議決できる方が便宜に感じられることがあります。
このような場合に備えて決議事項の制限を緩和することを認めたのが2項の規定です。

ただし、決議事項の制限は区分所有者の利益を守る重要な制度である一方、欠席者の意見が集会の議決を左右することもありうるわけですから、決議事項の制限を緩和するためには、その旨が規約で定められて予め参加者に予告されている必要があり、且つ特別決議事項ではそれほどの緊急性も考えにくく緩和による集会参加者の便宜より欠席した区分所有者個人の利益保護の要請が勝りますから緩和を認めないこととしています。

(議決権)
第三十八条 各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。

1.議決権の趣旨
38条は議決権に関する規定です。
議決権とは文字通り議決に参加する権利を言いますが、この規定では議決権は投票権のように1人1票のような平等なものではなく割合のある不均一なものとされています。
これは管理組合の議事が議決権者たる区分所有者の個人人格にかかわるものというより共有者間の共有物の管理方法という色彩が濃厚のため、その発言権たる議決権も持分に比例することが公平であるという考えによります。

尤も、区分所有は個人の生活の本拠たる住居を目的とする例が多くありますから、個人の人格の平等という点も全く無視することはできません。
そのため区分法ではこの人格の平等と持分権者間の公平を区分所有者数と議決権の双方を要件とする39条の議決要件で調整しているものと考えられます。

2.議決権の割合
14条に定める割合とは、共有持分の割合であり内法計算で算定される専有部分の面積の割合のことですが、議決権割合は規約での特則を許容していますから、持分を内法面積基準以外の壁芯面積基準とした場合の持分割合や建物の階層別方位別の効用比を加味した価値基準による持分割合とすることも規約に定めれば可能です。
このような決め方はいずれも持分に応じた議決権である点で区分法や民法の趣旨に添うものです。

しかし、この決め方は法の趣旨には忠実でも、各戸の議決権が○○.○○等の4・5桁の数値となりますし、且つ議決権合計も相当大きな数値にならざるを得ません。
議決権の役目は、議決の際に必要な多数が確保されているか、少数招集権に必要な議決権総数の1/5は満足しているか等を判断する割合としての指標ですから、割合が表されていれば面積の値に一致しなければならないわけではなく百分率でもかまわないものです。
従って、議決権総数を10000、100000等の数値にして各戸の持分を換算した議決権とするのが実際の総会運営の便宜に適うでしょう。

ところで、規約による特段の定めは持分によらない議決権も許容しているように読めますから、上記の10000、100000等の数値がまだ大きいと感じられる場合には、100または1000の数値にするために各戸の議決権を四捨五入等により丸めることも可能です。
区分建物間で本来あるべき権利割合に比べ多少の不公平は生じますが、実際上の権利行使の効果は殆んど変わりがないでしょうから、その不利益と議決権計算の便宜の利益を比較すると議決権計算の便宜の利益が勝り適法な定めといえるでしょう。

この点、議決権計算の便宜のため持分に関わらず1戸1議決権という定めも本条が許容しているとの考えもありますが、1戸1議決権は同規模の住戸の集合体の場合には計算の便宜の利益の優越という理由から認められても、議決権の本体は所有権の持つ所有物の自由な管理・使用・処分権能ですから本来持分の多寡に比例して表現されるのが当然であり、このような所有権の割合を捨象した割合は区分法や民法の趣旨に添う方法ではありません。
面積が倍も違うような場合に1戸1議決権では実質的に少ない面積の人が多い面積の人の倍も投票権を持つような結果となり公正とはいえないでしょうし、本来あるべき持分比での議決権の場合と比べて権利行使の結果が変わらないともいえません。

3.議決権の表示
議決権は原則として持分割合と同様な数値になりますから、その総数が全専有面積の合計値になります。
例えばAとして99.68uの建物とBとして76.88uの建物の2個の区分建物の場合には議決権総数は176.56(100%、小数点を嫌い、100倍にして整数値に直すことが多いようです。)、個々の専有部分の議決権はその面積分の数値がその値となりますのでAの議決権は99.68(56.46%)となりBの議決権は76.88(43.54%)となります。
なお、この場合に計算の便宜のため数値を四捨五入する等により整数値とする場合には、例えば議決権総数を100、Aの議決権は56となりBの議決権は44となります。

(議事)
第三十九条 集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。
2 議決権は、書面で、又は代理人によつて行使することができる。
3 区分所有者は、規約又は集会の決議により、前項の規定による書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)によつて議決権を行使することができる。

参考 旧法(議事)
第三十九条 集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。
2 議決権は、書面で、又は代理人によつて行使することができる。

1.議事の原則
39条は議決の要件に関する規定です。
1項により、集会の議事は区分所有者及び議決権の各過半数で決するものとされます。
従って、区分法各条項で集会の議決による、とされている事項、例えば7条の債権、18条1項の管理その他については原則として区分所有者及び議決権の各過半数で可決成立することになります。

2.例外1−区分法の規定−
この例外がこの法律又は規約に別段の定めがある場合で、このうちこの法律に別段の定めがある場合とは、(別段の定めとは、この区分法の各条項に本条が定める原則の区分所有者及び議決権の各過半数という要件を変更・修正する特別の定めがある場合です。)17条の変更や31条の規約の設定・変更および廃止その他特別決議事項とされる項目や建替えのような特殊の決議事項の場合であり、これらの条項では区分所有者及び議決権の各3/4や各4/5という要件が明記されて過半数の原則を修正していますから、これらが特別定めに該当します。
なお、これらの場合には、17条で共用部分の変更の決議を区分所有者の3/4要件を規約で過半数まで減じることを許容する以外に、その要件を規約で緩和することも加重することも認められていません。

3.例外2−規約の規定−
その二は、規約に別段の定めがある場合であり、原則として通常決議事項に関して特別の定めが認められます。
一般には、区分所有者要件を外し議決権の過半数と緩和する例(全体の1/2以上で可決)や、これを更に緩和して出席した者の議決権の過半数、可否同数の場合には議長の決するところによる(但し、総会の成立定数を議決権の過半数とする。全体の1/4以上で可決。標準管理規約)とする例などが多いようです。
区分所有者数の要件を外すということは各区分所有者を平等に取扱うということをせず議決権、即ち持分の多寡で区別した取扱いをするということになりますが、38条でも一言したように共有物に関する事項の決定権がその持分の多寡に比例するのが民法の原則ですから、議事内容が財産の管理項目である限り妥当なものといえます。
また、議長の裁決権は一般には議長は裁決には加わらないので1人一票の原則に反しないとされていますが、特別な裁決権を与える意思が明らかであれば議長に2票与える結果となっても問題はないと考えられます。
尤も、可否同数という議案はおよそ半数が反対しているということですから、もともとこの議案を可決実行するのは問題があるということです。管理組合の場合に可否同数に分かれた問題を議長の裁決権で可決しなければならないような必要性は考えにくく、管理組合内の協調関係維持の観点からも適切ではないでしょう。
なお、議長の裁決権は特段の定め条項に基づき区分法の規定と別の方法が許容されるものですから、区分法の方法が強制される特別決議の場合には採用できません。

4.間接民主制の採用
ところで、本条は集会の議決方法に直接民主制を採用しており、この方法が管理組合という小集団では最も望ましい方法であることはいうまでもありませんが、この条項の規約による別段の定めには間接民主制の採用も許容されているものと思われます。
区分法の原則は管理行為の全てを直接民主制の集会の決議によらしめるものですが、管理所有の手法によれば集会手続きを省略して管理者の判断で管理行為が実行できるのですから、管理所有を介さずとも理事長の単独判断または理事会その他の機関の決議をもって集会の決議に代えることができるでしょう。
実際にも、事項毎や予算額に応じて総会決議事項と理事会決議事項等にその権限を分配している例が多く、標準管理規約でも管理者の選任は総会の直接選任ではなく理事の選任を通じての間接選任の方法を採用しており、事柄の性質に応じて直接・間接代表制を混合する例はよく見られるところです。更にこれを進展させて大規模集団での管理組合では代議員制の採用も検討の余地があるでしょう。

5.代理行使
集会は管理組合の最高且つ唯一の意思決定機関であり、区分所有者がその意思を管理組合の運営や建物の管理・使用に反映させるためには集会において自己の意思を表明することが唯一の手段です。
そのため区分法では招集手続きを厳格に定めて区分所有者が集会に参加する機会を保障していますが、実際の日時は個々の区分所有者の予定を聞かずに招集権者が決定するので、当日他の都合により参加できない場合があります。
この場合に、区分所有者自らは出席できなくともその意思が代わりの者等により表明されれば、区分所有者の集会参加権は一応保護されることになりますし、定数が必要な集会の議決が個人の都合でできないというような不都合も回避できることになります。
このような理由により、2項では区分所有者は代理人または書面でその議決権を行使できるものとしています。

代理人は区分所有者の選任する任意代理人となりますので、委任事項やその権限は全て区分所有者の授権の範囲・内容により決定され、通常は委任状で代理人資格および授権の内容・範囲が明らかにされますが白紙委任状の場合は(本来は白紙部分に記入が必要)全般的な権限があると取り扱うのが通常でしょう。

なお、区分法では代理人資格を制限していませんから、誰を代理人にしようと、何人代理人を選任しようと原則として自由ですが、それでは集会にそぐわないような者の参加を規制できないため、標準管理規約を初めとして代理人資格を規約で区分所有者等に制限することが多いようです。
2項には規約での特段の定めを認める記載はありませんが、区分所有者の議決権という権利行使も集会の円滑な運営という他の利益との調和の下で達成されるべきですから、その制限が実質上議決権行使を相当困難にするようなものでない限り規約での制限は有効と思われます。
集会の議事内容からすれば事情に精通した他の区分所有者が最も代理人に相応しいわけですが、そのためには事前に賛否の意向を代理人に十分説明しておく必要があります。たとえ本人の意思と異なる場合でも代理人の質疑や賛否の行為は本人のものとされますから、後でそうではなかったというのは通じないからです。

6.議決権行使書
そういう場合に備え、白紙委任状ではなく賛否を明らかにした委任状の使用が望ましいかもしれません。
この考えを延長すると書面による議決権の行使、所謂議決権行使書となります。
各議決事項単位に賛否を明らかにして議長に提出するもので、白紙委任状をめぐる諸問題や代理人の代理権不誠実行使等の代理でのトラブルが防止できる利点がありますが、議案修正への対応については硬直的な結論となりかねない欠点も保有します。

7.電磁的方法による議決権の行使
議決権行使書による場合は、文書による区分所有者の意思の表示方法ですが、本人や代理人が出席しない点では文書が郵送でなされようが手交でなされようが変りはありません。そうするとFaxでも電子メールでも同じといえ、更に電子投票システムを使用する場合も同様となります。
そのため、電磁記録による規約を認めたのと同様の理由により、書面決議の方法の一環として新法では電磁的方法による議決権行使の方法が新たに認められました。
このような方法は遠隔地にいる区分所有者が費用をかけずに集会に参加できるメリットがある一方、他方でこの方法が普及すると集会して他の人の意見等を総合的に判断して自己の結論を導くという会議制のメリットをますます阻害する可能性も秘めたものであり、インターネットのチャットや掲示板等の即時双方向の議論ができるものとセットでないと双方のメリットが生かせないのではないかと危惧されます。
他にも、文書による場合の捺印が無くなるわけでしょうから成りすましの危険もあり投票者の同一性をどう判断するか等の問題もあります。尤も、電子メールが手紙等の文書より手軽になった現在では文書による投票が認められる以上電子メールを否定する絶対的な理由はありません。

(議決権行使者の指定)
第四十条 専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。

1.本条の趣旨
40条は専有部分の共有者にその中から議決権行使者を選定することを求める規定です。
区分所有者は区分所有権を有する者であり、専有部分の共有者も持分が所有権である以上当然に各自が区分所有者です。
従って、各自が独立して区分法で規定される区分所有者としての義務を負担することになりますが、議決権という権利行使の場合には専有部分を最小単位として、その最小単位で意思の統一を強制し、一人が所有することが通常の他の専有部分との間で議事における取扱いを平等にするのがこの規定の趣旨です。
この結果、議事における区分所有者数は共有者全員で1人とカウントされることになります。

しかし、100uの専有部分を二人で1/2ずつ共有している場合と、同じマンションの40uの専有部分を人のが単独所有している場合を比較すると、共用部分の持分は単独所有者より共有者1人の方が実質的に大きいにもかかわらず、その各々の意見が集会で反映することができないことになりますからあまり合理的な規定とはいえないようにも思われます。
ただ、共有はこのような場合に限らず、いくらでも微小な持分に細分可能であり通常共有者間はある程度の親密な関係にあることからその専有部分での意思の統一を期待することもあながち不当とはいえないでしょう。

2.議決権行使者
共有者間で選任された議決権を行使すべき者一名は議決権行使者といわれますが、誰を議決権行使者とするかは共有者間の協議で定められ、協議がまとまらない場合にはその持分の過半数で選任されることになります。
共有者の中で議決権行使者のみが集会の招集通知を受け、集会に出席して共有者全員の議決権を行使する権利がありますので、選任されたら速やかに管理組合にその旨届出をする必要があります。
従って、議決権行使者が未選任の場合にも、共有者の一名に招集通知がなされますが、議決権行使者が選任されなければ集会の出席権も議決権も認められず結局共有者は集会での意思表明ができないことになります。

3.議決権行使者選任の単位
このように共有での専有部分はその単一の意思を形成するように仕組まれていますから、その意思は構成員たる共有者の個性を離れた抽象的な総合人としての人格の意思といえます。
そうするとこの総合人の人格は構成員が異なる場合はもとより、同一の構成員であってもその持分構成が異なる毎に形成されるべき意思は異なるはずですから、別の人格を観念することができます。
従って、専有部分の共有者の議決権行使者は共有者が異なるつど、およびその持分構成が異なるつど一名選任されることになります。
この反面、同一の共有者で同一の持分構成の場合には同一の総合人となりますから、単独所有者が複数の専有部分を所有する場合と同様に、名寄せされて区分所有者数としては一名、議決権はその所有する各専有部分の議決権を合算したものということになります。

4.議決権の不統一行使
また、議決権の不統一行使については専有部分はその単一の意思を形成するのが法の建て前である以上専有部分の単位を細分するような不統一行使はそもそも認められません。
複数の専有部分がある場合には議決権自体は形式的には各々の専有部分毎に行使ができますが、区分所有者数と併用する区分法の原則的議事方法の場合には一名の区分所有者を更に分割できませんのでこの場合も不統一行使はできません。
区分所有者数の要件を外す標準管理規約の場合にはこのような制約がありませんが、一人の意思は一個ですから不統一行使は不合理なものとして否定すべきと思われます。
ただし、信託等実質上複数の意思の存在が肯定できる場合には不統一行使も認められるべきです。

(議長)
第四十一条 集会においては、規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除いて、管理者又は集会を招集した区分所有者の一人が議長となる。

1.議長就任者設定の意義
41条は議長就任者に関する規定です。
集会は全区分所有者により構成され、招集通知に定められた日時・場所において予め通知された議題につき審議する会議体ですが、会議体として当然必要な議長および書記(議事録作成)のうち議長を誰が努めるかを定めたものです。
集会の議事は議長の開会宣言で開始され閉会宣言で終了し、その間で討議議決された事項が欠席者を含めた全区分所有者を拘束することとなるのですから、議長は会議の重要な機関です。
そのため、議長就任者またはその決定方法は集会開催以前に決定されていることが望ましく、法律で予め定められるのが通常です。

2.議長就任者の決定方法
41条では議長は第一に規約の規定で定まり(標準管理規約に準拠して理事長とする例が多い)、第二に規約に定めのない場合には当該集会で議決により定め(この議事進行のため仮議長が必要でしょう)、第三に管理者招集の場合には管理者、少数区分所有者招集の場合には当該招集者が当該集会で別人をあえて議長に選任した場合を除き議長に就任するものとしています。
第一と第二の場合は会議体の自治権の尊重ですが、第三の場合は議長選任に関する自治権不行使の場合の補充規定ということになります。

3.議長の権限
上記のように議長は、集会を主宰して会議の開会閉会を宣言し、議題を会議に上程して議事を整理する権限と責務を有します。
この議事整理権には誰に発言を許し誰の発言を制止または禁止するかも含みますし、会議を混乱させるような場合には退場させることも含まれるでしょう。

4.議長の中立性@
そのためには発言内容の議事内容との関連性や重複性、発言者の立場等諸般の事情を考慮して権限を行使する必要がありますが、その前提としてなにより中立性が要請されるため議案の提案者・説明者が議長となることはあまり好ましいとはいえません。
それは議案をめぐるやり取りの当事者となったのでは発言の整理や議事内容の中立的な統制が果たせなくなるからです。
従って、管理者その他業務報告や予算決算を提案する立場の者を議長とする41条の規定や標準管理規約は他に議長を選任できない場合の救済規定と見るべきでしょう。
運用上は会議の最初に議長を選任(中立の者に執行部が予め議長就任の事前承諾を得る、次期理事長候補または前理事長が議長となる等)して会議を実施することが望ましいと思われますし、規約で議長を定める場合にも上記のような中立的な立場の人間を議長とする旨規定するのが望ましいものと思われます。

5.議長の中立性A
なお、議長の中立性の要請から議長は一般に議決権を行使できないという意見も多く見られます。
この場合に議長の区分所有者としての区分所有者数と議決権は参加定数には加算し投票数では棄権扱いの場合には事実上否決扱いすることになりますから、議決する場合の定数からも除外されることになるのでしょう。
ただ、このような取扱いは区分法にも民法にも規定がなく、議会制の慣習から生まれた取扱いのように思われます。
確かに、議会の場合には、1人一票で議長も所詮一票しか持ちませんから議長票が除外されたとしても全体に影響は殆んどなく、しかも議員は通常全体の利益のために行動するものとされていますから、議長の投票を禁止して議事手続き適正を追求することは結果として全体の利益に適う方法といえるでしょう。

しかし、管理組合の集会における区分所有者は議員が議会で代議員としての公的な権限を行使するのと異なり、所有者として自己の所有権を行使するのですから、それを制限することは議長の中立性の要請を根拠としても妥当とはいえないでしょう。
集会も会議体ですからその運営方法等は議会制の各種慣習に準拠すべきでしょうが、会議体の性格・目的に応じて準拠できる慣習も異なると思われます。

実際、少人数の組合、例えば組合員3人の場合には議長の議決権行使を認めない場合には特別決議の要件が常に満たされず特別決議が不能となったり、議決権が1人に偏っているようなケースでは、その者の参加無しには通常決議でさえ常に否決されてしまうというような不当な結果となってしまいます。
従って、集会の場合には議長も当然議決権を当初から行使できるものと思われます。

6.議長の解任
ただ、この場合も含め議長の議事運営が偏向して極端に不当な議決がされた場合には、違法な決議で無効というべきでしょう。
このような虞のある場合、議長選任も委任的性質を有しますから選任行為と同様の手続きで解任もできると思われます。
従って、規約での選任の場合には規約の変更で、集会での選任の場合は集会の議決で議長を更迭することができます。

(議事録)
第四十二条 集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。
2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない。
3 前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければならない。
4 第二項の場合において、議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報については、議長及び集会に出席した区分所有者の二人が行う法務省令で定める署名押印に代わる措置を執らなければならない。
5 第三十三条の規定は、議事録について準用する。

参考 旧法(議事録)
第四十二条 集会の議事については、議長は、議事録を作成しなければならない。
2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければならない。
 第三十三条の規定は、議事録に準用する。

1.趣旨
42条は議事録に関する規定です。
集会は管理組合の最高の意思決定機関として適法に議決された内容は、欠席者や反対者も含めた全ての区分所有者を拘束し、その効力は将来の区分所有者たる特定承継人や占有者にも及びますから、後々の争いを防止するため集会で何が議決されたのか、集会は適法に開催されたのか等を記録に残すことは重要です。
このように議事録とは、後日のため会議の適法性および議決事項を証明するための証拠方法(証拠書類)であり、その重要性から制度として作成が担保されている必要があるため会議の主催者である議長に作成義務が課されています。

なお、新法により1項に電磁的記録が追加され、規約・議決権行使に続く3段目として議事録も電磁的方法での記録が認められました。

電磁的記録については、法務省令が出ることになっていますが先行する会社においては、「法務省令で定める電磁的記録は、磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに情報を記録したものとする。(商法施行規則2条)」とされていますから、今までは、ワープロで作成したものをプリントアウトして、これに署名捺印して議事録としていましたが、新法施行以後にはワープロのファイル自体(正確にはファイルを記録したフロッピー、CD等の媒体)を議事録とすることができるようになります。

議事録を書面で作成するか電磁的記録で作成するかは、作成義務者兼作成権限者である議長に一次的な判断権があります。
勿論、規約や総会決議でどちらかにする旨決まっている場合には議長はそれに従う義務があることは当然です。
しかし、そうでない場合には、議事録作成時に決めてもいいのですが、会議で証人の指名の時点でどちらにするかを明らかにすることが望ましいと思われます。

ただし、1項が規定するのは議長がその責任において書面または電磁的記録で議事録を作成することであり、このことは必ずしも現実に自らの手でワープロ打ちをすることを意味してはいませんから実際の書面自体を書記担当の理事その他の者に作成させることができることは当然です。

2.議事録の記載内容
2項は議事録の記載事項および署名を定めた規定です。
議事の経過の要領とは、会議の適法要件の簡潔な記録であり、その結果とは決議内容を指すものと思われます。

上記のとおり議事録は会議の適法性と議決事項を証明するための書類ですから、書式の指定はないものの、まず@適法要件証明のための事項として何時・どこで・誰が・何を・どのように、という議事の経過として会議の日時・場所、集会定数と出席区分所有者数および議決権数、会議の経過、議事次第と議決要件の確認を、次にA議決内容の証明のための事項として、何をどうしたという決議内容、可否の別を記載することが必要です。

議事の経過をどの程度詳しく記載するかも原則として自由ですが、議事録の目的はテープ起こしのように誰が何を話したかを細かく知ることにあるのではなく、会議で何が決定され、その会議は適法だったのかを明らかにするためのものですから、決定事項を明確にするのに寄与しない事項は記載する必要がなく、逆にあまり詳細な記載は会議の適法性と決議内容の理解の妨げともなりかねませんので記載しないほうが望ましいといえます。
2項でも要領(必要な要点を明確且つ簡潔に記載したもの)を記載するものとしています。

3.議事録内容の証人
議事録は後日のための証拠書類ですから、その信用性が担保されている必要があることは勿論です。
このため作成責任者の議長がその責任の明確化および内容の真実性を担保する趣旨で議事録に署名捺印を行うものとしています。
ただし、作成者が自ら真実性を保障してもその信頼性はあまり高くはありませんから真実性担保に客観性を持たせるために実際に集会に参加した区分所有者の証人2名も議事録に署名捺印するものとしています。

この2名は集会の最初か最後に指名されその旨議事録にも記載されますが、2名という数は区分法が議事録の証明力を担保するために必要と認めた数値ですから、これを減少することは証明力が減退するため認められませんが増員することは証明力を増強することとなるため問題となりえます。
しかし、議事録は重要な書面ですから必ず作成される必要があり、そのためには作成の便宜という利益も議事録規定の重要な考慮の要素といえますから、何らの理由なく(抽象的に証明力の増強というだけでは)議事録作成の便宜に反する証人の増員は区分法の趣旨に適うものではないでしょう。
ただし、集会当日の出席者が1名だった場合にはその旨付記してその一名の署名捺印で足りますし、2名以上の証人の署名捺印があっても2名の署名捺印がある限り区分法上は適法となります。

4.署名
他人の手やプリンター、判子その他の方法で氏名を記載する記名(自署以外の方法で本人名を記すもの)と異なり、署名ですから氏名を本人が自署(手書き)することとなります。
このように、一般に法律では署名と記名とは用語が異なり、署名(捺印不要)の効力と記名捺印の効力が同等と評価されていますが、署名の他に捺印も要求するほどの理由は考えにくいところですから、ここでの署名は通常の場合の例示であり書名には記名も含むものと考えるべきでしょう。
捺印の印鑑は本人の同一性を担保できるものなら何でもよく実印に限らず認印で十分です。
ただし、記載内容に登記事項があり議事録が登記の原因証書となる場合には登記申請上実印が必要なのが通常です。

ところで、新法で議事録に加わった電磁的記録は容易に書き換えができますので、その内容の真実性を担保するための署名捺印に代わる証明手続きが特に問題となりますが、法務省令にて定めることとなっています。

この省令も未発表ですが、先行する会社では、「法務省令で定める措置は、電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律 (平成十二年法律第百二号)第二条第一項 の電子署名をいう。以下同じ。)とする。商法施行規則3条)」とされ、電子署名及び認証業務に関する法律では「第二条  この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
 一  当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
 二  当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
 2  この法律において「認証業務」とは、自らが行う電子署名についてその業務を利用する者(以下「利用者」という。)その他の者の求めに応じ、当該利用者が電子署名を行ったものであることを確認するために用いられる事項が当該利用者に係るものであることを証明する業務をいう。
 3  この法律において「特定認証業務」とは、電子署名のうち、その方式に応じて本人だけが行うことができるものとして主務省令で定める基準に適合するものについて行われる認証業務をいう。」とされています。

5.議事録の保管・閲覧
なお、議事録はその目的を達成するために保管し且つ利害関係者の閲覧に供されますから、規約の保管および閲覧に関する33条の規定が議事録にも適用(準用)されます。
区分法上は決議に参加した区分所有者も議事録の内容確認には閲覧という手段しかありませんが、一般には議事録の写しを区分所有者に配布する例もあり、議決内容の周知徹底ということから望ましい方法といえます。

(事務の報告)
第四十三条 管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。

1.43条の趣旨
43条は管理者の報告義務の関する規定です。
管理者は委任者管理組合に対する受任者の立場にありますから、その受任業務を誠実に実行する義務があり(28条、民法644条)、その内容には適時委任者に業務執行の状況を報告する義務も当然含まれます(民法645条)。
43条はそのような管理者の義務の存在を前提に、その具体的内容として報告の場を集会、周期を毎年一回一定の時期と定めたものです。

2.報告内容
43条に定める報告義務の内容は管理者の事務に関するものですから管理者業務全般がこれにあたります。
具体的には組合運営および建物管理の両面における当年度の業務計画に沿って実行した業務の成果や結果、突発事項等の業務計画外事項、次年度業務計画およひ当年度予算の実行報告、決算、次年度予算等の報告がこれに該当するでしょう。

3.他の報告義務
なお、報告義務に関しては他に26条5項で規約の定めにより原告または被告となったときの区分所有者への報告義務が定められておりますが、管理者の報告義務はこれらに尽きるものではなく事件、事故、共用部分の工事、危険箇所の発見その他による使用制限や注意事項等管理組合の運営または共用部分等の保存管理上区分所有者に伝達すべき事項については当然に適宜報告すべき義務があります。
更に、その内容が集会決議が必要な場合には臨時集会の招集義務も認められるでしょう。
従って、43条の毎年一回一定の時期にというのも、少なくとも毎年一回一定の時期に報告し、且つ必要があれば適宜報告しなければならない、という趣旨を当然に含意したものであり、年1回報告すれば義務を全部履行したというわけではありません。

(占有者の意見陳述権)
第四十四条 区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して意見を述べることができる。
2 前項に規定する場合には、集会を招集する者は、第三十五条の規定により招集の通知を発した後遅滞なく、集会の日時、場所及び会議の目的たる事項を建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。

1.占有者の意見陳述権
44条は、占有者の集会の出席権と意見陳述権に関する規定です。
占有者は区分所有者ではありませんから、当然には集会への出席権はなく議決権も勿論認められません。
しかし、占有者は建物内の区分所有者と同様に建物の管理運営に関して有形無形の影響を受ける立場にあり、更に46条により建物や敷地の使用に関して区分所有者が負う義務と同一の義務を一方的に負う立場にありますから、その利益も保護される必要がありますので、関係する議題に関しての意見陳述権とその前提としての集会の出席権を認めたものが44条です。

もとより占有者には議決権が認められませんから占有者に関係する議題について意見を表明してもそれが集会で採用される保証はありませんから、占有者の利益保護の手段としては十分とはいえませんが、占有者の意見に合理性があれば区分所有者もその意見に同調する可能性があり、賃貸人等で占有者の意向が影響力を及ぼす区分所有者の賛同も期待できます。
しかし、占有者は区分所有者と異なり建物等に責任を負うものではなく直接にはその負担にも応じない立場にあり、また一般に建物に対する投下資本は区分所有者に比べて低額で他に同等の建物を賃借して転居することも容易ですから、この程度の保護があれば一応十分ともいえるでしょう。

ただし、店舗等の占有者の場合にはその投下資本は多額になる場合もありますので、その制約が相当程度に強度となる場合には制約の必要性や内容、回避可能性や代償措置等を相関的に判断して権利濫用や不法行為が成立する場合もありえるでしょう。

このように、占有者の意見陳述権が占有者の権利擁護の手段であるとすると、保護に値する占有者に限り認めことは当然ですから、この規定でも区分所有者の承諾を得て占有する者、即ち、賃借人や承諾のある転借人に限られ不法占拠者にはこの権利はありません。

2.利害関係
問題は占有者に利害関係のある議題は何かです。
風が吹けば桶屋が儲かるのごとく利害関係も広範に亘りますが、33条2項の規約閲覧の利害関係と同様にこの利害関係も法律上の利害関係を意味します。
従って、抽象的には当該議案が可決されると自己の権利を制限または義務を発生・増大することになる占有者に集会の出席権と意見陳述権が認められることになりますが、具体的に何がそれに該当するかは個々具体的に判断されることになります。

一般的に、管理費の増額は賃貸借契約上の賃料増額の原因となりえますが、これは経済的な因果関係で且つ賃貸人との協議を挟むためその影響も間接的という理由で利害関係が認められません。
しかし、賃貸借契約上管理費支払いが賃借人の義務となっているような場合には利害関係が肯定されるでしょう。

他方、建物の使用に関し占有者は集会議決に法的に拘束されますが、共用部分の使用については共用部分が入居者一般の利用に供されていることの反射的な利益と思われますから、第三者使用または専用使用権に基づく使用部分の制約でない限り利害関係は認められないでしょう。

3.掲示
占有者に意見陳述権が認められるときは、占有者に集会参加の機会を提供する必要があります。
その方法として、占有者にも区分所有者と同様に招集通知を送ることもありえますが、2項では建物内の掲示をもって集会参加の機会を提供としています。

建物内に現在する区分所有者に対する招集通知は規約で定めることによる建物内の掲示と言う簡便な手段が認められていましたが(35条4項)、占有者に対しては区分法自体が簡便な手段を採用したものです。
このことは占有者の利益擁護の点で問題ではありますが、上記のとおり占有者が利害関係を持つ議題の有無・程度は占有者ごとに様々のことが予想されるため全てについて区分所有者同様の通知を強制することは招集権者の負担が重過ぎると判断された結果のように思われます。

この規定に反して、掲示をしなかった場合は集会手続きに瑕疵があることになり、それが占有者の権利に重大な影響があるときは占有者にその議決の効力を主張できないものと考えられます。
原則として集会決議が人により効力を異にすることは認め難いですからその決議は無効というべきでしょう。
それ以外の場合に占有者に損害が生ずる時は招集権者に不法行為による賠償義務が認められることがあることも当然です。

(書面又は電磁的方法による決議)
第四十五条 この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾のあるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾については、法務省令に定めるところによらなければならない。
 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があつたときは、書面又は電磁的方法による決議があつたものとみなす。
3 この法律又は規約により集会において決議をすべきものとされた事項についての書面又は電磁的方法による決議は、集会の決議と同一の効力を有する。
 第三十三条の規定は、書面又は電磁的方法による決議に係る書面並びに第一項及び第二項の電磁的方法が行われる場合に当該電磁的方法により作成される電磁的記録について準用する。
5 集会に関する規定は、書面又は電磁的方法による決議について準用する。

参考 旧法(書面決議)
第四十五条 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面による合意があつたときは、集会の決議があつたものとみなす。
2 第三十三条の規定は、前項の書面に準用する。

1.書面または電磁的方法による決議の趣旨
45条は書面決議等に関する規定です。
区分法においては、共有物の管理・変更や使用方法、区分所有者の団体即ち管理組合の運営に関する事項は全て集会という区分所有者全員で組織する議決機関の議決で決定される建て前を取っています。
これは区分法以前の所有者自治・団体自治というものの表れですが、構成員全員の合意があれば所有者自治・団体自治の目的は達成されますから何もわざわざ集会を開催する必要はない道理です。
そして、旧45条(現在の第2項の部分)は、この当然の事項を確認した規定でした。
そこで、旧法では、合意内容の明確化とその証の永続化のため合意は文書によることが必要である点が特則となっていましたが、新法ではIT普及の第4段として、電磁的記録の方式が追加され、そのため、旧法の1項は2項に繰り下がり(従って、意味内容は旧法のままです。)新たに1項が新設されています。

新1項では、従来と異なり、集会自体を開催せず集会討議を省略していきなりの書面または電磁的方法による決議を認めています。
ただし、この方法では、執行部からの提案にイエスorノーといえるだけで、衆議を集めた意見形成が不可能という重大な欠陥があるため書面または電磁的方法による決議をすること自体に全員の合意が必要とされますが、遠隔地に区分所有者が散在する投資用マンション等での利用が一応期待されるでしょう。

ところで、この方法をとるには全員の合意が必要ですから、特別多数で制定される規約でこのことを定めても無効というべきでしょうが、新築時に全員の合意書で設定される原始規約であれば、そこに規定することにより規約でこの方法を採用できそうにも思われます。
しかし、1項では「決議をすべき場合において」として特定の議案を前提にする趣旨を示しており、総会決議事項全般を対象としている2項の「決議すべきものとされた事項」という表現と規定方法を区別しておりますから、事前の包括的な同意は予定されていないものと考えられます。
従って、決議が必要な事項が発生したら、その都度、この方法で決を採るか否かを全員に図り、全員の合意が得られたら、書面または電磁的方法による決議を行うことになります。

2.効力・集会手続きの準用
1項の書面又は電磁的方法による決議は、実際に集会して討議がなないだけでそれ以外は通常の集会と変わりがありません。
従って、この場合の当該決議の可否は、当該議案が通常決議事項か特別決議事項かで異なるだけで新2項(旧1項と同趣旨の項)のように必ずしも全員の合意が必要というわけではありません。
このことからしても、1項の書面又は電磁的方法による決議は議案の事前通知や議決権の割合等全て総会に準じて扱われるべきものです。
そのため5項で、集会の規定が準用されることとなっています(2項の場合は全員の合意が集会手続きの全てを不要にしますから5項で準用する余地はありません。従って、5項は1項の尚書きでもよい規定です。)。
そして、準用の対象となる集会規定は34条から42条までありますが、実際に集まるわけではないことから、招集の場所が書面又は電磁的記録の送付先に変更になったり、審議がないので議長が不要となる等所要の読み替えを行いつつ上記数箇条を適用することになります。

なお、1項の書面又は電磁的方法による決議は、上記のとおり実際に集会して討議がないだけでそれ以外は通常の集会と変わりがありませんから、その議決の効力も集会の決議と同一であることは当然です。
従って、3項の規定は単にこのことを確認するあまり意味のない規定といえますが、手続き全体としては複雑でも議決方法としては簡易な方法といえますから念のために規定されたものでしょう。

ただ、全員の合意の要求は相当高いハードルであり数人の組合でないと事実上実現は不可能でしょうから、この方法が実際に使われるようになるのはもっとIT社会が進展して、この規制を緩和する次期改正以降の話となるのではないでしょうか。

ここで、電磁的方法とは、先行する会社では、
「法務省令で定める方法は、次に掲げる方法とする。
 一  送信者の使用に係る電子計算機と受信者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用する方法であって、当該電気通信回線を通じて情報が送信され、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報が記録されるもの
 二  第二条に規定するファイルに情報を記録したものを交付する方法
 2  前項各号に掲げる方法は、受信者がファイルへの記録を出力することにより書面を作成することができるものでなければならない。(商法施行規則5条)」、
とされていますから区分法でも同様になるものと思われ、事実その後公布された平成15年法務省令第47号でも同様になっています。要するに電子メールかフロッピー・CD自体の送付の手続きとなります。

3.対象
対象は、区分法や規約で集会決議事項とされた事項ですが、この書面決議等は集会の決議に代わるものに過ぎませんから、集会の開催に代わるのではなく管理者の集会招集義務(34条1項)、報告義務(43条)、関係者の弁明聴取義務(58条3項、59条2項、60条2項)を免除するものではありません。

4.区分所有者全員、共有の場合
対象の区分所有者は、書面決議等は集会の決議に代わるものであることから専有部分が共有の場合には原則として議決権行使者がそれに該当します。
従って、議決権行使者未選任の場合に、集会の場合には専有部分が共有の場合の区分所有者が集会に参加できないこととなりましたが、書面決議等の場合には書面決議等自体ができないということになります。
ただし、2項の書面決議等は集会とは異なり区分所有者全員の意思を尊重する制度ですから、必ずしも議決権行使者の選任を要するものではなく共有者全員が書面等で合意することでも足りるというべきでしょう。

5.書面等の数
書面決議における区分所有者全員の書面は、全員の意思が明らかになれば足りますので、必ずしも1枚の用紙でそれを証明する必要はなく、各自が別紙で意思を表示しても全員の合意が明らかになればよいものです。
この点は、電磁的方法即ち電子メールやFaxでは各自が各々送付することになりましたから、いっそう明確になりました。
実務上も、分譲マンションの販売においては購入者各自から個々に規約の同意書を取り付けて全員の合意を揃える方法が一般的です。

6.合意書面等の欠陥の場合
なお、書面決議等の効力は全員の合意がその根拠となりますから、一部の者が合意しない場合にはその効力が認められません。
しかし、書面決議の効力は書面等の存在というより全員の合意の存在にありますから、たとえ一部の合意書が欠落していても全員の合意があったものとしてその合意に基づいて行動した者や合意したと見られる者はその欠陥を主張することは原則としてできません。

7.書面等の保管・閲覧
書面決議等は集会の決議に代わるもので書面決議書や記録は集会の議事録に代わるものですから、その保管や閲覧に関して規約の保管・閲覧の33条の規定が準用されます(4項)。

(規約及び集会の決議の効力)
第四十六条 規約及び集会の決議は、区分所有者の特定承継人に対しても、その効力を生ずる。
2 占有者は、建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う。

1.特定承継人への拡張
46条は、規約及び集会の決議の区分所有者の特定承継人および占有者への効力拡張に関する規定です。

規約及び集会の決議は区分所有者および管理組合の内規たる自治法ですから、自治の主体以外に効力が及ばないのが原則です。
しかし、この原則のまま規約制定時や集会決議時の区分所有者にしか効力が及ばないのでは、同一物をめぐる管理や団体の管理運営の実行が不可能となります。
そこで、民法では共有物の管理に関してその取り決め事項が特定承継人に拡張されることが規定されていますが(民法254条)、区分法でも同様に管理組合の構成員となって、組合運営や共用部分等の管理に参加するようになった者(区分所有者の特定承継人)に対し、既存の規約や集会決議の効力を拡張するのがこの規定の趣旨です。

このように、この規定は管理組合という団体の運営や共有物即ち共用部分等の使用・管理に関する方針・方法の統一性や継続性を保証して区分所有者全体の利益を守るものですから、その性質は個人の意思による排斥を許さない強行規定であり、従ってまた、規約や集会決議は特定承継人が規約や集会決議の内容を予め知っているか否かを問わず適用されます。
そのため、特定承継人および特定承継人となりうる者は利害関係人として規約や集会議事録の閲覧権が認められています(33条2項、42条3項)。

2.占有者への拡張
他方、占有者の場合には建物入居者の一員ではありますが、管理組合の一員とはなりませんから管理組合の運営面の権利義務には係りなくその面では上記の原則(30条3項)の適用を受ける者です。
このことは所有者が権利を有し義務を負う共用部分の保存・管理・改良・修繕面においてもまた同様です。
しかしながら、占有者の場合には建物入居者の一員のため当然に共用部分の使用権限を有しその制約が必要な点は特定承継人の場合と異なりません。
すなわち、占有者は区分所有者より賃貸等により専有部分の使用権を取得し、その当然の範囲として自己の賃貸人に対しその履行補助者としての地位で共用部分の使用権限も認められる関係にありますが、その範囲・内容は原則として占有取得時に確定され、契約途中で変更されることを予定しないものです(家主の契約違反となる)。
従って、規約及び集会の決議により共用部分等の使用方法に変更を加える場合にその効力を占有者に拡張して区分所有者全員の利益を図るものが2項の趣旨ということになります。

なお、エントランス・廊下その他入居者一般が使用できる共用部分の使用は当該共用部分が当該用途に供されていることの反射的な利用ですから、その変更も入居者一般が受忍すべき範囲においてはこの条項を待たずに当然に占有者も受忍すべきです。
従って、この条項が本来対象とするのは当該専有部分に付随する専用使用部分の変更等占有者に特段の影響のある事項に限られるでしょう。
また、効力の拡張が認められる場合でも占有者に著しい不利益が生ずる場合には補償その他の代償措置が認められることのあるのは別問題です。

第六節 管理組合法人
(成立等)
第四十七条 第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる。
2 前項の規定による法人は、管理組合法人と称する。
3 この法律に規定するもののほか、管理組合法人の登記に関して必要な事項は、政令で定める。
4 管理組合法人に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ、第三者に対抗することができない。
5 管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる。
6 管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
7 管理組合法人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
8 管理組合法人は、規約又は集会の決議により、その事務(第六項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
9 管理組合法人は、前項の規約により原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合においては、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。
10 民法第四十三条、第四十四条、第五十条及び第五十一条の規定は管理組合法人に、破産法(大正十一年法律第七十一号)第百二十七条第二項の規定は存立中の管理組合法人に準用する。
11 第四節及び第三十三条第一項ただし書(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定は、管理組合法人には、適用しない。
12 管理組合法人について、第三十三条第一項本文(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定を適用する場合には第三十三条第一項本文中「管理者が」とあるのは「理事が管理組合法人の事務所において」と、第三十四条第一項から第三項まで及び第五項、第三十五条第三項、第四十一条並びに第四十三条の規定を適用する場合にはこれらの規定中「管理者」とあるのは「理事」とする。
13 管理組合法人は、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)その他法人税に関する法令の規定の適用については、同法第二条第六号に規定する公益法人等とみなす。この場合において、同法第三十七条の規定を適用する場合には同条第四項及び第五項中「公益法人等」とあるのは「公益法人等(管理組合法人を除く。)」と、同法第六十六条の規定を適用する場合には同条第一項及び第二項中「普通法人」とあるのは「普通法人(管理組合法人を含む。)」と、同条第三項中「公益法人等」とあるのは「公益法人等(管理組合法人を除く。)」とする。
14 管理組合法人は、消費税法(昭和六十三年法律第百八号)その他消費税に関する法令の規定の適用については、同法別表第三に掲げる法人とみなす。

参考 旧法(成立等)
第四十七条 第三条に規定する団体で区分所有者の数が三十人以上であるものは、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる。
2 前項の規定による法人は、管理組合法人と称する。
3 この法律に規定するもののほか、管理組合法人の登記に関して必要な事項は、政令で定める。
4 管理組合法人に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ、第三者に対抗することができない。
5 管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる。
6 管理組合法人は、区分所有者を代理して、第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額を請求し、受領することができる。
 民法第四十三条、第四十四条、第五十条及び第五十一条の規定は管理組合法人に、破産法(大正十一年法律第七十一号)第百二十七条第二項の規定は存立中の管理組合法人に準用する。
 第四節及び第三十三条第一項ただし書(第四十二条第三項及び第四十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定は、管理組合法人には適用しない。
 管理組合法人について、第三十三条第一項本文(第四十二条第三項及び第四十五条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定を適用する場合には第三十三条第一項本文中「管理者が」とあるのは「理事が管理組合法人の事務所において」と、第三十四条第一項から第三項まで及び第五項、第三十五条第三項、第四十一条並びに第四十三条の規定を適用する場合にはこれらの規定中「管理者」とあるのは「理事」とする。
10 管理組合法人は、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)その他法人税に関する法令の規定の適用については、同法第二条第六号に規定する公益法人等とみなす。この場合において、同法第三十七条の規定を適用する場合には同条第四項及び第五項中「公益法人等」とあるのは「公益法人等(管理組合法人を除く。)」と、同法第六十六条の規定を適用する場合には同条第一項及び第二項中「普通法人」とあるのは「普通法人(管理組合法人を含む。)」と、同条第三項中「公益法人等」とあるのは「公益法人等(管理組合法人を除く。)」とする。
11 管理組合法人は、消費税法(昭和六十三年法律第百八号)その他消費税に関する法令の規定の適用については、同法別表第三に掲げる法人とみなす。

1.法人化の意味
47条は管理組合法人の設立に関する規定です。
管理組合は建物の管理等の目的のために一定の組織を備えた人の集合たる社団といえますが、いまだ法人の自由設立は認められていませんので、公益を目的とする場合の民法法人と私益(営利)を目的とする商法人(商法・有限会社法)以外の中間目的法人は特別法がなければ法人化ができませんでした(中間法人法で可能となった)。
47条は管理組合を法人化するための特別法に該当します。

管理組合が法人となると何が変わるかというと、あまり変りはありません。
法人化前でも管理組合は権利能力なき社団として事実上構成員とは別個の権利主体として活動を行っていますから当然です。
管理組合として各種契約行為を行い、物品を購入する等日常的な業務については法人格がなくとも何ら支障なく実施することができます。
税務上も権利能力なき社団として法人として扱われ、裁判上もまた同様です。

ただし、権利能力なき社団(人格なき社団ともいう。)は正規の法人格がないため登記上の権利の名義人にはなれず、登記ではその構成員の中から代表者を選任し、その代表者が自己の名で権利能力なき社団のために登記行為を行うものとされていますから、代表者が変更される度に旧代表者から新代表者に移転登記を行わなければならずその費用や手間が大変であり、且つそれを怠ると将来的には名義人との間でその所有権の帰属に関する争いや目的物件の無断譲渡の危険があります。
このことを考えると管理組合が法人格を取得し管理組合名義の登記をすることはそのような諸問題を解消する上で非常に便利であるといえます。
ただし、管理組合自身が登記の必要な権利を取得するのは稀有の例ですから、現実的にはあまり実益のある話ではありません。
更に、将来的に登記手続で権利能力なき社団の社団名での登記が認められればこの問題も解消するものです。

従って、現時点で法人化のメリットがあるとすれば合有のドグマからの開放のようです。
管理組合は管理を実施するに伴い様々な権利義務を有することになりますが、正規には法人格がないためその権利義務は管理組合の構成員全員に総有的(合有的)に帰属し、その管理・処分で区分法に規定の無い事項は民法の原則によるものとされて例えば滞納管理費の放棄には全員の合意が必要と説明されています。
ところが一旦法人化なされるやいなや滞納管理費は法人帰属債権でその放棄も法人の通常事務に属し構成員の過半数の議決でできると説明され、法人登記が管理組合組織や性格に革命的変革を有するような効果を認めています。
しかし、団体自体に帰属するか構成員に帰属するかの団体における権利義務の帰属形態は人格の有無の問題であり権利能力なき社団の理論自体が社団に対し完全とはいえないまでも人格を認めるもので、法人登記は単にその人格を完成させるものに過ぎませんから本来法人化しない時点でも同様の結論が得られるはずのものです。
また、団体の意思決定方法が実体が変わらないにもかかわらず登記の有無で変更されるというのも不可解ですが、構成員各自間の複雑多岐な権利関係を構成員と団体とのニ当事者関係に昇華させて取扱いを簡易明確化するのが社団制度のメリットですから法人化でそのメリットを享受できるのなら法人化は組合運営の簡便を図れる有効な手段といえます。

ただし、メリットばかりではなくディメリットも当然存在します。
法人化は設立登記が必要ですが、代表者も当然登記事項ですから役員変更のつど変更登記が必要となりますし、財産目録と組合員名簿の調製が法的義務となり事務の増加は避けられません。

2.設立の要件
ところで、どの法人でもそうですが管理組合が法人化するにも要件があり、旧法では@区分所有者の数が三十人以上の管理組合であること(30名以上の組合員数の集会決議が必要なことから専有部分が共有の場合には1名とカウントされるものと思われます)。
更に、A集会の特別決議でア)法人となること、イ)名称、ウ)事務所を決定し、B事務所の所在地の管轄登記所で設立登記を行うことの2つがその要件でした。
なお、この他代表機関たる理事等の登記も当然必要となります。

ところが、新法により、1項が改正され@の要件がなくなりましたから、管理組合ができれば、即ち2名以上の区分所有者が存在すれば、Aの要件だけで法人となれるようになりました。

@の30人要件は法務省が当時法人化する組合が殺到して登記事務が混乱することを恐れたといわれていますが、法人化のメリットより事務の煩雑化のデイメリットが多いと感じられたためか法人化する組合は少なく、今回の改正に至ったようです。
このように人数要件は緩和されましたが、それが法人化増加の方向に向かうためには現時点では存在しない何らかのメリットがないと難しいものと思われます。

Aの議決で定めるべき事項は当然です。
ところで、一般に社団が社団たるためにはその名称・事務所(事務をする物理的な場所ではなく社団の住所の意味です。)以外に目的・資産・代表の方法・意思決定方法等の基本事項を定めた定款の作成が必要であり、この定款をもって社団法人の設立登記がなされていますが、管理組合法人の場合には全員の合意で本来なされる定款(規約)の作成が特別決議に緩和されている点はもとより目的その他の通常の定款の必要的記載事項の定めも要求されない非常に簡便なものになっています。

法人登記は外部の利害関係者に法人の存在と代表機関等を周知せしめその取引の安全を図る制度ですから、この議決内容の簡素化は管理組合の便宜を図ったというより管理組合という団体の性格や区分法の他の規定からその他の通常必要事項の定めは既に備わっているということでしょう。
Bの登記は法人の設立要件としての所謂設立登記であり、民法の公益法人の登記や不動産登記のように単なる対抗要件ではありません。
従って、この設立登記がなされて初めて管理組合法人が成立します。
尤も、設立登記後の変更登記は対抗要件ですが。

3.名称
管理組合法人の名称は自由ですが、他の法人と区別するため名称中に管理組合法人という言葉を入れることが強制されます(48条1項)。
このことは他の法人と同様であり(民法法人は別)、その代わり管理組合法人でない者は管理組合法人の名称を使用することはできないものとされます(48条2項。民法法人も同じ。民法34条の2)。

4.政令事項
3項でいうところの管理組合法人の登記に関して必要な事項を定めた政令は組合等登記令というもので、関係する部分を抜粋すれば次のとおりです。

組合等登記令
(昭和三十九年三月二十三日政令第二十九号)
26条4項 管理組合法人及び団地管理組合法人の設立の登記の申請書には、第十六条第一項の規定にかかわらず、次の書面を添付しなければならない。
一 法人となる旨並びにその名称及び事務所を定めた集会の議事録
二 第二条第一号に掲げる事項を証する書面
三 代表権を有する者の資格を証する書面

(登記事項)
第二条  組合等が登記しなければならない事項は、次のとおりとする。
 一  目的及び業務
 二  名称
 三  事務所
 四  代表権を有する者の氏名、住所及び資格
 五  存立時期又は解散の事由を定めたときは、その時期又は事由
 六  別表一の登記事項の欄に掲げる事項

別表一 (第一条、第二条、第十二条、第十七条、第十九条関係)
名称  管理組合法人、団地管理組合法人
根拠法  建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)
登記事項  共同代表の定めがあるときは、その定め

以上の組合等登記令によれば、登記すべき事項はこの政令2条に定める6項目(ただし、5・6号はその旨定めたときに限る。)であり、このうち2・3号の事項は47条1項でその旨定めるように規定していますから、別途政令に基づき議決が必要な事項はそれ以外の事項ということになりますが、1号は3条が建物等の管理と規定していますから、結局定める必要のあるのは4号の理事の選任ということになります。

(設立の登記の添附書面)
第十六条  設立の登記の申請書には、定款又は寄附行為及び代表権を有する者の資格を証する書面を添附しなければならない。
 2  第二条第六号に掲げる事項を登記すべき組合等の設立の登記の申請書には、その事項を証する書面を添附しなければならない。

5.登記の意味
登記の目的から登記すべき事項は、登記した後でなければ、第三者に対抗することができないとされます(4項)。
この規定が意味を持つのは設立後に登記事項が変更されているにもかかわらず登記を怠っている場合でしょう。
そして変更登記の対象項目は名称・事務所(所在地)・理事ですから対抗が現実に意味を持つのは退任した理事の行った行為ということになります。

6.法人への承継の意味
5項では、法人化前の集会決議等が管理組合法人にも効力を有すると規定されています。
法人化前では債権放棄に全員の合意が必要で法人化後では過半数の合意で放棄可能というように前と後で管理組合という団体の法的性質が異なると考える場合にはこの規定は本来そうでないものをそうする特別規定ということになりますが、法人化は管理組合という権利能力なき社団の実体そのままに単に完全な権利能力を付与するに過ぎないと考えるときは元々管理組合という権利能力なき社団に効力があったものが管理組合法人にも効力を有するのは当然であり、その旨の確認規定でしか在りません。

7.管理組合法人の区分所有者の代理権
管理組合法人は法人格がありますから、権利義務の主体となることができ従って代理人にも就任可能です。
そこで、旧法では非法人の場合の管理者の地位を管理組合法人自体に認めて、これに区分所有者の代理権を与えて26条2項の管理者の保険金請求受領権を付与していました。
新法では、26条2項の規定をそのまま用いて、広くその事務(組合法人の目的の範囲内の行為)について区分所有者の代理権を認め、且つ新26条と同様に、損害賠償と不当利得の場合の代理権も明記しました(6項)。

ところで、上記のとおり管理組合法人の場合は法人格がありますから、管理の主体として自ら活動する過程で管理組合法人自体に組合管理費債権等の権利や委託管理料支払い債務等の義務が帰属します。このように権利義務の帰属先が管理組合法人の場合には、その固有の事務として集会を意思決定機関、理事を代表機関としてその請求や履行ができることは勿論です。
従って、6項の規定は、解釈上管理組合法人ではなく区分所有者に権利・義務が帰属するものについての代理権を定めたものです。

このように代理権を与える場合、この法定代理権の範囲が確定していることが取引の安全には重要ですから、この代理をする場合に理事の共同代理が必要とか、一定金額以上は別箇の承認が必要とか各種の制限を付することもできますが、その制限が善意の第三者(取引の相手方)に主張できないとすべきことも、管理者の場合(26条3項)と同様ですから、この旨新法で追加されました(7項)。

8.訴訟担当
更に、管理者はその職務に関して区分所有者のため訴訟担当者となりうることが認められていますが(26条4項)、これは裁判外での代理権の行使の実態を裁判上でも貫徹させようとするものですから(法令上の訴訟代理人としてもよかったのでしょうが、その場合は本人たる区分所有者の訴訟追行権と衝突して多数の意思の実現が困難となることが予想されます。)、この点は管理組合法人に代理権を与える場合も同様といえます。
そこで、新法では管理組合法人にもその事務(職務)に関して区分所有者のため訴訟担当者となりうることが認められました(8項)。
担当者としての地位は、管理規約または個別の集会決議で付与されますが、規約で包括的に付与した場合に、個別の訴訟事件が発生したらその旨区分所有者に通知が必要なことも管理者の場合(26条5項)と同様となっています(9項)。
この結果、管理組合法人自体に帰属する権利義務に関する訴訟は当該法人本人として、区分所有者に帰属する権利義務(その取扱いが法人の事務の範囲にあるものに限る。)については訴訟担当者として訴訟の当事者になれることになります(管理者の場合は管理者本人の責任に関する訴訟でない限りは、全て訴訟担当または法人でない管理組合の代表者としての立場であるのと異なります。)。

9.民法等の準用
管理組合法人は社団法人の一種ですから、社団法人の原則規定である民法の規定が広く準用されます。
10項(旧7項)では、法人はその設立の目的の範囲内で権利能力を有するとする民法43条、法人は理事が職務を行うにつき他人に与えた損害の賠償義務を負うという第44条、法人の住所はその主たる事務所の所在地にあるとする第50条及び財産目録および社員名簿に関する第51条の規定が管理組合法人に準用されることとなっていますが当然のことです。
なお、このことは当該団体が社団であることからの結論ですから、法人化前の管理組合でもそれが社団であれば当然準用される規定です。

更に、破産手続き開始の原因(理由)である破産原因について管理組合法人には破産法(大正十一年法律第七十一号)第127条2項の規定が準用され、債務超過を管理組合法人の存続中は排除していますから、管理組合法人が存続中は他の二つの破産原因である支払不能と支払停止がなければ破産にはなりません。
このように管理組合法人において債務超過が破産原因から除外されるのは、合名・合資会社の場合と同様、当該法人には無限責任の構成員がいるため法人会計において債務が超過してもすぐに清算しなくとも債権者保護に支障がなく、それよりも法人継続による構成員保護の方が優先されるという理由によります。
この規定の存在から管理組合法人には破産能力自体は肯定されていることがわかります。

10.管理者条項の読み替え
管理組合法人には、その執行機関として理事が常設されますから、管理組合の当該機関である管理者は必要がなくなります。
そのため、第4節の管理者の各条は適用の余地がなくなり、第5節の規約および集会の各条項のうち管理者という文言は理事という文言に読み替えられて管理組合法人に適用されることになります。
11項・12項(旧8項・9項)はこのような事項の確認規定です。

11.税法の取り扱い
管理組合法人はその目的から本来的に非営利法人ですから、法人税法および消費税法上は公益法人(法人税法2条6号、消費税法別表第3)に該当するものとされますが、収益事業に関しては普通法人の取扱いを受けるものとされています。
この点は、管理組合も人格のない社団等(法人税法2条8号、消費税法2条7号)として法人の取り扱いを受け、収益事業に関しては普通法人並の取扱を受けることと同様です。

(名称)
第四十八条 管理組合法人は、その名称中に管理組合法人という文字を用いなければならない。
2 管理組合法人でないものは、その名称中に管理組合法人という文字を用いてはならない。

1.趣旨
48条は管理組合法人の名称に関する規定です。
我が国では法人名称を完全に自由化することをせず、○○株式会社や××有限会社のように一般に法人の種類を名称中に記載させるのを通例としています。
これにより取引の相手方は当該法人の概括的な権利能力の範囲(取引可能範囲)や代表者の肩書き(誰と取引すればよいか。)を予め予告することになりますから、取引の円滑に有益な手段といえるでしょう。
例えば、株式会社や有限会社のような営利法人では一般にその権利能力は広範に及びますから、代表取締役(株式会社の場合)や取締役(有限会社の場合)と取引すればその取引が否認される虞は余りありませんが、社団法人や財団法人のような公益法人の場合にはその権利能力の範囲は当該目的に割合強く制約されて理事と取引しても目的外取引として否認される虞があります。
管理組合法人は公益でも営利でもない中間目的の法人ですが、限定された建物の管理という目的のための法人ですから、権利能力の範囲は公益法人と同様狭く判断されることになるでしょう。
従って、上の目的を達成するためには当該法人にはその法人の種類の表示を強制し、且つ他の法人や個人にはその法人の種類の表示をしてはならないことを強制する必要があります。48条の1・2項はこのような趣旨の規定です。

(理事)
第四十九条 管理組合法人には、理事を置かなければならない。
2 理事は、管理組合法人を代表する。
3 理事が数人あるときは、各自管理組合法人を代表する。
4 前項の規定は、規約若しくは集会の決議によつて、管理組合法人を代表すべき理事を定め、若しくは数人の理事が共同して管理組合法人を代表すべきことを定め、又は規約の定めに基づき理事の互選によつて管理組合法人を代表すべき理事を定めることを妨げない。
5 理事の任期は、二年とする。ただし、規約で三年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。
6 理事が欠けた場合又は規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事は、新たに選任された理事が就任するまで、なおその職務を行う。
7 第二十五条、民法第五十二条第二項及び第五十四条から第五十六条まで並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第三十五条第一項の規定は、理事に準用する。

1.理事の地位
49条は理事に関する規定です。
管理組合法人は社団法人という団体で、それ自体は肉体を持たないため、団体自体の行動を団体に成り代って行う個人の行動を通して当該団体の行動として認識する必要があります。
このような行為を団体事務の執行といい、このような地位にある個人の地位を団体の(執行)機関といいいます。

執行機関の名称は法人の種類に応じて様々ですが、管理組合法人では民法の公益法人と同様の理事という名称を採用しています。
理事は管理組合法人たる社団法人の常設の執行機関(1項)且つ代表機関(2項)です。

2.理事の員数・組合の事務
理事の数は1名でも複数名でもかまいませんが、理事会という組織が法定されていません。
これは民法でも同様ですが法人の規模・目的が様々なためあまり複雑な組織を強制することを法が嫌った結果といえます。
ただし、民法52条2項が準用されますから(7項)、理事が複数の場合は理事の過半数で法人の事務を決定するので事実上理事会のようなものを認めているともいえます。
この点、現実には理事会を構成して管理を行っている管理組合が殆んどですから、立法論的には管理組合を法制化するべきであったといえます。
特に現行法では組合員数は30名以上あるのですから理事が1名の管理組合法人は考えにくい所です。

ところで、民法52条2項によれば管理組合法人の事務は理事が一人なら単独で、理事が複数ならその過半数で決定し執行することができることになりますが、他方で51条によれば管理組合法人の事務は全て集会決議によるとされ一見矛盾する両条の関係が問題となります。
これについては管理組合の法人化前と後で社団組織や権限が変わってしまうのは不当ですから、法人化前と同様に集会が管理組合という社団の最高かつ唯一の意思決定機関であることが原則と理解するべきでしょう。
従って、管理組合法人の場合は51条が原則規定と考えるべきであり、例外規定(補充規定)たる民法52条2項が準用されるのは51条で事務の決定を複数の理事に委託した場合に適用されるものと考えるべきでしょう。

3.理事の代表権とその制限
このように、法律上は理事会という組織・機関はありませんから、理事会を構成するとしても管理組合法人の任意組織・機関であり、その業務範囲も法律の規定に反しない限り自由に設定することができます。
一般には、総会決議事項ほどのことではない日常的事項の決議機関と理事の監督機関という位置付けとなりますが、法定機関でないことから理事会の理事に対する監督としての代表権の制限も善意の相手方には対抗できないということになります(7項、民法54条)。

また、理事は複数いても区分法上は各自が同等の権限を持ちますので、各自が単独で管理組合法人を代表することになります(3項)。

ただし、通常は、理事会を組織して理事長を定め理事長が管理組合法人を代表して、一般理事には代表権を与えないとするのが一般ですから、この需要にこたえるため理事長等の代表理事をさだめること(この結果一般理事は代表が原則としてできなくなる。)や、2名以上の理事が共同してのみ代表権を持つこと(一般には2名の共同代表が通常、ただし、3名以上でも副理事長は2名以上等と或る理事だけ制限しても双面的な共同でも片面的な共同でもかまいません。)を規定することができます(4項)。

4.理事の選解任
理事の選任に関しては7項で25条の管理者の選任の規定を準用していますから、管理者の場合と同様、理事は規約または集会の通常決議で選任されまたは解任されます。
単独区分所有者権の行使としての裁判所による理事の解任の場合も同様です。

5.理事の任期@
理事の任期即ち管理組合法人と理事たる個人との委任契約の期間は2年間とされます(5項)。
2年経過すれば契約は終了しますから理事は当然に退任することになります。

ただし、例外があって、その一つは当該理事の退任により理事がいなくなってしまう場合や理事の定数に欠員が生じる場合には後任の理事が選任されるまで退任した理事は従前どおりの権利義務をそのまま保有して理事の職務を行うということです(6項)。
このことは執行機関不存在の空白期間による本人の損害を防止するための対策であって、委任に本質的な取扱い(民法654条、商法258条)となっています。
同様の取扱いは理事の辞任による退任の場合も同じですが、解任の場合には当該人に理事の職務を認めることは不適当ですから6項の適用はありません。
従って、速やかに後任の理事を選任することになります。
この場合に、後任の理事が選任できない時点で緊急の必要があるときは、裁判所に申し立てて仮理事を選任することも可能です(7項、民法56条)。
この仮理事の選任申立ては区分所有者に限らず管理組合の相手方もまた可能であり、仮理事選任の管轄裁判所は管理組合法人の事務所(所在地)を管轄する地方裁判所です(7項、非手法35条1項)。

6.理事の任期A
もう一つは、実務上理事が通常総会で選任されその開催日時が必ずしも常に365日後とは限らず、また初年度会計期間が1年間より長短の場合には、理事の任期満了までに通常総会が開催されない不都合な事態が起こりうるということです。
そのときには、上記6項の取扱いとなるわけですが、6項の例外的救済規定の適用が常に起こるというのも不適当ですから、理事の任期の法定期間を多少延長することにより正規に理事任期と選任のための通常総会の開催との整合を取るほうが望ましいことになります。
このため、法定期間は3年を最長期として規約で延長することができることとし、これにより例えば理事の任期は2年後の通常総会終結の日までとする、等の定めが可能です。

7.理事の代理
ところで、理事は委任契約の受任者ですから原則として自らその業務を執行しなければならず、本人の承諾なく委任事務を他人に処理させると本旨に添った履行とはなりません。
この点に関し、7項で準用する民法55条では規約や総会決議で禁止されていない限り特定の行為の代理(特定の事務)を他人に委任(実質上の再委任)することができるとされています。
このこと自体は、当該理事の監督下、責任の下であれば具体的事務を他人にさせても委任の本旨に反しないということで、現実にも理事長が他の理事に具体的な事務の一部を分担させていることがこれに該当します。
問題は、理事の地位全般の代理が認められるかですが、法人の執行機関等の原則的な委任にあっては当然否定することになります。
しかし、管理組合の場合にはその目的の範囲が明確で一般に区分所有者であれば特に資格や資質を問わず就任できる地位であることや、区分所有者とその同居の親族ではその資質はもとより当該建物の管理に関して利害関係が共通していることから、区分所有者と一定の関係にあるものとの間で地位の互換性が肯定でき、且つこの地位の互換が実質上の本人たる他の区分所有者の信頼を裏切らない特別の事情が肯定できると思われます。
従って、一般には理事は自己の地位を包括的に他人に代理させることは禁止されますが、同居の親族に委任することは可能であると考えます。
この点、規約にそのような代理の規定が明記された事例(最判平2.11.26民集44-8-1137)で肯定的な判例があり、規約で明記することが望ましいことは確かですが、規約になくとも同様に取り扱うことができると思われます。

(監事)
第五十条 管理組合法人には、監事を置かなければならない。
2 監事は、理事又は管理組合法人の使用人と兼ねてはならない。
3 第二十五条並びに前条第五項及び第六項、民法第五十六条及び第五十九条並びに非訟事件手続法第三十五条第一項の規定は、監事に準用する。

1.監事の制度
50条は監事に関する規定です。
監事は管理組合法人の必要的且つ常設の監査機関です。
管理組合法人はその業務を全てその執行機関たる理事に委託することになりますが、理事の権限が多ければ多いほどその濫用や不正の危険も増すことになります。
これに対して各区分所有者は総会における理事の人事権・報告聴取権や予算・決算の審議権等を通じて理事を監督できることなっていますが、総会は常設の機関ではなく理事等の招集を待って活動する一時的なものでしかありませんから、通年に亘る理事の活動を監督するには常設の監督機関が必要となります。
そのために置かれるものが監事という機関です。

監事の任免については25条が準用されますから、原則として総会で選任することになります。
なお、規約で選任方法を定めることが認められていますから必ずしも総会における直接選任である必要はないでしょうが、監事の地位・性格から理事に選任権(解任権)を与えるような選任方法は2項の趣旨にも反し妥当とはいえないでしょう。

2.監事の資格
監事の資格については2項により理事および(理事の監督を受ける)組合の使用人との兼任が禁止されていますが、理事を監督する監事が同時に理事であったり、その監督下の使用人であったりしては監査の実が挙がりませんから当然の規定です。
尤も、理事または使用人が監事に選任された場合は、理事または使用人を辞すれば兼任という事態は回避されますから、2項は就任資格ではなく在任資格の制限というべきでしょう。
従って、監事が理事または使用人に就任した場合に速やかに理事または使用人の職を辞さない場合には監事の職を辞したものと理解できます。

他に、監事の就任資格や員数については特に制限がありませんから、理事の場合と同様、区分所有者に限る必要もなく区分法上は誰でも何人でも自由に選任することができます。

3.監事の任期等
監事の任期・欠員の場合の取扱い・仮監事・解任については理事の場合と同様です(3項、49条5・6項、民法56条、非訟手続法35条1項)。
4.監事の権限@
監事の権限は民法59条により、@法人の財産の状況を監査すること、A理事の業務の執行の状況を監査すること、B財産の状況または業務の執行につき不正の虞あることを発見したときはこれを総会に報告すること、C前号の報告のため必要あるときは総会を招集すること、です。

@は会計に関する監査権であり、日常的には管理組合法人の収入・支出や未払い・未収入金、積立金等の保管・運用方法、予算実行方法等の有無や是非を監査することで、定期の業務としては予算および決算の適否の監査を行うこととなります。
そのため、理事に対し必要な報告資料の提出を求めることができますし、更に必要があれば専門家によるチェックを依頼することも監事の善管注意義務の範囲内のものとして認められるでしょう。
理事は明らかに不当な要求でない限り監事の請求に答える義務がありますが、監事からの請求を待っているのではなく、むしろ理事には監事に対する適時の報告義務があるというべきでしょう。
監事が業務遂行に要した費用(外注専門家費用も含む)は当然償還され、必要とあれば前払いの請求も可能です(民法649・650条)。

5.監事の権限A
Aは理事に対する業務監査権です。
日常的には、総会で承認された年間業務計画の実行および突発事項等の計画外事項の処理方法、工事や日常管理の状況の有無や是非を監査し、定期的には総会報告事項や各種議題の是非を監査することになります。
このための報告聴取権や費用償還権は会計監査権の場合と同様ですが、実務上組織される理事会が存在する場合には、監査権限の一環として当然に理事会への出席権が認められるものと思われます。
この場合には、理事会での理事の協議内容の監査が実施されるわけですから監事は必要な発言も当然行うことができますが、業務執行の権限および責任は理事にありますから、監事が発言して理事の職責に干渉できるのは原則として対象の適法性の有無についてであって当・不当の妥当性判断についてではありません。

6.監事の報告義務
Bは監事の総会への報告義務です。
理事に対する本来の監督権限は真の委任者たる区分所有者全員であり、理事の監督ための組織・機関が理事の人事権を持つ総会ですから、監事に総会に対する報告義務があることは当然です。
この報告義務は43条の準用はないものの理事の監事に対する報告義務と同様に監事の監査業務全般に及び、監事は総会に対し自己の監査業務実施の経過およびその結果を総会に報告することになります。
ただし、監事常設の目的が理事の業務執行の不正防止にありますから、全般的な報告義務のうちでも不正については特に報告すべきものとして明記したのがBの趣旨です。

なお、監事の報告義務もその報告内容については監事の権限である会計および業務執行における適法性に関するものに限られ、妥当性には及ばないことは当然ですし、監事の不正防止目的機関性から不正の虞のあるときは総会報告前に理事に対し注意指導する等により不正行為の回避を図るべきで、そのような手段をとらず単に集会に報告すれば監事の善管注意義務を果たしたというものではありません。

7.監事の総会招集権
Cは監事の総会招集権を認めた規定です。
Bの総会報告義務を認めて総会による理事の監督権の発動を期するためには、総会が開催されなければなりませんが、総会招集権は第一次的には理事に属しますから理事の不正を追求する総会を当該理事が招集しない虞があり、かといって単独区分所有者権による裁判所に対する申し立ても監事という立場を考慮すると迂遠な手続きとなりますので、監事に総会の招集権を認めたのがこの規定の趣旨です。
勿論、理事が招集するのならそれでよく、総会招集に至らない段階で問題が解決すればそのほうが望ましいことは当然です。

(監事の代表権)
第五十一条 管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する。

1.理事の利益相反の場合の取扱い
51条は監事の代表権に関する規定です。
管理組合法人を代表するのは原則として理事ですが、管理組合法人は建物管理という目的を達成するため組合外部から様々な物資やサービスを調達し、建物内の運営のために区分所有者や占有者と様々な許認事項のかかわりを持ちます。
この場合の管理組合との取引の相手方がたまたま理事である場合には、管理組合法人を代表してその利益のために行動すべき立場と個人としての理益を追及する立場が同一人に帰属することになり、管理組合法人の利益が十分に保障されない事態が生じます。
このように同一人に利害関係の反する立場が帰属する場合には、一方の立場の利益を図ることは即他方の利益を害する不当な結果となるため、自己契約・双方代理として原則として禁止されていますが(民法108条)、このことは代表行為でも同様ですから、管理組合法人においても理事の個人的利益と管理組合法人の利益が双反する事項に関しては理事に代表権はありません。
従って、そのような場合の代表者が必要ですが(さもないと理事個人は管理組合法人との取引が困難となる)、民法に習って特別代理人の選任すること(民法57)は迂遠ですから、理事に利益相反事項に関しては代表権がないことおよびその場合には監事に法人の代表権が認められることを定めたものがこの規定です。

しかし、監事は本来理事の監査をやる立場ですから自ら業務執行を行うことはあまり望ましいことではありません。
しかも、この監事の業務執行に対する監査が存在しないことも問題です。従って、利益相反理事以外に理事がいる場合には、その者に組合代表をさせるべきでしょう。
実務的には理事長が利益相反でその代表権の行使ができないときは、理事長に事故ある時として副理事長が代表することとなります。

尤も、利益相反の禁止は本人の利益保護のためですから、本人がこれを承諾していれば問題ではありません。
従って、利益相反取引でも総会で承認されれば理事が法人を代表して取引することが可能ですが、本条がある以上その場合でも監事に法人代表を認めるべきでしょう。

2.利益相反行為
ここで利益双反する事項とは、組合と理事との取引という形式的な利益相反行為ではなく、実質的・且つ客観的に利益が双反する場合にはこれに該当するとしなければ組合の保護が図れません。
従って、理事が組合を代表して当該理事と機械的に決定された共用駐車場や駐輪場の使用契約を組合所定の条件で所定の契約書により契約することは、形式的には利益相反とは言えても本条に該当せず、理事がその会社やその配偶者と管理組合を代表して定型的とはいえない取引を行うことは、その取引内容が仮に正当であろうと客観的には利益が双反する場合ですから本条に該当し監事が代表権を行使する場合にあたります。

3.本条違反の行為
この規定に反して理事が行った取引は、無権代表行為として原則として管理組合法人の追認(集会の決議)がなければ管理組合法人に効力が及びません(無効)。

(事務の執行)
第五十二条 管理組合法人の事務は、この法律に定めるもののほか、すべて集会の決議によつて行う。ただし、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項及び第五十七条第二項に規定する事項を除いて、規約で、理事その他の役員が決するものとすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、保存行為は、理事が決することができる。

1.法人の事務
52条は管理組合法人の事務に関する規定です。
法人の事務とは、当該法人のなすべき一切の業務であり、管理組合法人では区分法3条の目的で設立される法人であることから敷地および建物共用部分の管理全般に関する一切の業務がそれに該当します。
管理組合の業務とその事務の決定方法は区分法16条から21条に定められておりますが、その対象は物理的な共用部分等が対象とされていて、観念的な債権関係の帰属が不明朗なきらいがありましたが、管理組合法人の場合には管理組合法人に帰属する一切の財産関係の処理もその事務に該当することが明らかです。
従って、例えば管理費滞納金の請求事務は勿論その放棄も管理組合法人の事務に該当して集会議決で処理できることになります。

2.規定の趣旨
ここで、集会の決議によつて行うとの意味は、法人の事務は監査の事務が監事に帰属していることを除き、事務の執行機関である理事が行うことが原則ですから、1項は集会で決定された方針に従って理事が事務を執行することを定めた規程となります。

このことは、法人前の管理組合においてもその事務たる業務執行は管理者に委託され、管理者は受託者として管理組合の委任の主旨(集会の意思)に基づきその執行を行うわけですから、業務執行者が管理者から理事に代わっても管理組合という組織・性格に代わりがない以上、その実行方法に変わりがないこともまた当然と言えます。
すなわち、管理組合法人の目的は管理組合と同様に区分法3条に定める共用部分等の管理であり、管理組合が管理に関する事務を実行するのは区分法18条で集会の決議によるのですから、管理組合法人において区分法18条の原則を確認したものが52条ということになります。

3.役員への委任
従って、また、同じく区分法18条2項によれば集会権限を他の機関に委任することができることとなりますが、52条では委託を認める一方、委託先を理事その他の役員に限定しています。 これは各組合において審議内容の重要性に比例して審議決定機関の権限委譲を認めることにより円滑で柔軟な組合運営を決定できることを認めたもので、その点においては管理組合も法人も変りがありませんが、法人の場合には管理組合の場合よりも組織化が高度に進んでいることが予想されるため、委譲先の機関も法人内部での調達が可能と考えられた結果と思われます。
それは即ち、管理組合でも内部機関で処理するのが所有者自治の観点から望ましいことは当然ですが、組合員数その他人的資源の関係から管理組合の場合には権限委譲先を外部に求めることもやむを得ない場合があるということです。

ここで理事その他の役員とあり、区分法が明記する役員には理事と監事しかなくその他の役員が何を指すのかは明らかではありません。従って、法文にあるとおり、委譲する権限の範囲・内容と共に以上先の機関たる役員自体も理事長・副理事長・世話人・協議委員・評議委員その他規約で自由に創設できるものと考えられます。

4.理事会への委任
実務的には、総会・理事会・理事長の順で権限が縮小されてくる関係にありますから、集会が権限を委譲する先は理事個人よりも理事会ということになるはずです。
法文は委譲先を役員個人に限るような表現ですが、その理由付けを理事その他役員という趣旨を集会以外の機関を表現したものとするか、または役員に共同委託することで(49条7項・民法52条2項により理事全員に委託された事務はその過半数で決するとしますから)事実上理事会への委託することが可能でしょう。

ただし、監事は区分法上の役員ではあってもその職責上業務執行に係るのは忌避すべきですから委譲先機関として不適当であることは当然です。

5.保存行為
なお、単に現状を保持するに過ぎない保存行為については集会等に懸けるまでもなく全員に利益な行為ですから理事が単独でできることとされます(2項)。

(区分所有者の責任)
第五十三条 管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、区分所有者は、第十四条に定める割合と同一の割合で、その債務の弁済の責めに任ずる。ただし、第二十九条第一項ただし書に規定する負担の割合が定められているときは、その割合による。
2 管理組合法人の財産に対する強制執行がその効を奏しなかつたときも、前項と同様とする。
3 前項の規定は、区分所有者が管理組合法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、適用しない。

1.趣旨
53条は管理組合法人の債務についての区分所有者の責任に関する規定です。
元来、法人とその構成員たる個人とは別箇の人格ですから法人の債務・責任と個人の債務・責任とは別個のものであるのが原則です。
従って、法人の債務の責任を構成員個人が負担することは原則としてないこととなっています。
このことは民法法人では当然の前提であり、権利能力なき社団の場合もまた同様に理解されています。

しかし、社団は一定の目的のために組織された団体であり、その目的により性格は様々ですから構成員の団体債務に対する無責任ということも団体の目的や性格によって取り扱いを別箇にしても問題のない事項です。
この点、合名会社ではその組合的性格からか会社の債務に関して構成員たる社員の無限責任が認められています。

そして、もともと管理組合の場合にはその事業は組合員全員のためのものですから、その債務は組合員のために管理組合が負担しているという性質があり、組合員が管理組合の債務につき何ら責任を負わないという結果は不当というしか有りません。

それに、法人化前には管理組合の債務は管理組合という団体の債務であると共に全区分所有者が総有的に負担する債務という二重の性格を有していました。

従って、53条は法人化後もその本質的な性格に変化がないこと、ただし、19条・29条の規定同様に各自の負担は総額の不可分または連帯の債務ではなく持分に分割された分割債務(債務自体は法人に帰属するので区分所有者は責任のみ負担するという考えの方が妥当かもしれませんが)を負うと軽減した規定ということになります。

2.組合員の負担割合
各自の負担割合は原則として共用部分の共有持分により、債務の負担割合が別箇に定められているときはその割合によります。

なお、既に規約を持つ管理組合が法人化した場合には29条1項の定めのある可能性がありますが、規約設定時から法人の場合には47条8項により29条は適用除外条項ですから正確には29条1項の準用を言うべきだったように思います。

ところで、共有持分と別箇に定められるこの債務の負担割合は一般に外部の第三者に知れているとは限りませんから(取引相手がすべて規約を見るとは限らない)、一部の者が負担しない等不合理な場合がありえます。
内容にもよりますが、不合理と評価される場合にはこの債務負担の特例の効力が認められないということも当然ありうるでしょう。

3.組合員の負担の条件
負担の条件は、@管理組合法人の債務超過のとき(1項)、A管理組合法人に対する個別財産への強制執行が効を奏しなかったとき(2項)です。
この点、29条の場合と異なり、法人債務の第一次責任は法人として区分所有者個人の責任は二次的・補充的(保証人的)な責任となっています。

@は通常の法人の破産原因ですが(ただし、47条7項で不適用)、債務超過とは管理組合法人の総財産をもってしてはその総債務の弁済ができない状態をいい、個々の債務の弁済期がいつかとは係りのないものです。
従って、現時点で弁済期のきた債務を弁済していても総額の比較で債務の方が多い場合には債務超過となります。
管理組合の貸借対照表で債務の方が多い場合には債権者からの請求を受ける可能性があるということでしょう。

Aは一般に支払停止と見られ支払不能を推測する事由とされます。
やはりいずれも破産原因となっています。
ただし、支払停止では必ずしも支払不能とは限りませんから、所謂検索の抗弁権が認められて支払不能ではないこと即ち管理組合法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明すれば責任を免れることができるとされます(3項)。

具体的には、管理組合の財産は通常預金口座で管理されていますから(稀に管理組合法人が専有部分を所有していることもあるでしょう。)、その銀行口座に執行しても債権全額が満足(弁済)を受けなかった場合は、執行が効を奏さなかったときに当たり、請求を受けた区分所有者が管理組合法人が他に修繕積立金等の運用として国債等の有価証券を○○に保管している等の証明ができればいいということです。
なお、管理組合法人所有の不動産は資力の点では問題がないかもしれませんが一般に執行が容易とは理解されていません。

(特定承継人の責任)
第五十四条 区分所有者の特定承継人は、その承継前に生じた管理組合法人の債務についても、その区分所有者が前条の規定により負う責任と同一の責任を負う。

趣旨
54条は管理組合法人の債務に対する区分所有者の特定承継人の責任に関する規定です。
このことは法人化前の管理組合でも29条2項で認められていた事項で、管理組合法人と管理組合の違いは法人格が完全に認められるか不完全にしか認められないかでしかありませんから、管理組合で認められることが完全な法人の場合にも認められることは当然といえます。

この規定は47条8項で4節(29条を含む)の適用を排除したので、29条2項の復活のために規定されたにすぎません。
従って、54条の趣旨・内容は29条の場合と同様ですから29条の解説に譲ります。

(解散)
第五十五条 管理組合法人は、次の事由によつて解散する。
 一 建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあつては、その共用部分)の全部の滅失
 二 建物に専有部分がなくなつたこと。
 三 集会の決議
2 前項第三号の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。
3 民法第七十三条から第七十六条まで及び第七十八条から第八十二条まで並びに非訟事件手続法第三十五条第二項及び第三十六条から第三十七条ノ二までの規定は、管理組合法人の解散及び清算に準用する。

1.解散・清算の趣旨
55条は管理組合法人の解散及び清算に関する規定です。
解散とは、法人を解消することで、一定の解散原因が発生すると法人は解散することになります。
ただ、解散が即法人の消滅というわけではなく、実際に解散して消滅するためには解散前に法人に帰属していた権利義務関係を整理して後任に引き継ぐがなければなりません。
この整理の段階が清算で、清算が完了して初めて法人に帰属していた権利義務がなくなり法人存続の必要がなくなって法人が消滅することになります。

このように法人の解散・消滅は一般に解散−清算−消滅という段階を経由することになります。
例外的に解散即消滅という現象が法人の合併の場合に発生しますが(包括承継のため清算不要の理由による)、管理組合法人ではあまり考えられません。
ただ、管理組合法人の場合その実体が管理組合という団体ですから、法人の解散といっても一般の法人と異なり団体自体の解消を意味するとは限りません。
解散後も管理組合が存続する場合にはその解散とは単に法人格の解消(法人化前の組合に戻る)に過ぎない場合もあります。

2.解散原因
ところで、法人とは一定の目的のために結成された団体(または財産)に取引の当事者となりうる法人格が与えられたものですから、その目的が成功または不成功の確定で消滅する場合や団体の消滅、法人の存在が社会的に害悪を及ぼすような場合には法人格は不要または剥奪されて消滅することになります。
法人の解散事由(原因)とは、このような事態が発生した場合法人を消滅させるための項目であるのが通常です。

1項の解散事由のうち建物(管理組合の場合は専有部分と共用部分を含む1棟の建物、一部共用部分の管理組合では当該一部共用部分)全部の滅失とは、管理組合の管理対象物が消滅し、管理組合の目的がこれ以上達成されないことが確定することです。
この場合には管理組合法人を存続させる意味がなくなりますから法人は解散することになります。
以上は、管理組合と一部共用部分管理組合との共通の理由ですが、管理組合の場合には建物全部滅失は区分所有権も同時に消滅しますから、区分所有者の団体という管理組合法人の構成員の消滅ということもその理由となるでしょう。

2号の専有部分の消滅とは、まず一部の消滅では残部のもので組合は存続しますから専有部分全部の消滅のことであり、また、共用部分を残して専有部分だけ滅失することがない以上、物理的な消滅は1号に該当しますから法律的な消滅を意味します。

これはようするに、区分建物即ち専有部分は1条の構造上・用法上の独立性のある建物部分を所有者がその所有権の行使の一環として1棟の建物を区分することにより成立しますから、その反対に全部の専有部分の所有権を持つ者がその所有権の行使の一環として建物を区分することを止めることもまた自由ということです(担保権者等利害関係人の承諾の要否は別問題)。

従って、全専有部分を同一人が取得したり、互いに持分譲渡等をすることにより全専有部分を全員の共有にしたような場合には区分建物という所有形態を1棟の建物の単独所有または共有という所有形態に変更することができ、この場合には区分所有権も同時に消滅しますから、区分所有者の団体という管理組合法人の構成員が消滅することになり団体が存続不能となって解散することになります。

ところで、2号の内容および1号から3号までに管理組合法人の構成員が1名という解散原因がありませんから、区分法では組合員一名の管理組合法人を認めていると考えられます。
団体であるなら当然最低構成員数は2名以上が必要なはずですが、このことから区分法は区分建物が存在し2名以上の組合員が生じる可能性がある限り法人の存続を認めていると考えられます。
さきほどの専有部分の消滅はこの可能性が消滅したということでもあります。
従って、成立時の30名要件は法人の設立要件で存続要件ではないといえます。

3号は法人の自治を確認したもので、法人格が不要となった場合、建替え等により清算が必要な場合その他理由の有無を問いません。
この場合には1号や2号の場合と異なり、必ずしも管理組合という団体自体が解散するとは限りませんので法人格のみの解消ということになります。
この議決は成立時の議決と同様に特別決議とされています(2項)。

3.清算
さて、管理組合法人が1項の解散原因の発生により解散すると清算に入ることになります。
3項は清算に関する重要規定です。
清算に入った法人は清算法人といわれその権利能力は清算目的の範囲に制限されます(民法73条)。
その清算業務の内部的・外部的(代表)執行機関は清算人といわれています(民法74条)。
清算はこれまでの取引関係の整理であり多数の一般債権者等に利害関係がある行為ですから裁判所の監督を受け(民法82条)、それは主に清算人に対する人事権を含めた監督権の発動によりなされます(民法75条、76条、非訟事件手続法)。

清算人は法人の業務を終了して、債権を取り立て、債務については公告の上、債権者の債権の届出を受けてその優先度合いに応じて公平にこれを弁済し、残余財産を確定してこれを引き継ぐものに引き渡すことになります(民法78条から80条)。

なお、清算法人が破産すると破産手続きに移行することになりますが(民法81条)、1項で破産を解散原因としていませんから、管理組合法人が破産しても解散はないように思われます。
管理組合の統治団体的性格によるものでしょうか。

(残余財産の帰属)
第五十六条 解散した管理組合法人の財産は、規約に別段の定めがある場合を除いて、第十四条に定める割合と同一の割合で各区分所有者に帰属する。

1.残余財産帰属の趣旨
56条は管理組合法人が清算した後の残余財産の帰属に関する規定です。
破産的清算等債務者の財産の債権者への公平な満足を目的とする場合を除き、通常の清算手続きは残余財産を確定するためのものですから、清算が終了し残余財産が確定すればこれを引き継ぐべき者に引き継ぐことになります。
そこで、56条では、規約で別段の定めのない限り持分割合(規約で別の定めがない限り区分法の原則である内法面積割合)で各区分所有者がこの残余財産の帰属主体となることとしています。

しかし、もともと、管理組合法人の財産はその法人格の存在から形式的には法人に帰属している財産ですが、実質的には全区分所有者の総有財産でしたから、形式的な帰属先が消滅すれば実質的な帰属先が顕在化するのは当然といえます。
従って、法人の残余財産も法人格が消滅すれば本来の帰属主体に帰属するようになるのであり、56条の規定は単にこのことを確認した規定ともいえます。

2.帰属方法
ただし、管理組合法人の解散は55条1項の解散原因から明らかなように、社団の解散を伴い区分所有者が団体の拘束から外れて個人に還元される場合と、単に管理組合法人の法人格が外れるのみで管理組合が存続する場合とがありえますから、それぞれの場合に応じてこの規定の意味も同じではありません。

そこでまず、社団も解散する場合は、残余財産は文字通り分割されて個人に帰属することになります。
ここで規約の別段の定めとは内法面積按分以外の定め即ち壁芯面積割合の場合、価値比の夜場合その他共用持分が14条の割合によらない場合や残余財産分配が持分とは別箇に定まっている場合がこれにあたります。

次に、社団が解消しない場合は、残余財産は依然として管理組合運営の資金となりますから、人格なき社団としての管理組合に承継され、各区分所有者には直接・現実的に帰属するとは考えられません。
従って、各区分所有者への帰属とは管理組合当時の帰属状態に復帰することであり、14条に定める潜在的持分での総有状態になります。
勿論、規約の定めも持分割合が14条の割合によらない場合の規定であることは社団が解消する場合と同様です。

以上いずれの場合も管理組合または個々の区分所有者以外の者、例えば建替え組合等に残余財産を帰属させることができるかは問題です。
規約での変更が認められている以上、可能という考えもありえますが、個人財産となる場合にはその個人の意思によりますから多数決で処理できる問題ではなく、組合財産となる場合には組合業務範囲内なら可能ですが、範囲外なら全員の合意が必要なため規約での定めはできないと思われます。

第七節 義務違反者に対する措置

(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
第五十七条 区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
4 前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。

1.侵害行為に対する請求
57条は義務違反者に対する手段の第1段である差し止め請求に関する規定です。
専有部分は区分所有者の所有物で、共用部分は区分所有者の共有ですから、或る者が専有部分を侵害したり共用部分を侵害した場合またはその虞のある場合には、区分所有者は単独で所有権や人格権に基づき(物権的請求権)その妨害の防止・排除・回復の請求ができることは当然です。
現実には、1棟の建物内にある区分建物は上下左右で互いに物理的に一体の関係にありますから、特定の専有部分だけが被害を受けるのは上下階での騒音・振動問題等の所謂ニューサンスに係る事例以外はあまり起こらないでしょう。

2.共同の利益違反行為に対する請求
ところで、この請求権は個人の所有権や人格権の侵害を要件としますから、6条に定める共同の利益という抽象的な侵害に発動できるかどうかは必ずしも明らかではありません。
しかし、管理組合や管理規約はもとより区分法自体が区分所有者の共同の利益の擁護・調整を目的として結成されあるいは制定されているものですから、客観的に共同の利益に反する行為に対してなんらのサンクション(sanction制裁)も持たないようではその目的が達成できないことになります。
そこで、必ずしも個々の所有権や人格権の侵害とはいえない行為でも6条に反する行為に対して、物権的請求権の行使の場合と同様にその侵害の防止・排除・回復を認めたのがこの規定です。

なお、6条の義務は各区分所有者や占有者が他の全員換言すれば管理組合という団体に対して負う義務ですから、この請求する主体は管理組合(管理組合法人)となることは当然です。

また、共同の利益に反する行為が同時に区分所有者個人の所有権や人格権の侵害行為であるときは、57条の管理組合の請求権と民法に基づく個人の請求権が並存することになりどちらを行使してもかまいません。

3.裁判実施の決議
ところで、上記のとおり共同の利益というのは所有権侵害と異なりペットの飼育制限の例(所有権侵害では説明できない。)からも分かるように抽象的な概念ですから(通常使用規則等で具体化されるのでしょうが)、裁判をする場合には果たして当該行為が反共同の利益行為に該当するか否かをまず管理組合自身で判断することが、使用規則に規定があると否とに係わらず裁判所の手間を省く意味でも妥当といえます。
そこで、裁判上の請求を行う場合には個別の案件ごとに総会で起訴の是非を議決しなければならないものとされています(2項)。
勿論、総会での審議が行為者に反省を促し行為の予防や損害の回復がなされ、裁判自体を未然に予防するという意味もあるでしょう。

この総会では、当該行為が共同の利益に反するかどうかがまず審議されますが、総会が区分所有者の利害関係調整の場であり、その審議は当該行為をめぐる利害調整そのものですから、行為者も当然その審議や議決に参加することができることは当然です。

なお、この議決は起訴の要件ですから、議決なしの訴えは訴えの利益なしで却下されることになるでしょう。

4.裁判での請求
この際、管理組合法人はその代表者たる理事が代表者として訴訟を提起しますが、管理組合の場合には管理者が管理組合という権利能力なき社団の代表者として民訴法29条に基づき、または3項で認められた全員のための訴訟担当者(全員が自分たちのためにみんなで原告となるのは手続きが煩瑣になり、且つ不経済です。)として訴訟を提起することになります。

なお、このことは共同の利益に反する行為の行為者が占有者の場合も同様です(4項)。

裁判というところまでの話でない場合には、1項だけの問題ですから管理組合(管理組合法人)の業務執行者がその業務執行の権限で必要な請求を行うことになりますが、その場合には必ずしも当該事項に関する個別の総会議決は必要ありませんが、何が共同の利益で何がそれに反する行為であるかがこれまでの総会議決または使用規則等で明確な場合でない限り、恣意的な運用になりかねず問題です。

(使用禁止の請求)
第五十八条 前条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。
2 前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。
3 第一項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
4 前条第三項の規定は、第一項の訴えの提起に準用する。

1.使用禁止の訴え
58条は専有部分の使用禁止に関する規定です。
共同の利益の侵害者に対しては、前条でその行為の差し止め等ができることになっていますが、差し止め等を命令する判決だけでは、有害行為の効果的解決とならない場合に当該侵害者本人を建物内から一定期間排除して、その反省を迫ると共に円満な共同生活の回復を図るものです。

この訴えは区分法が創設した特殊なもので他に例がありません。

2.請求の要件
一時的とはいえ、所有権の権能である専有部分の自由な使用を制限するわけで所有権に対する重大な制約となりますから、単に共同の利益を害するというのではなく、@著しい共同生活上の支障があり、A使用禁止以外の手段ではその共同生活の維持が困難であることが必要で(1項)、更に、訴えの提起にはその旨の特別決議が必要とされています(2項)。
その総会では誰が管理組合(全区分所有者)を代表して原告となるかも含めて審議されます(4項)。

なお、この請求は57条の請求では不適当な場合の規定ですから、要件があれば直ちに58条の請求ができるのであって、まず57条の請求をしてその効果が上がらないことを確認してから58条の請求ができるというものではありません。
この点は59条の競売請求も同様であり、57条と58条・59条は段階的に請求するものではなく、それぞれの要件や効果を異にしていますから、互いに(どれかが認められる場合には他は認められない)排斥的な関係にあります。

3.著しい共同生活上の支障
@は、暴力団や性格異常者、ガス自殺未遂、自宅放火等による他人の生命・身体への侵害またはその惧れがある場合等被侵害利益が重大な利益の場合に肯定されるのは勿論ですが、建物の物理的損壊や騒音・振動・悪臭等被侵害利益は割合軽微でも継続的累積的になることにより侵害の顕著性は肯定されます。
ただし、ごみ出しのルールを守らない等の容易に回復できる生活上のルール違反ではこれに該当しないでしょう。

ただ、この要件は次条の競売請求と同じですから、使用禁止か競売かは侵害行為の性質や加害者の加害目的・性格・態度等を考慮して目的達成にどちらの手段がより妥当するかを判断することになるでしょう。

4.使用禁止の必要
Aは、円滑な共同生活の回復には単なる当該行為の差し止め等では足らず、また次条の競売という手段よりもこの使用禁止が妥当するという理由です。
何らかの理由で侵害行為が期間的なものである場合や侵害者の性格等から反省が期待できるような場合に肯定され、反対に数年の使用禁止では再入居した場合に侵害行為が再燃する惧れがある場合や数年では反省等が期待できない場合には競売請求が妥当するため使用禁止の請求は不適当となります。

5.弁解
この請求は総会での特別決議が必要で、その審議において侵害者の弁解の機会が与えられる必要があります(3項)。
告知と聴聞というのは民主的な制裁手続きにおける必須の要件ですから、その聴聞権を保障した規定となっています。
この趣旨から、弁解の聴取は制裁を科す総会自体が行うべきで理事会等他の機関の聴聞結果の報告では足らないと考えるべきでしょう。
ただし、弁解の機会を与えれば足り弁解を必ず聞かなければならないというものではありません。

この審議において、加害者の侵害行為が@に該当し、Aのように使用禁止が妥当であるか否かが検討され、加害者は@、Aの要件がないこと、または@の加害行為を今後しない旨の弁解ができます。
なお、加害者はこの議案の当事者として特別の利害関係を有しますが、弁解の最終手段として議案に反対の議決権を行使できることは当然です。

この弁解にもかかわらず、または弁解の機会を放棄した結果、総会で可決されても裁判所でもう一度弁解が可能ですから裁判所の審判の結果@またはAの要件がないとして請求が棄却されることがあるのは当然です。

6.相当な期間
相当な期間としてどの程度が妥当かは侵害行為の内容・性格と共同の利益の回復との相関関係で決定される事柄であり一概には決まりませんが、短期間では差止請求での対処が可能でしょうから、1年以上3年以下程度で設定すべきでしょうか。
従って、総会この期間内で相当の期間を決議し、訴えで請求することになりますが、裁判所は独自に管理組合側の請求期間内で適当な期間を裁定することになります。
この場合、管理組合の請求期間を超えて裁定するのは民事訴訟の処分権主義に反しますから否定すべきでしょう。
従って、事案に対して不適当に短い期間の請求はAの要件を満たさず請求を拡張しない限り棄却されることになると考えられます。

7.裁判
一定期間の使用禁止の判決は、不動産にかかる紛争ですから、その訴額は不動産固定資産評価額(敷地権を除外した区分建物の価格)となりますから被告または不動産所在地を管轄する地方裁判所の管轄となります(民訴法4条、5条12号等)。

また、その判決は使用差し止めの場合と同様不作為の裁判となり、判決が確定すれば被告は自己の専有部分を判決で認められた期間中使用できなくなります。
使用の有無は当該専有部分の占有即ち事実上の支配の有無により判断されることになりますから、倉庫代わりに物品の保管も使用となるでしょう。
他人に賃貸する等により直接占有がなくなれば判決違反とはいえません。
この点で問題は親族の使用ですが、他人への賃貸は借家権の発生により期間満了時に明渡しが事実上困難となることや親族間に使用関係の契約が成立しないわけではないことから、被告に直接占有が認められないような形態であれば、元の同居人に占有移転することも認めていいように思われます。

なお、この判決での義務の履行は債務者の意思にかかるものとなりますから強制執行は間接強制の手段となります(民執法171・172条)し、(57条の場合も同じですが、)共同の利益への侵害が急迫なもので判決による執行では間に合わないと認められるときは、民事保全手続きによる仮処分が認められることは勿論です。

(区分所有権の競売の請求)
第五十九条 第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
2 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
3 第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
4 前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。

1.趣旨
59条は共同の利益違反者に対する競売請求に関する規定です。
競売請求も前条の使用禁止の訴えと同様に区分法独特のものです。
その要件は、@著しい共同生活上の障害、とA競売以外の手段では共同生活の維持が困難であることで、@の要件は前条と変わりませんが、その解決策が前条と異なりコミュニテイーからの放逐ですからAを結論づけるような性質・内容のものが要求されるでしょう。

総会の特別決議が必要なこと、原告が誰になるかも当該総会でも決定されること、加害者たる区分所有者の弁解の聴取が必要なことなどは前条の場合と同様です(2項)。

ただ、この訴えは前条の場合と異なり、その執行として競売がなされなければ目的を達成できませんから競売申立ての期限が判決確定の日から6ヶ月以内に制限されています。
判決の時効は10年のはずですが、あまり長い間被告を不安定な状態に置いておくことは不当であることと競売の申立てが可能になってから6ヶ月間もの間コミュニテイー内に置いている状況ではコミュニテイーからの放逐の必要性が消滅したものとみなし得るという理由によるものと思われます。

尤も、競売では通常の売買の7割以下でしか売れないのが通常ですから、判決を受けて被告が任意に売却して退去すれば競売申立ての必要はありません。
ただし、任意売却中なので競売の申立ては待ってくれ、といわれて6ヶ月経過してしまえば、申立てをすること自体に法律上の障害はなくいつでもできたのにしなかったのですから3項により申立て権は失うものというべきでしょう。
その場合は再度裁判からやり直しとなります。

2.管轄等
裁判の管轄等は前条の場合と同様ですが、前条の使用禁止と異なり訴額は対象が区分建物以外に敷地利用権も含みますので、その合算額となります。

競売手続きは当該物件の所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄となります(民執法44条)。

なお、この競売は判決という債務名義に基づくものではあっても、債権回収を目的とするものではありませんので強制競売ではなく、換価のための競売の一種とされるようです。

競売手続きへの参加は誰でもできることが原則ですが、特定人のコミュニテイーからの放逐という目的から被告および被告のための参加人は入札参加資格がありません(4項)。

(占有者に対する引渡し請求)
第六十条 第五十七条第四項に規定する場合において、第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる。
2 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、第五十八条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
3 第一項の規定による判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者にこれを引き渡さなければならない。

1.趣旨
60条は、占有者に対する明渡請求に関する規定です。
1棟の建物内のコミュニテイーには区分所有者のみならず賃借人や使用借人その他の占有者も存在し、それらの者も区分所有者と同様に共同の利益を侵害することがあります。
このため57条4項で区分所有者に対する行為の差し止め等の請求が占有者に準用されていますが、差し止め等では問題が解決できない場合に占有者に対して認められる手段が本条の明渡請求です。

区分所有者には58条の使用禁止や59条の競売請求と二通りの請求が認められていますが、占有者に対しては区分所有者の競売にあたるこの明渡しの方法ひとつしかありません。
これは占有者が区分所有者と異なり、当該物件に対する投下資本が少なく使用禁止によって一定期間他の場所に移転してまた戻るという必要性は少ないと法が判断した結果のようです。
今の場所から移転するのだから借家人の場合はどこを借りて住んでも同じなのだから暫定移転ではなく最終移転でよいはずだ、ということでしょう。

ただ、占有者でも業態によっては場所的利益の関係で当該物件の占有にメリットがあることもあり一概にそういえるものでもありません。
尤もその場合は占有者は移転期間中の賃料を支払いつづけなければならず、そうすると当該物件の占有が継続するともいえますからこの状態が使用禁止と整合性があるかの疑問はあります。

2.要件
占有者に対する明渡請求の要件は、区分所有者に対するのと同様で、@著しい区分所有者の共同生活上の障害とAその手段以外では区分所有者の共同生活の維持・回復が困難であることが必要です。
@は58条や59条の区分所有者の場合と同様ですが、Aの要件は上記の通り占有者には1個の手段しか認められていませんから区分所有者に対して使用禁止や競売の申立ができる場合の双方の場合を含むと考えるべきでしょう。
この訴えは相手が区分所有者から占有者に変わっただけで、コミュニティーからの放逐は占有者に対する重大な権利制限ですから訴えにより行使することが必要とされ、その訴えは総会の特別決議が必要なこと、原告の担当者も総会で選任されること、占有者の弁解を聴取する必要があります(2項)。
ただし、占有者は通常占有する専有部分の区分所有者との賃貸借契約その他の権限により専有部分の占有をするのが通常ですから区分所有者に対する使用禁止や競売の申立と異なり、単に管理組合と占有者との間だけ明渡しの効力が生じるだけでは当該専有部分の区分所有者と占有者との権限は存続してしまいます。
それでは占有者は明渡し後も賃料の支払い義務があることになりかねませんし、なにより占有権限を存続させたままの明渡しは論理矛盾でもありますから、明渡請求にはまず占有権限を賃貸借契約の解除等により消滅させることが前提となります。
これが1項の占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除という意味です。

3.裁判
この場合、契約関係の解消は契約当事者全てにその効果が及ぶものでなければなりませんが、国民の裁判を受ける権利から原則として訴訟当事者にしか裁判の効力が及ばないことが原則ですから、この訴えには契約の両当事者を訴訟当事者(双方を被告とするか、貸主たる区分所有者も原告となる)とする必要があります。
即ち、この訴訟は所謂必要的共同訴訟となります。

勿論、占有者が何ら占有権限無く占有している場合には当該専有部分の区分所有者との間に解除すべき何らの関係もありませんから占有者が単独の被告となりますが。

裁判管轄は58条、59条の場合と同様ですが、裁判費用は建物の明渡しの裁判ですから58条と同様建物価格のみが算定の対象となります。

なお、申立事項として、契約解除だけの請求ができるか、解除と共に明渡しも請求しなければならないか。原告に対する明け渡しを請求するか(4項)、所有者たる区分所有者への明渡しの請求でもよいか、等は問題ですが、契約解除だけでは最終目的が達成される保証がありませんから訴えの利益を肯定するためには明渡しの請求も必要と考えるべきでしょう。
ただし、当該専有部分の占有を適法にするためには所有権や賃借権等の物の占有権限を包含する権利を持っている必要がありますので、当該権利の無い原告に明渡しを認めるのは非常にイレギュラーな事態です。
従って、無権限者の原告が明渡しを受けた場合には権限者の区分所有者に速やかに引き渡さなければならないことは当然のことといえますが(4項)、これは当該区分所有者が明渡しの受領を拒否した場合に目的が達成できないことを危惧した規定ですから、もともと権利者に直接明渡しができればそれに越したことは無い訳で、当該区分所有者が原告側に加わっている場合等その受領が期待できる場合には、区分所有者への明渡請求も認められるものと思われます。

第八節 復旧及び建替え
(建物の一部が滅失した場合の復旧等)

第六十一条 建物の価格の二分の一以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分及び自己の専有部分を復旧することができる。ただし、共用部分については、復旧の工事に着手するまでに第三項、次条第一項又は第七十条第一項の決議があつたときは、この限りでない。
2 前項の規定により共用部分を復旧した者は、他の区分所有者に対し、復旧に要した金額を第十四条に定める割合に応じて償還すべきことを請求することができる。
3 第一項本文に規定する場合には、集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。
4 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
5 第一項本文に規定する場合を除いて、建物の一部が滅失したときは、集会において、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。
6 前項の決議をした集会の議事録には、その決議についての各区分所有者の賛否をも記載し、又は記録しなければならない。
7 第五項の決議があつた場合において、その決議の日から二週間を経過したときは、次項の場合を除き、その決議に賛成した区分所有者(その承継人を含む。以下この条において「決議賛成者」という。)以外の区分所有者は、決議賛成者の全部又は一部に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。この場合において、その請求を受けた決議賛成者は、その請求の日から二月以内に、他の決議賛成者の全部又は一部に対し、決議賛成者以外の区分所有者を除いて算定した第十四条に定める割合に応じて当該建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。
8 第五項の決議の日から二週間以内に、決議賛成者がその全員の合意により建物及びその敷地に関する権利を買い取ることができる者を指定し、かつ、その指定された者(以下この条において「買取指定者」という。)がその旨を決議賛成者以外の区分所有者に対して書面で通知したときは、その通知を受けた区分所有者は、買取指定者に対してのみ、前項前段に規定する請求をすることができる。
9 買取指定者が第七項前段に規定する請求に基づく売買の代金に係る債務の全部又は一部の弁済をしないときは、決議賛成者(買取指定者となったものを除く。以下この項及び第十三項において同じ。)は、連帯してその債務の全部又は一部の弁済の責めに任ずる。ただし、決議賛成者が買取指定者に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、この限りでない。
10 第五項の集会を招集した者(買取指定者が指定されているときは、当該買取指定者)は、決議賛成者以外の区分所有者に対し、四月以上の期間を定めて、第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を書面で催告することができる。
11 前項に規定する催告を受けた区分所有者は、前項の規定により定められた期間を経過したときは、第七項前段に規定する請求をすることができない。
12 第五項に規定する場合において、建物の一部が滅失した日から六月以内に同項、次条第一項又は第七十条第一項の決議がないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。
13 第二項、第七項、第八項及び前項の場合には、裁判所は、償還若しくは買取りの請求を受けた区分所有者、買取りの請求を受けた買取指定者又は第九項本文に規定する債務について履行の請求を受けた決議賛成者の請求により、償還金又は代金の支払につき相当の期限を許与することができる。

参考 旧法(建物の一部が滅失した場合の復旧等)
第六十一条 建物の価格の二分の一以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分及び自己の専有部分を復旧することができる。ただし、共用部分については、復旧の工事に着手するまでに第三項又は次条第一項の決議があつたときは、この限りでない。
2 前項の規定により共用部分を復旧した者は、他の区分所有者に対し、復旧に要した金額を第十四条に定める割合に応じて償還すべきことを請求することができる。
3 第一項本文に規定する場合には、集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。
4 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
5 第一項本文に規定する場合を除いて、建物の一部が滅失したときは、集会において、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。
6 前項の決議をした集会の議事録には、その決議についての各区分所有者の賛否をも記載しなければならない。
7 第五項の決議があつたときは、その決議に賛成した区分所有者(その承継人を含む。)以外の区分所有者は、決議に賛成した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。
 第五項に規定する場合において、建物の一部が滅失した日から六月以内に同項又は次条第一項の決議がないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。
 第二項及び前二項の場合には、裁判所は、償還又は買取りの請求を受けた区分所有者の請求により、償還金又は代金の支払につき相当の期限を許与することができる。

1.規定の趣旨
61条は建物の一部滅失に関する規定です。
建物は数十年以上の寿命を持つ耐久消費財ですから、建替えという更新期までの間に何らかの事故によりその一部が滅失する可能性は否定できませんので、そのような稀ではあっても起こりうる事態に備えた規定が61条です。

本条で建物の滅失に関しては、1項から4項までが小規模滅失による復旧、5項から13項(旧9項)までが大規模滅失による復旧の規定となっており、規模の大小は建物価格の過半の滅失か否かがその判断基準となっています(1・5項)。
面積の大小による区分もありえますが復旧にはお金がかかりますしそれは全員が分担するのですから、この条文のように金額面での区分は合理的といえるでしょう。

2.滅失
建物の価格とは1棟の建物の価格であり、建物は専有部分と共有部分で構成されますからその価格も専有部分と共有部分の合算額で計算されます。
換言すれば、滅失の対象は専有部分と共有部分の双方であるということです。
この場合、滅失した建物の価格はその交換価値(価格)を近隣事例等で評価して決定することになるのでしょうが、建物は経年劣化し且つ陳腐化してゆきますから、その価格は新築時かに日を経る毎に低下してゆくことは避けられません。
そのため、滅失した建物の価格がその復旧費に遥かに及ばないことも起こり得ます。
価格の過半は分かり易い基準ではありますが、物の価格以上の修繕費が必要という事態では費用の過分性は明らかですから復旧費が建物価格の過半を越えないという基準も立法論的にはあるかもしれません。
この点、小規模復旧に関しては規約で特段の定めが認められますから、このような要件を規約で設定することも当然可能と思われます。

なお、小規模滅失であろうと現実に費用が過分であると大多数の区分所有者が判断すれば61条の復旧ではなく、62条の建替えや団地であれば70条の一括建替えを選択できることは勿論です。
そして、建替えを選択した場合は復旧は意味をなしませんから、個人の権限で共用部分を復旧することはできなくなります(1項但書、たとえ復旧しても費用の償還は得られません)。

滅失とは、物の効用が消滅することをいい必ずしも建物が物理的に消滅する場合に限ったものではありませんから、地震やクレーン車転覆等による建物の一部倒壊にかぎらず火災等で建物の原形は止めていても使用できない状況であれば滅失したといえます。
なお、滅失した原因に関して本条は何ら規定がありませんから、天災地変による場合であろうと人災であろうと手続きに変りはありません。
また、滅失の原因によっては加害者から賠償金が受領できることや保険金が出ることがありえますがそれがこの手続きに無関係である点も同様です。

3.小規模復旧
小規模復旧は、規約に別段の定めがない限り各区分所有者が単独の判断で実施できるとされていますが(1項)、単独での復旧は何かと問題もありますから管理組合が実施することが望ましいことはいうまでもありません(3項、管理組合が復旧すると決定したら個人での復旧はできません。ただし、組合の決定前に復旧工事に着手していた場合には適法にそのまま工事を続行し、費用の償還を受けることができます。1項但書)。

この点に関しては、@復旧は現状維持ではなく原状回復行為ですから区分所有者が単独でできる保存行為とはいえず総会の決議が必要な管理行為や変更行為に該当しますが、総会決議なしに復旧を認めることの是非、A専有部分が滅失してしまえば区分所有権が消滅しますから当該滅失した専有部分の区分所有者であった者も1項の区分所有者として復旧が可能か否か、B専有部分で復旧できるのは自己の部分だけか否か、C自己に復旧費用の全額を負担する能力がない場合に他の区分所有者や管理組合に復旧が請求できるか否か等が問題となりえます。

まず、@については、小規模滅失の対象が1棟の建物ですから共用部分のみが滅失した場合と専有部分も全部または一部滅失した場合とが考えられますが(専有部分と共用部分との関係から共用部分の滅失なしに専有部分だけ滅失することは考えられません。
少なくとも専有部分が滅失したときは、専有部分自体の復旧が所有権者の権限に属することは明らかですから、この復旧に必然的に伴う範囲の共用部分の復旧も当然に可能としなければ所有権をあまりにも制約する結果となるというべきでしょう。
従って、専有部分の復旧に伴う共用部分の復旧は専有部分の所有権保護の必然的結果であり、17条・18条に規定する純然たる共有物の管理等とは性質が異なるため、所有者がその所有権を維持・保存する権利を確認した規定というべきものと思われます。
ただし、共用部分の復旧は他の区分所有者に対し費用分担という影響を与えますから自己の専有部分の所有権の維持・保存も完全に自由というわけには行かず、その限界が大規模復旧という線になります。
そうすると専有部分が滅失していない場合は、自己の専有部分の所有権の行使とはいえませんから純然たる共有物の管理等に該当し、区分所有者は単独では復旧できないと考えるべきでしょう。
条文に「滅失した共用部分及び自己の専有部分を」と規定するのはこの双方が滅失した場合の規定と思われます。

従って、共用部分のみの滅失の場合に、単独で復旧しようとする場合はその行為を制止させて管理組合の決議を待つよう要求することができますが、復旧完了後は原状に回復させることは無意味ですから結果的には単独の復旧が認められた場合と同様の結果になります。
そして、この場合には、管理組合としては共用部分の復旧という利益を受けますから不当利得として現存利益(民法703条、償還請求時での現存額勿論利息はつきません。正規の権限ある復旧の場合には事務管理(民法697条)となり2項により支出額全額が償還されることと比べて不利となります。)を当該区分所有者に償還することになります。

Aは法文の文言を文字通り適用すれば、意味のほとんどない規定となってしまうこと、法文の趣旨が従前の区分所有者の関係を復元することを想定していると思われることから、専有部分を滅失により喪失した者も「区分所有者」というべきでしょう。

Bは@と間連しますが、他人のものに干渉するのは原則として違法な行為ですから原則として他の専有部分の復旧はできないというべきでしょう。
下階を復旧しないと自分の部屋の工事ができないという場合でも通常は共用部分たる躯体が工事できれば済むはずです。
ただし、いろいろな建物がありますから、配管・配線その他の工事の都合上他の専有部分の工事が自己の専有部分の工事の前提となる場合には共用部分の場合と同様他人の専有部分の復旧も可能というべきでしょう。

最後にCですが、復旧は各区分所有者の権利ではあっても義務ではありませんから、復旧請求は原則としてできないというべきでしょう。
従って、まず復旧し(1項)、その後にかかった費用の償還請求をする(2項)という方法を採用する以上、その費用は一旦復旧する区分所有者が立替える必要がありますが、工事業者が代金を費用の償還まで待ってくれる場合でない限り、立替え能力のない区分所有者は単独では復旧を実現することができないことになります。
そして、組合でも個人でも復旧しない場合は大規模滅失の場合と異なり建物売渡請求権は認められおりませんから、そのままスラム化するしか方法はありません。

4.復旧費用の清算
なお、1項の規定により、専有部分の復旧とそれに付随する共用部分の復旧をした場合、専有部分については当該所有者自身の物である以上その費用の全額はその者が負担しますが、共有部分についてはそれを共有する全ての者(全体共用部分か一部共用部分かでその範囲は異なる)の物である以上、共有者が復旧者から受けた利益の償還が問題となります。
この場合は、自分の持分を超えた部分の復旧は他人の事務であり義務無くして他人の事務を処理したのですから民法697条の事務管理が成立して当該他人に対して民法702条1項に基づく費用償還請求権が認められることになります。
2項はこのことを確認した規定といえます。

更に、事務管理はいわば黙示の委任ですから委任の規定が準用され、その旨定めた民法701条には規定がないものの委任に準じるというの趣旨からすれば民法702条1項の解釈には民法650条の規定を補って読むべきでしょう。
従って、復旧費用の支出時からの利息も償還対象となります。

この場合の各区分所有者の償還すべき額は持分に応じるのが当然であり(2項)、それは区分法では原則として14条の割合によりますが、規約で別の持分の定めがあればそれにより、またこのような場合の費用負担割合が持分と別に定まっているのなら更にそれによることになります(4項)。
なお、この償還額が一時で支払うには多額になるような場合には裁判所に申し立てることで猶予期間が与えられることがあります(13項、旧9項)。

5.大規模復旧
さて、建物価格の過半を越える大規模滅失の場合には各区分所有者が単独で復旧することはできず、復旧には集会の特別決議が必要とされます(5項)。
この理由は相当多額の費用が見込まれる大規模復旧の場合にはまず復旧して皆で費用分担ということでは各区分所有者の考え方が異なりうることに鑑み妥当ではないというものですが、暗に建替えを誘導する規定といえなくはありません。

うまく復旧決議が特別決議で可決されれは、6項以下の手続きを経て復旧工事に至るわけですが、次条の建替え決議または70条の団地内建物の一括建替え決議がなされた場合を除き、当該議案が否決され又は議決なしに滅失から6ヶ月経過すると復旧の見込みがないものとして区分所有者は他の区分所有者に自己の区分所有権及び敷地利用権の時価での買取を請求することにより、区分所有関係・管理組合からの離脱ができるようになります(12項、旧8項)。

この買取請求権は所謂形成権(一方的に権利を形成する権利)で通常の契約のように申込みと承諾という意思表示の合致により契約が成立するものではありませんから、請求権を行使した相手方との間でその意思表示の到達と同時に代金を時価とする売買契約が成立することになります。

何が時価=売買金かは当事者の協議で決定され、協議が整わない場合は裁判となり結局裁判所が不動産鑑定を下に決定しますが、建物の現状は大規模滅失している状況ですからそれ自体を直接評価するのは困難であり、経済的には復旧完了後の建物・敷地利用権の評価額から当該専有部分の復旧費及び共用部分の復旧費の当該専有部分の持分分を控除した額が妥当でしょう。

このように考えると売買価格はあまり多額にはなりませんが、毀損物件の買取を請求される者にとっては迷惑な話で、買い受け人の方に期限の猶予等の裁判所への申立てが認められるのは小規模復旧の分担金支払いと同様ではあっても(13項、旧9項)、小規模滅失で復旧されない状況と変わりがないのに大規模滅失の場合にのみこのような婆抜き方式の転出方法が認められるのはアンバランスな感じが否めません。
そのため、旧法に対する意見として、このような保護だけでなく一定の場合の買取拒絶権も認める必要がありそうである、ということを提案していました。

この点、新法では、拒絶権こそ認められませんでしたが、買取の請求を受けた賛成者はその負担を他の賛成者に賛成者だけで算定した14条に定める割合(専有面籍割合)で分担させることができるようになりました(7項後段)。
この分担を希望する被請求者は、自己が買取請求を受けた日から2ヶ月以内に他の賛成者の全部または一部の者に対して、その者の賛成者だけで算定した14条に定める割合分の再買取の請求ができ、従って、最初の被請求者は最悪自己の負担分(賛成者だけで算定した14条に定める割合)の買取は免れないものの、それを超える部分の負担は任意に他に転嫁することができるようになっています。

ただ、多くのケースは壁芯計算面積割合で持分を算定しているはずであるにもかかわらず、強行法として14条の内法計算を強制することの妥当性には疑問があり(小規模の場合は規約で別段の定めができるので壁芯面積での負担ができます。)、本来賛成者全員が持分に応じて買い取るというのが原則であってもよかったかと思われます。

なお、新法では更に、6に記載のとおり買取指定者の選任により買取請求を受ける者を賛成者側が指定できるようになりましたので、その手当てさえできれば望まない買取の請求を受けなくても済むようになっています(8項)。

6.復旧決議と買取請求
ところで、復旧決議が成立した場合は、復旧をすることになります。
復旧決議は総会の欠席者は反対者も含めて全区分所有者を拘束しますが、小規模復旧とは異なり大規模復旧の場合には負担費用の額や復旧しても必ずしも元の状態に価値が復元されるわけではないこと(自動車でも事故経歴のある車は評価落ちします。)等から復旧に賛成しない人の利益擁護のため、決議の日の2週間後(初日不算入)から賛成者の全部または一部の者に対して自己の区分所有権及び敷地利用権の時価での買取を請求することにより、区分所有関係・管理組合からの離脱ができることとしています(7項)。

新法で、請求対象者に全部または一部との修飾語がつきましたが、これは当然の注意書きで内容は旧法と変りはありませんが、旧法では決議後直ちに行使できた買取請求が、新法では決議後2週間(または買取指定者の就任通知到達までのどちらか早い期間内)は行使できなくなりました。
これは、上記の買取指定者選任の制度が新法で創設されたためであって、その選任期間として決議後2週間を置いた結果です。

買取指定者は、賛成者が全員の合意で選任し、これを受諾した買取指定者は就任の旨を買取権者に通知する必要があります(8項)。
この選任・周知期間は決議から2週間以内ですから、現実には改修決議と同時に指定の決議(全員一致が必要)を行うことになるでしょう。

この買取指定者には特に制限がありませんから、何人でもよく、区分所有者である必要もありませんから外部のディベロッパー・建設会社でもかまいません。
尤も、就任通知は個別通知ですから、通知漏れや遅れ等で買取指定者に請求すべき者と賛成者に請求すべき者が混在する危険もあります。

なお、7項後段で請求を受けた賛成者の負担軽減兼資力増強策が認められたのと同様の趣旨で、買取指定者の資力増強策(買取指定者は本来、買取資力がある者が選任される建て前ですから7項後段のような負担の分担・転嫁は認められていません)として、選任した決議賛成者の選任責任として買取資力の保証責任が認められています(9項)。
即ち、買取指定者が代金を支払わない時は決議賛成者は連帯してその支払い(遅延損害金も含む)の責めを負うこととされています。
ただし、この責任は2次的な保証人的なもの(補充性)ですから検索の抗弁権(主たる債務者である買取指定者に執行の容易な資力が認められることを証明して請求を拒絶する権利。民法453条)が認められています(9項但書)。

なお、買取請求による売買契約の当事者はあくまで買取指定者またはそれがいない場合の請求を受けた賛成者ですから、売主たる請求者は代金不払いの場合にそれ以外の者に代金請求しなければならない義務はなく、これらの債務者が代金支払いができない又はしない場合には債務不履行を理由に形成権の行使で成立した売買契約を解除して損害賠償と共に原状に復帰できることは意思の合致による契約の場合と同様です。
そして、このような場合は結局決議実行は崩壊することになるでしょう。

このように、決議に賛成したか反対したかでその者の権利義務は相当の差が発生します。
そのため誰が賛成し誰が賛成しなかったかを確定しておく必要がありますから、この総会の議事録には各区分所有者の賛否を明記することとされます(6項)。
なお、新法で集会議事録に従前の書面の他電磁的記録も追加されましたから(42条)、この決議の議事録も電磁的記録が含まれます。

買取請求ができるのは決議に賛成しなかった者ですから、反対者・棄権者・欠席者がこれに該当し(7項)、書面決議や委任状で賛成した者は当然に賛成者となります。
買取請求を受けるのは決議賛成者及びその承継人(包括承継は勿論特定承継も含む概念と思われます。)です。
反対者・棄権者・欠席者の承継人は、包括承継の場合には被承継人の地位を全人格的に承継するので買い取り請求権も承継しますが、特定承継の場合は復旧決議のある区分所有者関係に入った点において賛成者の特定承継人と変りはありませんから賛成者の承継人に準じて買取請求権はないものというべきでしょう(46条)。

反対者の人も復旧議決に拘束されていますから、必ずしも参加できないというわけではなく、買取請求権を行使せずに参加することもできます。
しかし、決議はなされたが買取請求の支払いで復旧資金が捻出困難となる場合もありえますから、非賛成者は一応買取請求をすることを前提に復旧計画を立案すべきでしょう。

なお、旧法では買取請求が何時までできるのかの規定がありませんでしたので、規定がないのは買取請求は個々の区分所有者間で処理される問題(その者の工事負担金も買取権行使による特定承継人が免責的に承継する。)のため全体の復旧工事の実施に買取請求が支障を与えないためですが、復旧に参加せずに離脱するという趣旨からは遅くとも工事着手までに権利行使しなければ権利の行使はできなくなると考えるべきではないか、と思われましたが、新法10項・11項で決議集会の召集者(買取指定者がいる場合は買取指定者)が、買取請求権者に対して個別に4ヶ月以上の考慮期間を定めて買取請求権を行使するか否かを催告(通知)することとされ、その考慮期間中に行使(買取請求の到達)がないときは買取請求権が消滅するものとされました。
この考慮期間の通知(決議後何時出してもよく、恣意的な取扱いと評価されない限り必ずしも全員に出す必要はありません。)は個別になされますから、買取請求ができる者とできなくなる者の混在状態が発生する惧れがあります。
なお、この規定の結果、請求権の消滅した者は、決議に賛成しなかったとはいえ、離脱できなくなったのですから反対者も含めて拘束する決議の効力を受けて改修に参加することとなります。

7.全部滅失の場合
なお、大規模滅失も100%の滅失の場合は、この規定の関知するところではありません。
この場合は原則どおり区分所有権は当然に消滅し(物の支配を目的とする所有権は物がなくなったら存続させる意味がなくなって消滅します。)、管理組合も消滅し、残るのは敷地利用権と建物であった残骸を共同で有する多数人です(例えば、単なる土地の共有者の集合、当然には団体は構成されません。)。
その後の処理は民法の共有の規定に則って行われます。
ただし、100%の滅失と99%の滅失を区別するのは現実的には不可能で結局、社会通念(常識の法律用語)によるしかありません。

(建替え決議)
第六十二条 集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。
2 建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
 一 新たに建築する建物(以下この項において「再建建物」という。)の設計の概要
 二 建物の取壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額
 三 前号に規定する費用の分担に関する事項
 四 再建建物の区分所有権の帰属に関する事項
3 前項第三号及び第四号の事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない。
4 第一項に規定する決議事項を会議の目的とする集会を招集するときは、第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくとも二月前に発しなければならない。ただし、この期間は規約で伸張することができる。
5 前項に規定する場合において、第三十五条第一項の通知をするときは、同条第五項に規定する議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。
 一 建替えを必要とする理由
 二 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
 三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
 四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
6 第四項の集会を召集した者は、当該集会の会日より少なくとも一月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。
7 第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条の規定は、前項の説明会の開催について準用する。この場合において、第三十五条第一項ただし書中「伸縮する」とあるのは、「伸張する。」と読み替えるものとする。
8 前条第六項の規定は、建替え決議をした集会の議事録について準用する。

参考
 旧法第六十二条 老朽、損傷、一部の滅失その他の事由により、建物の価額その他の事情に照らし、建物がその効用を維持し、又は回復するのに過分の費用を要するに至つたときは、集会において、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、建物の敷地に新たに主たる使用目的を同一とする建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。
2 建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
 一 新たに建築する建物(以下「再建建物」という。)の設計の概要
 二 建物の取壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額
 三 前号に規定する費用の分担に関する事項
 四 再建建物の区分所有権の帰属に関する事項
3 前項第三号及び第四号の事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない。
4 前条第六項の規定は、建替え決議をした集会の議事録に準用する。

1.建替え
62条は、建替え決議に関する規定です。
建物は経年劣化その他の事由によりいずれは建替えという時期が到来しますが、区分建物は通常多数の区分所有者の共同所有ですから何らのルールも定めずに建替え問題を放置する場合には原則的に民法が適用されることになりますから全員の合意がなくては建替えができません(既存建物の無断解体は否合意者の所有権を侵害し、解体後の無断新築は否合意者の土地利権利を侵害するため。)。
しかし、それでは一人の反対があっても建替えが不可能になりますが、建物の劣化した状態で居住を継続しなければならないことは他の多くの区分所有者にとって不利益ですし地域に危険またはスラム化した建物が存続することは社会問題でもあります。
そのために、全員の合意を不要として一定の要件により建替えを認めて憲法および民法で保障された個人の財産権と共同生活を営む他の多数の区分所有者及び周辺社会との利益の調和を図ったものがこの規定です。

2.旧法の客観要件
建替え決議の要件として、従前は「老朽、損傷、一部の滅失その他の事由により、建物の価額その他の事情に照らし、建物がその効用を維持し、又は回復するのに過分の費用を要するに至つたとき」と所謂客観的要件を要求していましたが、建替え決議がこの客観的要件を欠くため無効であるとの判決がでる等明確性を欠くなどの問題点が指摘されたため新法では条文からこの客観的要件を外し単に、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数の議決という手続き的要件のみで建替え決議が可能となっています。
確かに老朽というのは一定の価値判断が必要な概念であり判断者により結論が異なる不明確な条件といえますが、損傷・滅失は損傷・滅失前の状態との比較の問題で判断者に左右されない客観的な条件といえます。
ただし、これらは例示ですから現実的にはそのような物理的原因によりそのままでは過分な費用が必要な状態にあるか否かの判断が最終的な結論を分ける要件となっていました。
この場合に、再築には解体・撤去費と新築費がかかりますので、その費用と改修費の高低を比較して結論を出すのであれば簡単ですが、一時の改修費が解体・撤去費と新築費の合計額を上回ることは殆んど考えられませんから、そのような考えではこの条項の適用の余地はほとんどありません。
従って、いきおい、今後の維持・改修費の金額とその建物機能回復・維持の程度と解体・撤去・新築費の金額と建物機能回復・維持の程度の比較をするということになりますが、極論すれば60年間の建物のライフサイクルコストは新築費の4倍程度が必要ですから維持・改修期間を長期に見積もることにより容易に解体・撤去・新築費を上回ることができます。
結局、過分の費用の基準も判断者の恣意的な判断を許す不明確な基準であったといえなくはありません。
尤も法文は程度の差はあっても皆一定の不明確性をもっていますからこの程度の不明確性を特別に問題視する必要があったかは疑問ですが。

3.新法の客観要件
このように新法では、条文上は手続き要件のみで建替え決議ができるようになりましたが、単に区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数決があれば他に何らの客観的要件もなしに建替えができる、すなわちその決議が有効かは別問題です。
この条文には明記がなくとも、所有権は恣意的に剥奪されないことが憲法上も明記されている財産権の代表であり(憲法29条)、建替え決議が反対者の意思に反してその建物所有権を剥奪する内容をもつ以上、反対者の所有権保護に優越する合理的利益の存在が必要であることは明らかでしょう。
その場合、多数者の意思から少数者の利益を守るという基本的人権の性格上、単に五分の四以上の多数が賛成であるというだけではその理由とはなりません。
この正当化事由の必要性は、新法でこの条文に追加された建替えの理由等の明示を要求する規定の存在からも明らかなようです。
従って、新法は旧法で明示されていた所有権に対する公共の福祉による制約(従来の所謂客観要件)を黙示制約基準に変更したに止まり、1項には黙示の有効要件(客観的要件)が依然として存在するといえるでしょう。

その要件が何かは今後判決例や学説などにより明確の作業が進行するのでしょうが、抽象的には所有権は公共の福祉に従う(民法1条)という原則の下に建物の存続を主張することが他の区分所有者の利益や地域社会の利益にとって所有権の社会性から認められないような場合といえ、具体的には老朽化や既存等により危険な場合、スラム化して住む人がいなくなり浮浪者等が住みつく等により地域の治安上問題がある場合等がこれにあたることになるでしょう。
建替え建物の用途制限(従前と同様の用途)もなくなりましたので、地域地区変更等により従前建物が周りの建物用途とそぐわなくなるというのもあたりそうですが、単に収益性が悪くなったというのは(完全な投資用物件の場合は別に考えることもできるでしょうが)社会的な理由がなく認めがたいように思われます。

このように考えると、従前の費用対効果の客観的要件を明記していたときと比べて、建替え理由の自由を得た反面その社会性が必要になるであろう点で、従前より建替え要件が厳しくなったともいえ立法者の意向であった建替えの簡易化がはたして達成されたのかには疑問もあります。

4.その他新法の変更点
尤も、旧法と比べこの客観的要件以外に、敷地の自由(従前の敷地全部に縛られていたものを、その一部でも他の土地と共同でも建替えが可能となり選択肢が広がった。)、建替え建物の用途の自由(従前の用途に縛られていたものを用途を自由にしてその土地や時代にあった建物の建築が可能となった。)が認められたのは建替えに自由度を与えており、旧法の硬直的な態度を是正したもとして評価できます。

5.決議事項1
2項の必要的議決事項(建替え決議で必ず議決する必要のある事項)は旧法と変りがありません。
1号の再建建物の設計の概要とは、建物の種類・構造・階数等に関する事項の概略ですが、その詳細の程度は明らかではありません。
しかし、単に建物の概要ではなく設計の概要として建替え決議参加者の建替え事業参加の判断の要素や次号の予算額の根拠となることを予定しているとみられることから建築確認申請に必要な実施設計までは要求されないまでも、概算見積もりを徴収できる程度の基本設計図程度のものは必要と思われます。

6.決議事項2
2号の建物の取壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額は、1号の基本設計に基づく見積り額で、いずれも1棟の建物の総額です。
個別の負担額は3号の分担の問題です。
そこには建替え工事期間中の仮住まいの費用や引越代・新居の家具備品代その他の個人的経費は含まれません。
新築費も建物の用途や広さによっては専有部分の全設備が含まれるとは限らず別途内装代の負担が発生することがあります。

7.決議事項3
3号は2号の費用の負担方法の定めです。
負担額の決定方法やその支払方法等が定まればよく、この段階では特定の個人がいくら負担するかを定める必要まではありません。
新築費の負担は専有部分や共用部分を包含する1棟の建物の新築費の分担ですから、建物のどの位置にどの程度の広さのどのような用途の専有部分を取得するかにより異なります。
このことは新築マンションの各部屋の価格が同じ広さでも階数や方位により異なることからも容易に理解できるでしょう。
この場合既存建物の管理の基準である区分法19条や管理規約の費用分担の定めは適用になりませんから、適正妥当な負担方法を決定することが事業参加者間の公平を保つ上で重要です。
従って、必要に応じて不動産鑑定士等の専門家に依頼してその基準を策定することになります。

8.決議事項4
4号は再築建物の区分所有権の帰属先即ち誰がどこを取るか、又はそれをどのように決定するかに関する事項です。
この議決の段階では集会の参加者と建替え事業の参加者は一致していませんし(反対者は参加しない)、用途の選択の自由も認められましたから必ずしも従前と同一の位置で同一の用途となるとは限りませんから抽選その他による決定方法を定めることになるでしょう。
なお、4号では区分所有権の帰属としてその敷地利用権については謳っていません。
これは敷地利用権はそのままで建物だけを建替えることを予想しているためですが、これでは既存の建物での区分建物とその敷地利用権とのバランスが再築建物では維持できない事態が生じる惧れがあります。
3項に定める各区分所有者の公平を図るためには敷地利用権も含めた再配分が図られる必要がありますが、区分法自体にそういう手当てがない以上、あらためて敷地利用権の一部譲渡でバランスをとるか、またはそのような手当てのあるマンションの建替えの円滑化等に関する法律を適用して事業を行うかしか方法はないようです。

9.公平の原則
3項は事業における各参加者の公平の原則を定めた規定ですが、それ自体は当然のことです。
ただし、上記のとおり参加の負担や再築後の建物およびその敷地利用権保有での公平を図るのは至難の業であり、この公平の原則を満足するためにはマンションの建替えの円滑化等に関する法律を適用するしか方法はないでしょうから、3項は事実上建替えはマンションの建替えの円滑化等に関する法律によるものとする、と記載するのと同義のように思われます。
尤も、それはこの規定が効力のない精神規定であるというのではありません。
議決の反対者は建物の売却による関係離脱により多数者からの一応の保護が与えられていますが、賛成者内部での少数者の保護はこの規定だけですから公平を害する取り決めはこの規定に違反して無効となります。

10.招集の特則
4項から7項までは新法で新設された規定で8項は旧法4項の繰り下がり条項です。
4項では建替え決議の集会招集通知の発送を35条の会日の1週間前から2月前に伸張し、この期間の変更は更に伸張は認めても短縮は認めないものとしています。
この特別の招集方法は議案の重要性から当然のことで旧法に規定がない(35条の原則のまま)こと自体がそもそもおかしかったというべきです。

更に、新法ではこの招集通知に旧法35条5項で定める議案の要領の他@建替えを必要とする理由(5項1号)、A建替えない場合の建物の維持費(同2号)、B長期修繕計画の内容(同3号)、C修繕積立金の額(同4号)も通知して区分所有者の建替え決議の賛否を判断する資料を整備しました。

@は、旧法では老朽化その他による建替えの必要性をいうことになるのでしょうが、1項から旧法のような例示がなくなりましたから旧法の時代よりも比較的広範囲な理由を掲げることができ、その理由が全員に受け入れられれば問題がありませんが、反対者がいる場合には反対者の所有権保護に優越する所有権の社会性からの制約の正当性を理由とする必要があると思われること上記のとおりです。

Aは、費用対効果の判断材料の提供ということで旧法の考え方を引きずったものですが、建替えか否かを判断するときの重要な事項であることは否定できません。
ただし、この点は旧法でも恣意的に作成することが可能な不明確事項として問題のある項目ですから、その判断には注意が必要です。
@の理由となった老朽化や毀損の当面の補修費および通常の管理費と狭く考えるのが妥当ではないでしょうか。以後の補修関係の情報はBの長期修繕計画にて提供されます。

Bは長期修繕計画の内容であり、長期修繕計画は何時何の工事をいくらで実施することを予定するかの一覧表です。
長期修繕計画やCの修繕積立金は建設省の指導もあって現行の管理組合ではおなじみの制度になりつつありますが、今回の区分法改正ではじめて区分法上登場した言葉です。
近時多くの管理組合が長期修繕計画を作成することになりましたが、長期修繕計画がない組合はこのために特に作成することまでは要求されず、なければ出す必要はないとされています。
この規定は、Aの当面の必要工事とこのBの大規模工事計画とをつきあわせれば、近々の予定工費が予想できますから、それと建替え費用との比較を行ってもらおうというものです。

Cの修繕積立金は、Bの長期修繕計画を根拠に大規模修繕費を予め積み立てる工事準備金で、これも近年多くの管理組合でとられている措置といえます。
建替えするとなれば既存建物の修繕は不要となりますから、この修繕積立金を建替え費用の一部に充当することが考えられますからそのための規定といえます。
尤も、管理組合の清算時には管理費や専用使用料等の繰越金・保険料の精算金等積立金以外の余剰金もありえますから、本来は実務上もそうやるであろう管理組合の仮清算による区分所有者への返還金とするほうが良かったかもしれません。
ただし、この修繕積立金は使途の定まった準備金で全区分所有者の総有に属しますから(組合法人でも実体は同様)、その使途以外の使用である建替えに使用するには建替え反対者も含めた全区分所有者の合意が必要です。従って、実際には次条の売渡請求前に修繕積立金を精算する場合は反対者には返金し賛成者分だけ建替え費用に回すことになり、売渡請求後(全員の合意が得られる状態)の精算の場合は全員の合意を得てその全額を建替え費用に充当することになるでしょう。
後者の場合には積立金を含めた管理組合余剰金の清算分が売渡代金に反映されて個別に清算されることになります。

11.説明会
新法は更に、6項で説明会の開催を要求して建替え事業計画の各区分所有者への周知を図っています。
この説明会は、総会の招集者が開催し、その内容は総会議案即ち2項各号の要領と5項の招集時の同時通知事項即ち5項各号の事項です。
そして、この説明会は総会の会日より少なくとも一月前までに行うものとされ、この期間は延長はできても短縮は許されていません(7項)。
これは、内容を理解して賛否を検討するのに必要な熟慮期間を少なくとも一か月は保障しようという趣旨です。
説明会の回数は規定されていませんから、1回の説明会で全部を説明しても数回に分けて一部ずつ説明してもかまいませんが、上記の趣旨から全部の説明が終わってから最低1ヵ月以上後に総会が開催されるように説明会を行う必要があります。
ただし、補習の意味で再度説明する場合はこの規定による説明会ではないので、総会直前でもかまいません。

なお、説明会も開催の場所や時間その内容を区分所有者に知らせて参加の機会を保障する必要がありますので、招集手続きが必要でありそのため35条1項から4項までの総会招集手続きがこの説明会の招集の場合に準用されています(7項)。
この場合、説明会が数回に亘る場合は予めその全部又は一部につき事前にこの招集手続きを踏んでない場合は、そのつどこの招集手続きを踏む必要があります。

ところで、説明会を1回で済まそうとする場合には実際には、総会の招集と一緒に説明会の招集も行うことになると思われますが、現実的には1回の説明会のみで建替えの利害得失を判断することは困難であり、相当の期間にわたり相当の回数の説明会兼意見交換会の開催が不可欠ですから、6項の規定は建替え事業施工者の最低限の説明義務を確認したものと理解すべきでしょう。
ただし、説明内容が明示されたのは評価できますが、規定前の実務でも当然説明された内容を単に確認したに止まるようにも思われ、施工者側の責任強化という実益はあまり感じられません。

12.議事録等
建替え決議は反対者に対する売渡請求の根拠となる重要な議事ですから、前条の大規模復旧の場合と同様に総会議事録には各区分所有者の賛否も記載することが要求されます(8項)。
新法では議事録は必ずしも書類である必要がなくなりましたので電子ファイルの議事録用に項の表現が一部修正されました。

(区分所有権等の売渡し請求等)
第六十三条 建替え決議があつたときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議に賛成しなかつた区分所有者(その承継人を含む。)に対し、建替え決議の内容により建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。
2 前項に規定する区分所有者は、同項の規定による催告を受けた日から二月以内に回答しなければならない。
3 前項の期間内に回答しなかつた第一項に規定する区分所有者は、建替えに参加しない旨を回答したものとみなす。
4 第二項の期間が経過したときは、建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又はこれらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(以下「買受指定者」という。)は、同項の期間の満了の日から二月以内に、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。建替え決議があつた後にこの区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含む。)の敷地利用権についても、同様とする。
5 前項の規定による請求があつた場合において、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者が建物の明渡しによりその生活上著しい困難を生ずるおそれがあり、かつ、建替え決議の遂行に甚だしい影響を及ぼさないものと認めるべき顕著な事由があるときは、裁判所は、その者の請求により、代金の支払又は提供の日から一年を超えない範囲内において、建物の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。
6 建替え決議の日から二年以内に建物の取壊しの工事に着手しない場合には、第四項の規定により区分所有権又は敷地利用権を売り渡した者は、この期間の満了の日から六月以内に、買主が支払つた代金に相当する金銭をその区分所有権又は敷地利用権を現在有する者に提供して、これらの権利を売り渡すべきことを請求することができる。ただし、建物の取壊しの工事に着手しなかつたことにつき正当な理由があるときは、この限りでない。
7 前項本文の規定は、同項ただし書に規定する場合において、建物の取壊しの工事の着手を妨げる理由がなくなつた日から六月以内にその着手をしないときに準用する。この場合において、同項本文中「この期間の満了の日から六月以内に」とあるのは、「建物の取壊しの工事の着手を妨げる理由がなくなつたことを知つた日から六月又はその理由がなくなつた日から二年のいずれか早い時期までに」と読み替えるものとする。

1.規定の趣旨
63条は区分所有権及びその敷地利用権の売渡請求に関する規定です。
建替え決議が成立すると、建替えに着手することになりますがそのためには既存の権利関係を整理しなければなりません。
全員が建替えに参加する場合には、建替え決議で定まった方法により、敷地関係はそのままで既存の建物の区分所有権は建物取り壊しにより消滅し、新築建物の竣工引渡と同時にその区分所有権を新たに取得することになるので区分所有者の権利関係は割合単純ですが、建替えに不参加の者がいる場合には、その者の権利をそのままにしたのでは建物の解体は民法上の不法行為(民法709条)、刑法上の建造物損壊罪(刑法260条)となり参加者側は勿論、不参加者の利益も守られることにはなりませんから、不参加者の利益を守りつつその権利関係の解消が図られる必要があります。
そのための手段が63条に定める買取請求権です。

復旧の場合の買取請求が建替えでは売渡請求とイニチアチブが反転しているのは、復旧のぱあいには権利関係の整理が不要のため区分所有者関係からの離脱は決議反対者の意思に任せていても手続きの進行に問題がなく、建替えの場合には権利関係の整理をしなくては手続きが進みませんから反対者の意思に任せて置けないと法が考えた結果です。

なお、本来、建替えにあたって整理すべき権利関係はこれだけではなく、区分所有者の担保権者や賃借人等についても所定の手当てが必要となります。
しかし、これらは民法・借地借家法の問題で区分所有者関係に関する区分法の担当外の事項のため区分法には規定がありません。
同時に、建替えでは建替え計画の立案からその実行・完成にいたる過程が重要ですが、これも既存建物の解体と多数人が共同して(管理組合でも既存の区分所有者の立場でもなく、共同建築者または建替え組合の立場で)行う新規建物の建設過程であり、既存建物の区分所有者関係を守備範囲(建物解体で既存の区分所有関係は消滅してしまいます。)とする区分法の範囲外事項のため規定がありません。
これについては建替え円滑化法が担当することになります。

2.要件1−当事者の確定−
売渡請求のためには、まずその当事者を確定する必要がありますが、売渡請求権者即ち買主は@建替え決議の賛成者またはA決議に反対又は棄権したが建替えには参加する者、B建替えに参加する全員から買受指定者として指名された者がなります(4項)。
@とAの場合はかならず既存の区分所有者又はその承継人(特定承継・包括承継)ですが、Bの場合は既存の区分所有者以外の外部の者の場合もありえます。
Bの指名は自己の買受権放棄も包含するでしょうから買受指定者がいる場合は各区分所有者は買い取り請求はできなくなります。

売渡請求を受ける者即ち売主は、建替え不参加者ですが買主のAのケースがありますから建替え決議反対者が即売主になるのではなく、決議反対者と棄権者(意思表示なく欠席した者も含む。)から不参加者を選別することになります。
そのための方法として、これらの各人から参加の有無を届出させることにし、@建替え決議のための集会招集者(招集には管理者の場合に限らず区分所有者の少数招集権による場合もあるので集会招集者とされます。)に決議に賛成しなかった者(決議反対者と棄権者)に対して遅滞なく建替え参加の有無を文書で回答するように通知(催告、35条の準用はありませんから掲示等では足らず個別に住所地に通知することが必要です。)することとし(1項)、Aこの通知を受けた決議反対者と棄権者は@の通知を受けた日から2ヶ月以内(民法140条により初日不算入)に参加の有無を回答する(発信でよいでしょう。)ものとしています(2項)。

参加の回答をした者は参加で確定し、不参加で回答した者および期限内に回答しなかった者は不参加で確定し(多数者が進める手続きでは態度のはっきりしない者は不参加として手続きを進めるのが混乱がありません。)、これで売渡請求を受ける者が確定します(3項)。

なお、売渡請求を受ける者は原則として不参加の区分所有者およびその承継人(特定承継・包括承継)ですが、常に敷地利用権の分離処分が禁止されているわけではありませんから4項後段で不参加者の承継人として敷地利用権のみの承継人も含まれるものとされています。

3.要件2−請求権の行使・代金の確定−
以上のように売買当事者が確定すると買主から売主に対して、参加の有無回答期限日から2ヶ月以内(除斥期間、権利の有効期間・消滅までの期間ですが請求権の場合は時効期間というのに対し形成権の場合は除斥期間といわれます。除斥期間を途過すると権利は当然に消滅し権利行使はできませんから、任意契約での売買を行うかもう一度建替え決議をやり直す必要があります。時効と除斥では法的性質が異なり、除斥期間には中断や援用の余地がありません。)に区分建物およびその敷地利用権を時価で売り渡すよう請求することができます。
この売渡請求は所謂形成権(権利関係を一方的に形成することができる権利)で、この請求の通知の到達と同時に両者の間で時価による売買契約が成立します(形成権の行使ですから通常の契約と異なり相手の承諾は不要です。)。

問題は時価がいくらであるかですが、これは一次的には売買の当事者が協議して決定する金額であり、協議が調わないときは裁判所による通常訴訟の判決(金○円と引き換えに区分建物およびその敷地利用権の移転登記・引渡をせよ、との引き換え給付判決と代金が金○円であることを確認する、との確認判決の組み合わせが通常。)で決定されます。

そして、裁判においてこの時価は、不動産鑑定を下に決定されますが、建替え決議が存在することを前提とする価格すなわち再築後の土地建物の価格から再築に要する費用を控除したものを指すものとされ、これは土地価格から既存建物解体の費用を控除したものに等しいとされています(H13.10.31 神戸地方裁判所伊丹支部 平成9年(ワ)第375号 総会決議無効確認請求事件参照)。
換言すると、63条の明文規定にもかかわらず建替え決議前に有った既存の区分建物自体の評価額は建替え決議により取壊し対象として評価額0となるということですが、団体の決議に反対して団体から離脱する場合にこの決議による不利益を受忍させることはあまり妥当なことではなく、決議がなかったら有したであろう価格での売渡を認めるのが不参加者に対する正当な補償というべきでしょう(憲29条3項、商法245条の2)。

4.明渡し
売買当事者が確定し売買価格が決定されると残るは明渡しとなります。
明渡しも価格決定の場合と同様に第一次的には当事者の協議(裁判外の合意や裁判上の和解等)により定まりますが、協議が調わない場合には裁判で決定されます。

ところが、裁判は当事者間の権利義務・法律関係を確認・確定することが使命の紛争解決手段であって、所謂白黒をつける硬直的な解決となり和解の場合と異なって権利義務・法律関係の外延にある事情を盛り込んだ極め細やかな柔軟な解決を図ることができません。
ここでの当事者の法律関係は履行期限の定めのない売買契約の成立ですから、明渡しを請求した時点で履行期が到来するため売主たる不参加者はわずかに代金の支払いとの同時履行の抗弁権(民法533条、相手方の債務の履行があるまで自己の債務の履行を拒む権利)の保護しかなく、それを確認する金○円と引き換えに区分建物およびその敷地利用権の移転登記・引渡をせよ、との引き換え給付判決では金○円を提供して明渡しを請求されるとこれに対抗すべき手段がありません。
通常はこれでかまわないのですが、反対者は建替え費用の負担ができず他に移転先がない境遇である等汲むべき事情がある場合もあり、通常工事着工までには相当の期間がかかることも考え合わせると、これを直ちに明渡させるというのは著しく社会正義に反する結果となりかねません。

そこで、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者が建物の明渡しによりその生活上著しい困難を生ずるおそれがあり、かつ、建替え決議の遂行に甚だしい影響を及ぼさないものと認めるべき顕著な事由があるときは、裁判所は、その者の請求により、代金の支払又は提供の日から一年を超えない範囲内において、建物の明渡しにつき相当の期限を許与することができる(5項)として、硬直的な判決に柔軟性を持たせて裁判所の後見的判断による妥当な紛争処理を図れるような手当てが講じられています。

5.買戻し
このように、建替えの不参加者の保護も含めて建替え実施のために既存の権利関係の調整が図られますが、建替え決議もあくまで建替えしようとする意思の表明であって決議=実施というものではありませんから何らかの事情で建替え計画が頓挫・中止になることがありえます。
このような場合に建替え実施を前提になされた買取という権利調整がその前提がなくなっても存続させることは妥当とはいえず原状の回復が計られる必要があります。
そして、このことは建替え決議を前提とした買取価格として区分建物の評価を取壊し価格分マイナス計上する扱いの場合には特に妥当します。

ただし、その方法として計画の中止が売買契約を当然に失効させて一律に全てを現状に回復させることは、区分建物とその敷地利用権を売り渡して転出した不参加者も新たな場所で新しい生活を営んでいますからあまり妥当とはいえません。
そこで、原状に回復するかは転出者の意思に任せて、回復させる意思のある場合には売買代金を提供して売り渡した区分建物とその敷地利用権を買い戻すことを認めています(6項)。

なお、計画が中断や延期されていることは外部からではその実情を知ることは困難ですから、建替え決議の日から2年以内に建物の取り壊しに着手しない場合に計画の中断・中止を擬制して、この買戻し権の行使が認められます。

また、この買戻し権を何時までも存続させておくことは当事者間の権利関係を不安定にしますから、計画の中断・中止とみなされた日(建替え決議の日から2年後の日)から6ヶ月でこの買戻し権は消滅するものとされます。
この買戻し権行使の時点で真実は計画が中断・中止されているのではなく、他の不参加者や賃借人の明渡し期限前である場合等解体工事が延びている正当な理由の存在を証明して買い戻し請求権の行使を拒むことができます(6項但書)。
この場合は、この正当な理由の存続中は買い戻し請求はできなくなりますが、この理由が消滅した時はその時から2年間または消滅したことを知った時から6ヶ月間のいずれか短い期間内に買戻し請求ができます(7項)。

6.買い戻し権の行使
買戻し権は、売渡請求権と同様形成権であり、その行使と同時に売買契約が成立します。
その代金は買主が支払った代金と同額であり、利息や登記費用その他の付帯費用をつける必要はありません。

ただし、この買戻し請求権は4項の売渡請求権と異なり代金を提供して(代金を差し出して)行使しなければ行使の効果がありません。
これは売渡請求の場合と異なり代金額が予め決定していることと、請求を受ける者の保護のためで手附による解除(民法557条)や買戻し(民法579条)と同趣旨です。

尤も、代金の支払いと売買物件の登記引渡は同時履行(民法533条)の関係にありますから、売買物件の登記引渡を受けるまでは代金の支払いは不要で、提供とは、売買物件の登記引渡を受けるのと同時に代金を即座に支払えるように準備されていることを相手方に知らせて、その履行を促すことといえます。
ただし、提供の有無は後日証明することが困難ですから相手方が受取り拒絶等その他により買戻しを了承しない場合は、代金を弁済供託(民法494条)して、提供の事実の証拠を残さないと買い戻し請求権の除斥期間を途過したとみなされ結局買戻しが認められない惧れがあります。

7.買戻しの当事者
売買当事者は買主は買い戻し請求権を行使した不参加者であることは明らかですが、売主は対象の区分建物およびその敷地利用権を現に有する者であって、必ずしも従前の買主(売渡請求をした者)とはされていません。
このことは区分建物等を買い取られた不参加者の保護として必要なことではありますが、買戻しを受ける当該物件の転得者(現に有する者)の保護には欠けることもありえます(自己の売主との間で清算されますが。民法561条)。
何らの規定がない以上買戻し請求権は登記なしにこの転得者に対抗できますから、買戻しのありうる地位であることを登記上明らかにする手立てが転得者に警告を与えるために必要と思われます。

(建替えに関する合意)
第六十四条 建替え決議に賛成した各区分所有者、建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者及び区分所有権又は敷地利用権を買い受けた各買受指定者(これらの者の承継人を含む。)は、建替え決議の内容により建替えを行う旨の合意をしたものとみなす。

1.趣旨
64条は建替え合意の効力に関する規定です。
建替え決議は、一応管理組合の集会決議ですから適法に開催された適法の決議は本来決議に対する賛否や出席の有無を問わず全区分所有者に効力が及ぶはずですが(46条)、63条に定めるとおり反対者の利益擁護のために別途参加の有無を確認するように参加の強制がなく、64条の合意からも不参加者が排除されていますから区分所有者全員に対する拘束力は事実上否定されているに等しく議決要件も特殊ならその効力も特殊のものとなっています。
更に、集会決議は管理組合が存続する限りにおいて有効であるに過ぎず、建物の解体と同時に管理組合が消滅するとその効力を維持することができません。
しかし、建替え決議は少なくとも参加者の間では強制力を持ち、且つ建替えの完了まで有効でなければその目的を達成できませんから、集会決議の効力とは別に建替え決議内容が建替え事業参加者の間に維持される必要がありますから、事業参加者である参加区分所有者、買受指定者及びそれらの承継人の間で建替え決議内容と同一の合意の成立が擬制されています。

2.建替え組合
この合意は各参加者が相互に他の全ての参加者との間で建替え事業を行うことを目的とする合意ですから民法上の組合契約(民法667条)が成立することになり、所謂建替え組合設立の合意と同義です。

建物の解体契約や新築請負契約は、建替え組合の業務執行の一環として建替え組合との間で締結されると理解すべきでしょう。

この組合契約に基づく債務として各自に他の組合員に対する建替え事業に協力する義務が生じ、負担金の支払いや建物の明渡し等を履行しなければなりません。

この組合員の地位は、民法上の組合にも係らず、承継が認められていることから任意に他の者に譲渡することができ建替え組合からの離脱・投下資本の回収は保障されていますから、対組合との清算が発生して建替え事業に支障が生ずる惧れのある任意脱退(民法678条)は認めるべきではないでしょう。

第二章 団地

(団地建物所有者の団体)
第六十五条 一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(以下「団地建物所有者」という。)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。

1.趣旨
65条は団地管理組合の成立に関する規定です。
1棟の建物の区分所有の場合に複数の区分所有者が共用部分という共有物の管理主体となることから当然に団体を形成してその管理を行うという現象は、複数の建物の所有者間に共有物が存在してそれらの所有者がその管理主体となる場合も同様ですから、法はこれらの所有者が当然に団地管理組合を結成するものとしています。
この関係は3条の棟別管理組合の結成とパラレルに考えることができます。

2.団地管理組合の成立要件
団地管理組合結成の要件は、@一団地内に数棟の建物があること、Aその団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属することとされています。

@の一団地は特別な法律用語ではなく、一塊の土地・一定範囲の土地という程度の意味であり、@の要件は複数の建物の存在が必要であることに尽きます。
この場合の建物は区分所有のある1棟の建物が複数であろうと、単独所有建物が複数であろうと、それらが混在して複数であろうとかまいませんが、@の要件を満たす最低条件としては2棟以上の建物の存在が必須となります。

Aは当該一団地内に土地(当然ですが)又は付属施設が存在して、それらが当該数棟の建物所有者(区分所有者を含む)の共有(借地権等の場合は準共有)に属することです。
一般にはこれらの者の全員の共有となるでしょうが、必ずしも全員である必要はなく所有していない者がこの団体に属さないことになるにすぎません。

3.団地管理組合の並立
この@とAの要件を満たすと、その共有者全員を構成員とする団地管理組合が成立します。
これを換言すれば、団地管理組合は@とAの双方を満たす場合にしか成立しませんから、たとえ外見上は一団地であってもその団地内の土地又は附属施設がその一部の者の共有(準共有)でしかない場合には団地管理組合は当該一部の者の範囲でしか成立しないということです。

また、@とAの要件を満たせば団地管理組合は成立しますから、外見上の一団地内に土地を共有する所有者群があり、別途付属施設を共有する別の所有者群があればそれぞれ別箇の団地管理組合が成立し、この要件を満たす限り複数の団地管理組合はいくつでも成立するということになります。
ただし、複数の団地管理組合で互いに構成員の一部が重なり合っても、管理対象の異なるこれらの団地管理組合が融合されるものではなく別箇独立に存立しますが、完全に重なり合う場合には複数並立させる意味がありませんから管理対象物が複数ある1個の団地管理組合が成立するというべきでしょう。
これらの場合において、棟別管理組合とは別箇の団体ですから団地管理組合と棟別管理組合が並立することは当然です。

4.権利の共有
なお、この場合に当該土地や付属施設を目的とする所有権、借地権、賃借権等の権利は同種のものであることが必要であり、土地の半分を共有、他の半分を準共有というのはかまいませんが、同一の土地について所有者群と借地人群が別箇の場合は同一の団地管理組合とはなりません。
これは例えば集会室や立体駐車場を一部の者が所有し、他の者が賃借していても貸主・借主を統合した団体は成立しないということです。
団体を結成するのは統一的取扱いにより管理の便をはかるためであり、権利が異なっては統一的な取扱いができないからです。

同様に、土地や付属施設の共有(準共有)という要件を満たすためには、条文上は明確ではありませんが、団地管理組合の構成員がその全部を共有(準共有)する必要があります。
なぜなら、当該土地や付属施設が団地管理組合とそれ以外の第三者との共有(準共有)では、当該土地や付属施設の管理は民法、借地借家法その他の法規で規律されることになり、民法の特則たる区分法の適用する意味がないからです。

なお、@とAの要件を満たさない場合に、同一物の管理を共同でしようとする場合は、権利の移転等により@とAの要件を満たして団地管理組合を成立させるか、若しくは全員の合意により民法上の組合契約を成立させる必要があります。

5.成立要件具備の効果
上記@とAの要件は、団地管理組合の成立要件であると共に存続要件でもあり、はたまたその構成員資格の取得・存続要件でもあります。
従って、一旦団地管理組合が成立しても@またはAの要件がなくなれば団地管理組合はなくなりますし、一団地内の建物所有者が土地や付属施設の権利を取得すれば構成員に加入し、既存の構成員の一部が土地や付属施設の権利を失えば団地管理組合から離脱することになります。

なお、注意すべきは団地の場合は土地・建物一体性の原則が適用になりませんし、団地管理組合の構成員は建物の権利と団地を成立させている土地または付属施設の権利の双方を有する必要がありますから構成員の地位を承継させるためにはこの双方の権利を承継させる必要があるということです。
そのため、8条の特定承継人が存在しない場合も生じます。

6.団地管理組合の目的
成立するこの団地管理組合は、構成員全員の共有(準共有)に属するその団地内の土地、附属施設の管理を行うことを目的とするほか、専有部分のある建物即ち区分所有建物のある1棟の建物の管理をも行うことを目的とします。
上記のとおり、この団地管理組合と棟別管理組合は並存しますから各棟の管理は各棟の管理組合で管理するのが原則ではありますが、管理組織が複数の場合は各棟を包含する組織が統括した方が管理の省力化・統一化を図れるという趣旨です。
尤も、共有物である土地、附属施設に対する権限や負担とそうではない1棟の建物に対する権限や負担は構成員の地位により異なりますから、現実には同種の建物が林立する公団団地のような場合でないとかえって管理が複雑になるかもしれませんので、実際に団地で各棟の管理まで行うかは個々の団地管理組合の判断によることになります。

なお、専有部分のある建物という定義は、一人が全部所有していて棟別管理組合が不存在でも含みますが、区分建物を含まない単独所有建物の場合は、その所有者が管理するほうが簡便ですから対象からは除外されます。

7.団地管理組合の権限等
団地管理組合が成立すると、団地の適用法規が共有物の保存・管理行為以外は全員の合意が必要な民法から多数決で広範な処理が可能な区分法に変わりますから、その構成員は棟別の管理組合の場合と同様に、65条により規約を作り、集会を開き、管理者を選任することができるようになります。
なお、65条は団地管理組合の総則的規定であり、管理組合およびその構成員の具体的な権限等に関しては66条以下の規定が定めています。

(建物の区分所有に関する規定の準用)
第六十六条 第七条、第八条、第十七条から第十九条まで、第二十五条、第二十六条、第二十八条、第二十九条、第三十条第一項及び第三項から五項まで、第三十一条第一項並びに第三十三条から第五十六条までの規定は、前条の場合について準用する。この場合において、これらの規定(第五十五条第一項第一号を除く。)中「区分所有者」とあるのは「第六十五条に規定する団地建物所有者」と、「管理組合法人」とあるのは「団地管理組合法人」と、第七条第一項中「共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設」とあるのは「第六十五条に規定する場合における当該土地若しくは附属施設(以下「土地等」という。)」と、「区分所有権」とあるのは「土地等に関する権利、建物又は区分所有権」と、第十七条、第十八条第一項及び第四項並びに第十九条中「共用部分」とあり、第二十六条第一項中「共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設」とあり、並びに第二十九条第一項中「建物並びにその敷地及び附属施設」とあるのは「土地等並びに第六十八条の規定による規約により管理すべきものと定められた同条第一項第一号に掲げる土地及び附属施設並びに同項第二号に掲げる建物の共用部分」と、第十七条第一項、第三十五条第二項及び第三項、第四十条並びに第四十四条第一項中「専有部分」とあるのは「建物又は専有部分」と、第二十九条第一項、第三十八条、第五十三条第一項及び第五十六条中「第十四条に定める」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)の持分の」と、第三十条第一項及び第四十六条第二項中「建物又はその敷地若しくは附属施設」とあるのは「土地等又は第六十八条第一項各号に掲げる物」と、第三十条第三項中「専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設の権利を含む。)」とあるのは「建物若しくは専有部分若しくは土地等(土地等に関する権利を含む。)又は第六十八条の規定による規約により管理すべきものと定められた同条第一項第一号に掲げる土地若しくは附属施設(これらに関する権利を含む。)若しくは同項第二項に掲げる建物の共用部分」と、第三十三条第三項、第三十五条第四項及び第四十四条第二項中「建物内」とあるのは「団地内」と、第三十五条第五項中「第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項」とあるのは「第六十九条第一項又は第七十条第一項」と、第四十六条第二項中「占有者」とあるのは「建物又は専有部分を占有する者で第六十五条に規定する団地建物所有者でないもの」と、第四十七条第一項中「第三条」とあるのは「第六十五条」と、第五十五条第一項第一号中「建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあつては、その共用部分)」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)」と、同項第二号中「建物に専有部分が」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)が第六十五条に規定する団地建物所有者の共有で」と読み替えるものとする。

参考
旧第六十六条 第七条、第八条、第十七条から第十九条まで、第二十五条、第二十六条、第二十八条、第二十九条、第三十条第一項及び第三項、第三十一条第一項並びに第三十三条から第五十六条までの規定は、前条の場合に準用する。この場合において、これらの規定(第五十五条第一項第一号を除く。)中「区分所有者」とあるのは「第六十五条に規定する団地建物所有者」と、「管理組合法人」とあるのは「団地管理組合法人」と、第七条第一項中「共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設」とあるのは「第六十五条に規定する場合における当該土地若しくは附属施設(以下「土地等」という。)」と、「区分所有権」とあるのは「土地等に関する権利、建物又は区分所有権」と、第十七条、第十八条第一項及び第四項並びに第十九条中「共用部分」とあり、第二十六条第一項中「共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設」とあり、並びに第二十九条第一項中「建物並びにその敷地及び附属施設」とあるのは「土地等並びに第六十八条の規定による規約により管理すべきものと定められた同条第一項第一号に掲げる土地及び附属施設並びに同項第二号に掲げる建物の共用部分」と、第十七条第一項、第三十五条第二項及び第三項、第四十条並びに第四十四条第一項中「専有部分」とあるのは「建物又は専有部分」と、第二十九条第一項、第三十八条、第五十三条第一項及び第五十六条中「第十四条に定める」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)の持分の」と、第三十条第一項及び第四十六条第二項中「建物又はその敷地若しくは附属施設」とあるのは「土地等又は第六十八条第一項各号に掲げる物」と、第三十三条第三項、第三十五条第四項及び第四十四条第二項中「建物内」とあるのは「団地内」と、第四十六条第二項中「占有者」とあるのは「建物又は専有部分を占有する者で第六十五条に規定する団地建物所有者でないもの」と、第四十七条第一項中「第三条」とあるのは「第六十五条」と、第五十五条第一項第一号中「建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあつては、その共用部分)」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)」と、同項第二号中「建物に専有部分が」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)が第六十五条に規定する団地建物所有者の共有で」と読み替えるものとする。

1.準用規定
66条は65条で成立した団地管理組合の権限等に関する規定ですが、棟別管理組合の次の規定が準用され概ね棟別管理組合の場合と同様な取扱いがされているといえます。

2.準用されるもの
@第7条の先取特権。ただし、読み替えにより次のようになります。
第七条 第六十五条に規定する団地建物所有者は、第六十五条に規定する場合における当該土地若しくは附属施設(以下「土地等」という。)につき他の団地建物所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の団地建物所有者に対して有する債権について、債務者の土地等に関する権利、建物又は区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は団地管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき団地建物所有者に対して有する債権についても、同様とする。
2 前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。
3 民法(明治二十九年法律第八十九号)第三百十九条の規定は、第一項の先取特権に準用する。

この規定により、団地管理組合の先取特権と棟別管理組合の先取特権が土地等に関する権利(但し土地が敷地利用権の対象の場合を除く。)を除いて競合することになります。
この先取特権はあまり実効性がないようですが、双方が同時に実行(配当参加)され、全部を満足できない場合は債権額の按分による配当となります。

A第8条の特定承継人の責任。ただし、読み替えにより次のようになります。
第八条 前条第一項に規定する債権は、債務者たる第六十五条に規定する団地建物所有者の特定承継人に対しても行うことができる。

団地建物所有者の地位は、団地建物の所有者であると共に土地等の権利者である必要がありますが団地では団地建物の所有権と土地等の権利の一体性の原則はありませんから、この特定承継人をどの範囲のものとするかは問題です。
団地建物の所有権と土地等の権利のそれぞれの承継人もこの特定承継人にあたると解することも可能でしょうが、8条の趣旨を7条の先取特権保存のためと解する場合は勿論、被承継債務が団地管理組合財産に化体しているとの見解でも団地建物所有者の地位全部を特定承継する必要があるでしょう。
従って、団地建物の所有権と土地等の権利を一括して承継しない場合には団地建物所有者の特定承継人とはならず8条の準用はないことになります。

この場合、区分法の適用はありませんから民法の原則に戻り、民法254条に基づき当該共有物について発生した債権だけが当該共用物の持分の特定承継人に承継されますが、その範囲は8条ほど広範ではありません。

以下の各条も所定の読み替えにより準用されますが、棟別組合の場合と特に変わりはないようです。
B第17条の対象物件の変更、第18条の管理、第19条の負担と利益収取
C第25条の管理者の選解任
D第26条の管理者の権限
E第28条の委任の準用
F第29条の組合員の責任
G第30条1項の規約の設定範囲、同3項規約の衡平、同4項の第三者の利益侵害禁止、同5項の規約の文書又は電磁記録の作成義務
H第31条1項の規約の変更、33条の規約の保管・閲覧から34条以降56条までの集会制度・規約等の効力・組合法人制度

3.準用されないもの
他方、準用即ち適用のない規定・制度は次のものとなっています。

@1条の専有部分の定義
A2条の定義
B3条の棟別管理組合の成立・権限
C4条の共用部分
D5条の規約敷地
E6条の区分所有者の権利義務
F9条の建物の瑕疵の推定
G10条の区分建物売り渡し請求
H11条の共用部分の共有
I12条から16条の共用部分の特則

これらは1棟の建物内における専有部分と共用部分の存在を前提にその相互関係や1棟の建物における管理組合の成立等を規定するもので、団地建物とその所有者、土地等の関係を規定する団地管理組合関係には適用がないのは当然です。
ただし、6条1項は土地等に関して準用の余地があるでしょう。

J20条の管理所有者の権限
団地では管理所有が認められておりません。
これは管理所有が不可能というわけではなく(土地が分離処分の禁止される敷地利用権の場合を除く。)、土地等の管理を目的とする信託自体は可能です。
ただ、団地管理組合は土地等の共有を前提に成立している団体ですから、これを信託してしまうと成立の前提である土地等の権利を喪失して団地管理組合が解体するという関係から管理所有が準用されていません。
管理所有しても存続する棟別管理組合との違いからくるものといえます。

K21条の共用部分の準用
土地等に関しては17条から19条が既に準用されていますから21条の準用は不要です。

L22条から24条の敷地利用権
これらは専有部分と敷地利用権の関係に関するものですから団地では適用がありません。
団地では建物の所有権と土地等との一定性は保障されていません。

M27条の管理所有
管理所有の適用がないことは上記のとおりです。

N30条2項の一部共用部分に関する部会規約の設定
O31条2項の一部共用部分に関する組合規約の設定
1棟の建物内の管理組合と一部共用部分に関する部会との規定ですが、同一の団地に複数の団地管理組合が成立する場合も原則として並存しますが、全体に対する部会の関係にある団地管理組合の場合には68条に特則として規定がありますから、準用がありません。

P32条の公正証書規約
公正証書が必要なのは、登記が必要なためですが67条2項で必要な場合の規定がありますので準用がありません。

Q57条から60条までの義務違反者に対する措置
57条の実質は単なる確認規定で準用がなくとも同等の手段が取れますし、58条から60条は専有部分との関係ですから団地には適用がありません。

R61条から64条までの復旧及び建替え
これらは1棟の建物の問題に関する条項であり、且つ団地の場合に今回の改正法で69条、70条の規定ができましたから準用がありません。

(団地共用部分)
第六十七条 一団地内の附属施設たる建物(第一条に規定する建物の部分を含む 。)は、前条において準用する第三十条第一項の規約により団地共用部分とすることができる。この場合においては、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
2 一団地内の数棟の建物の全部を所有する者は、公正証書により、前項の規約を設定することができる。
3 第十一条第一項本文及び第三項並びに第十三条から第十五条までの規定は、団地共用部分に準用する。この場合において、第十一条第一項本文中「区分所有者」とあるのは「第六十五条に規定する団地建物所有者」と、第十四条第一項及び第十五条中「専有部分」とあるのは「建物又は専有部分」と読み替えるものとする。

1.趣旨
67条は団地共用部分に関する規定です。
団地にあっては、全体の敷地とその附属施設の管理関係ですから、1棟の建物の一部である共用部分という概念が存在する余地はありませんが、団地管理組合の管理対象物たる共有の土地および附属施設のうち附属施設、例えば集会室等については1棟の内部にある施設と同様、全員の共同利用の対象となるものですから1棟の建物の一部である集会室たる共用部分と同様に考えることができます。
そこで、附属施設たる建物(必ずしも独立家屋である必要はなく、団地内にある区分建物の一室でもかまいません。)に限り団地管理規約で規定することにより共用部分とできます。

従って、団地で共用部分というのはこの規約共用部分に限られ、法定共用部分というものは存在しません。
また土地は1棟の場合と同様に共用部分にはなりません。
更に、建物ではない附属施設、例えば立体駐車装置はこの条項の適用を受けませんから共用部分とはなりません。

2.団地共用部分とする意義
ただし、共用部分とするという意味は、1棟の場合と異なり共用部分でなければ専有部分となるというわけではなく、共同の施設であることに変化はありませんから単なる呼び名の問題ともいえ、その最大のメリットは規約共用の登記が可能であるということに尽きます。

この共用部分は建物であり且つ廊下等の法定共用部分ではありませんから、不動産登記法上でも表示登記が必要なのは当然ですが、規約共用部分たることを第三者(この団地の構成員およびその包括承継人以外の者)に主張するために規約共用部分たる登記が必要であることもまた当然といえます。
これは規約共用の登記に関する4条2項と同趣旨です。

規約共用の登記があれば、団地構成員各自の持分は附属施設たる建物の登記簿に登記されなくなりますから、団地内建物を譲渡して団地から移転するときに附属施設たる建物の移転登記が必要なくなります。
これら附属施設は移転登記が失念されることが往々にしてあり、新たな団地構成員が附属施設たる建物の権利がないという事態も割合多く見られます。
普段はそれでも済んでいますが、建替えその他で附属施設たる建物の所有権が問題となる場合は誰が権利者かで思わぬ紛争が発生することになりますから、規約共用の登記はこの紛争を未然に防止することになるでしょう。

3.公正証書規約
ただ、この登記は団地管理規約で規約共用の定めがあることがその前提となりますから、団地構成員が複数にならないと65条で団地が成立せず、従って規約作成能力がないため規約共用の登記もできません。
それでは、団地を分譲しようとする場合に困りますから、32条の場合と同様の趣旨により、2項で公正証書規約の設定が認められています。
これにより団地のディベロッパーは分譲前に集会所等を規約共用部分(その登記をして)として団地の分譲が可能となります。

4.共用部分の規定の準用
なお、この場合の団地共用部分の性格・性質等は1棟の共用部分と同様のものと考えられますから共用部分に関する規定が準用されています(3項)。

(規約の設定の特例)
第六十八条 次の物につき第六十六条において準用する第三十条第一項の規約を定めるには、第一号に掲げる土地又は附属施設にあつては当該土地の全部又は附属施設の全部につきそれぞれ共有者の四分の三以上でその持分の四分の三以上を有するものの同意、第二号に掲げる建物にあつてはその全部につきそれぞれ第三十四条の規定による集会における区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議があることを要する。
 一 一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内の一部の建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地又は附属施設(専有部分のある建物以外の建物の所有者のみの共有に属するものを除く。)
 二 当該団地内の専有部分のある建物
2 第三十一条第二項の規定は、前項第二号に掲げる建物の一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについての同項の集会の決議に準用する。

1.趣旨
68条は@団地内における区分所有の対象となっている1棟の建物(1項2号)とA団地内の一部共用部分的性格の部分(1項1号)についての取扱いに関する規定です。
団地管理組合は65条の要件を満たせば、そのつど団地管理組合が成立してこれらは並存しますが、ある団地管理組合の構成員を包含する団地管理組合がある場合は大組合で小組合のものも一括して管理するほうが便宜なことがあります。
このことは団地管理組合に包含される棟管理組合の場合も同様といえるでしょう。
そのための規定が68条です。

2.棟の管理の移管
65条で成立する団地管理組合は団地内の区分所有の対象となっている1棟の建物をも管理の目的とすることができますが(65条)、その建物は本来棟別管理組合が管理すべきものですから団地管理組合が成立しても当然にこれを管理できるというわけではありません。
これを管理するためには団地管理組合規約で規定する必要があり、その場合当該棟の自主性を尊重する趣旨から当該棟の管理組合の集会の特別決議が必要とされます(1項本文)。

この場合、当該棟に一部共用部分がある場合はその棟の全員の利害に関係しない事項については30条2項と31条2項の定めに則り団地管理組合で管理することも当該一部共有者の団体で管理することも可能です(2項)。

このように、棟を団地管理組合で管理するには棟別管理組合と団地管理組合双方の組合決議を経由して団地管理規約に基づくことが必要ですから、これの廃止・変更も双方の手続きが必要となります。
なお、66条で団地管理組合に準用されない棟別管理組合独自の事項はそもそも団地で取り扱うのに適さない項目ですから68条による管理移管の対象とならないことは当然です。

3.小団地の管理の移管
大団地が管理できる小団地の施設等は大団地内にある小団地の土地又は附属施設とされます。
これも本来当該小団地組合がその責任と権限の下に管理するのが原則であり、その自主性を尊重する必要がありますから管理移管のためには棟別管理組合の場合と同様に、共有者の四分の三以上でその持分の四分の三以上を有するものという特別多数の同意と団地管理組合規約での定めが必要とされます。

この場合に同意といって小団地管理組合の集会の特別決議といわないのは、必ずしも小団地管理組合の組織が実効性をもって存在しているとは限らないため、集会までの手続きを必要とせずとも同様の特別多数の賛成があれば足るとされるためでしょう。
従って、個々に同意を取りそれが共有者の四分の三以上でその持分の四分の三以上を有するものになれば必要な同意が満たされます。
勿論、小団地管理組合の集会を開催してもかまいません。

なお、1号の場合は、小団地の構成員が単独所有棟(単独所有でも区分建物である場合は除きます。)の所有者だけで構成される場合には適用されませんから大団地への管理移管ができません(1号括弧書き)。
これは、このような少人数の組織で行える管理の場合は、そのまま管理させるのが望ましく大規模組織に管理移管するメリットがないとされたためと思われます。

(団地内の建物の建替え承認決議)
第六十九条 一団地内にある数棟の建物(以下この条及び次条において「団地内建物」という。)の全部又は一部が専有部分のある建物であり、かつ、その団地内の特定の建物(以下この条において「特定建物」という。)の所在する土地(これに関する権利を含む。)が当該団地内建物の第六十五条に規定する団地建物所有者(以下この条において単に「団地建物所有者」という。)の共有に属する場合においては、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める要件に該当する場合であって当該土地(これに関する権利を含む。)の共有者である当該団地内建物の団地建物所有者で構成される同条に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において議決権の四分の三以上の多数による承認の決議(以下「建替え承認決議」という。)を得たときは、当該特定建物の団地建物所有者は、当該特定建物を取り壊し、かつ、当該土地又はこれと一体として管理若しくは使用をする団地内の土地(当該団地内建物の団地建物所有者の共有に属するものに限る。)に新たに建物を建築することができる。
 一 当該特定建物が専有部分のある建物である場合 その建替え決議又はその区分所有者の全員の同意があること。
 二 当該特定建物が専有部分のある建物以外の建物である場合 その所有者の同意があること。
2 前項の集会における各団地建物所有者の議決権は、第六十六条において準用する第三十八条の規定にかかわらず、第六十六条において準用する第三十条第一項の規約に別段の定めがある場合であっても、当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)の持分の割合によるものとする。
3 第一項各号に定める要件に該当する場合における当該特定建物の団地建物所有者は、建替え承認決議においては、いずれもこれに賛成する旨の議決権を行使したものとみなす。ただし、同項第一号に規定する場合において、当該特定建物の区分所有者が団地内建物のうち当該特定建物以外の建物の敷地利用権に基づいて有する議決権の行使については、この限りでない。
4 第一項の集会を招集するときは、第六十六条において準用する第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の少なくとも二月前に、同条第五項に規定する議案の要領のほか、新たに建築する建物の設計の概要(当該建物の団地内における位置を含む。)をも示して発しなければならない。ただし、この期間は、第六十六条において準用する第三十条第一項の規約で伸張することができる。
5 第一項の場合において、建替え承認決議に係る建替えが当該特定建物以外の建物(以下この項において「当該他の建物」という。)の建替えに特別の影響を及ぼすべきときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者が当該建替え承認決議に賛成しているときに限り、当該特定建物の建替えをすることができる。
 一 当該他の建物が専有部分のある建物である場合 第一項の集会において当該他の建物の区分所有者全員の議決権の四分の三以上の議決権を有する区分所有者
 二 当該他の建物が専有部分のある建物以外の建物である場合 当該他の建物の所有者
6 第一項の場合において、当該特定建物が二以上あるときは、当該二以上の特定建物の団地建物所有者は、各特定建物の団地建物所有者の合意により、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付することができる。
7 前項の場合において、当該特定建物が専有部分のある建物であるときは、当該特定建物の建替えを会議の目的とする第六十二条第一項の集会において、当該特定建物の区分所有者及び議決権の各五分の四位条の多数で、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付する旨の決議をすることができる。この場合において、その決議があったときは、当該特定建物の団地建物所有者(区分所有者に限る。)の前項に規定する合意があったものとみなす。

1.趣旨
69条は団地内の建物の建替え承認決議に関する規定です。
これまで単独敷地に存する単独建物の建替えに関しては規定がありましたが、団地におけるものに関しては規定がなく解釈に委ねられておりました。
団地とは一定のまとまりのある土地又は当該土地及びその上の建物群を指称する概念ですが、団地であっても各建物とその敷地が完全に独立していれば問題なく単独建物の建替え決議で処理することができます。
しかし、その土地が他の者との共有の場合には、土地に関する共有者の関係は区分法に規定がありませんでしたから、民法の原則で規律され民法によれば、建物の建築は土地上に永続的な工作物を設置し土地の使用を永続的に固定することになりますから変更行為に該当して共有者全員の合意が必要とされます(民法251条)。
従って、ある建物の所有者が建替えを希望しても他の共有者がこれを承諾しない場合は建替えが不可能ということになります。

これに対しては、共有者は共有物をその用法に従い、持分に応じて使用できることもまた民法の原則であり(民法249条)、当該土地は建物の敷地として使用することが共有者全員の合意事項であるはずですから、建替えによる新築建物の敷地とすることもその用法に従った使用ということもできるようにも思われます。
しかし、当該土地の建物敷地としての用法はあくまで現在の建物に関する合意であり、別の建物については合意されていないといわざるを得ませんから、他の建物の敷地としての利用は原則どおり共有物の変更というべきでしょう。
そこで、建物の建替えを促進するため土地共有者全員の合意という民法の要件を緩和する規定が69条です。

2.要件
建替え承認決議が成立する要件は、まず@敷地を共有又は準共有(借地権の場合)する2棟以上の建物が存在し、Aそのうちの少なくとも1棟は区分所有建物となっている建物であることです。
@の要件は団地の規定ですから当然であり、Aの要件も区分法での民法の規定の変更ですからこれまた当然です。
従って、@を満たしても全部単独所有の1棟の建物の場合でAの要件を満たさない場合は、69条の適用はなく民法の原則どおりの取扱いとなります。
尤も、1条の要件を満たせば1棟の建物も区分建物に変更できますから、建物のうちのどれか1棟が区分建物になれば69条の適用が受けられます。

次に、@とAの要件を満たすと65条の要件も土地共有ということにより当然満たしていますから、これらの建物所有者は当然に団地管理組合を構成するため、Bとしてその団地管理組合又は管理組合法人の集会で議決権の3/4の多数の決議を得ることが必要です(1項)。ただ、この場合の議決権は規約で定める原則的な建物に関するそれではなく、共有土地の利用に関することから規約とは無関係に土地持分による議決権となることに注意が必要です(2項)。

このように団地管理組合の集会の決議といっても、事は土地の変更を承認しようとする場であり、その当事者は本来土地の所有者であるべきですから、団地管理組合という組織やその集会という機関、更にはその議決という手段を用いていることは、すべて土地共有者とこの管理組合の構成員が同一であることから、土地共有者集会という別箇の組織を作るまでもないとして、法文上(形式上)団地管理組合の権限としたものに過ぎません。
従って、管理組合集会の議決といっても実質的には当該土地の共有者の合意が必要ですから、この場合の議決権は管理組合の議決権一般とは異なり、その割合は建物共用部分の共有持分割合ではなく、土地の共有持分の割合によるのであり(2項)、団地建物所有者数(区分所有者数)という頭数要件も採用されてはいません(1項)。
即ち、69条は民法251条の全員の持分での合意を、持分の3/4の合意に緩和しただけであるといえますが、共有地の建替えの促進には一つの規制緩和として一応有効なものといえるでしょう。

なお、建替え承認決議には、当然ながら、C当該建物について建替え決議または所有者の建替えの同意があることが必要です(1項)。
当該建物が区分建物の場合は建替え決議または建替えの全員の同意、区分建物以外の場合は所有者の同意がこれにあたりますが、区分建物ので管理組合がある場合やそれ以外の建物の場合で単に共有の場合には、当事者が複数ですからその同意は何らかの同意文書でその存在を証明できるでしょうが、区分建物でもその全部を1人の者が所有する場合や単独所有建物の場合には同意する相手方が不存在ですから、建替えの意思を外部に表示する何らかの方法がこれにあたるものといえるでしょう。

3.招集等の特則
建替え承認会議を招集する場合は、通常の招集手続きにはよらず建替え決議の場合と同様に特別なものが規定されています。
まず招集通知は会日より2ヶ月前までに発することが必要で、この期間は規約で伸長は認めますが短縮を認めません。
更に、招集には議案の要領の他新築建物の設計の概要(敷地のどの位置に建てるかも含む。)をも通知する必要があります(4項)。

建替え決議の議決権は、上記のとおり、土地持分の割合となりますが、建替え対象建物が区分建物の場合にはその建替え決議での反対者の議決権も含めて建替え承認会議での議決権行使では全ての議決権が賛成票にカウントされるものとして1棟の票の総取り方式が採用されています(3項)。
建替えしようとする棟から反対票がでるのはおかしいという趣旨で、反対者も買取請求権の行使等によりやがて居なくなるというのもその理由の一つでしよう。
区分建物以外の建物の場合はそもそも民法により全員の合意が必要ですから、全員が賛成に回るはずなのでみなす必要はありません(建替えに同意したらみなすことによりもはやその撤回は許さないという効果はどの場合でも期待はできません。)。
このように区分建物以外の建物の場合も含めてみなしている趣旨は不明です。

ただし、総取りされる議決権はあくまで建替えする建物についての議決権ですから、同一人が団地の他の建物も所有している場合にはこの議決権は総取りの対象とはならず自由に行使できることは上記の趣旨から当然です(3項但書)。

4.他の建物に特別の影響を与える場合
建替え建物は、一団地認定・総合設計等各種の手法を用いて建替えを行うこととなりますが、極論をすれば団地内の残存容積全部を使用しての建替えや他の建物に十分な敷地(仮想敷地)を残さない計画も立てることができますから、これをそのまま承認すると他の建物に不利益な場合も生じてきます。
そこで、建替え計画が他の建物の建替えに特別の影響(単なる影響では足らず特別なものが必要ですから、受忍限度を越える程度のものが必要です。)がある場合には、建替え承認会議の際に当該特別の影響を蒙る建物所有者の同意(それが区分建物の場合はその議決権(土地持分)の3/4)が必要となります(5項)。

ただし、5項は当該建物全体の建替えに支障という理由による規定であり、新築建物が個々の建物所有者に受忍限度を越える日影被害が生じる等の個別の問題は、それはそれとして別途解決が図れる必要があり、建替え承認会議がそれらの被害を適法化するものではないことは勿論です。

5.一括決議
なお、建替えする建物が複数ある場合には、その計画ごとに建替え承認会議を行うことも煩雑ですから、これらを同一の議案として一括して議決することもできます。
ただし、5項でもあるように特別の影響のある場合その他のその他の理由によりある計画は否決され、他の計画は承認されるという事態も当然生じますから、否決される計画と一括で会議にかけると自分の計画案も一緒に否決されることになります。
従って、複数の計画案を一括議決とするか否かは上程する団地管理組合の判断だけでは足らず、建替え承認決議を得ようとする各建物所有者の同意が必要とされます(6項)。

この場合に、当該建物が区分建物の場合にはその建替え決議において、自己の計画を他の建物の計画と一括して建替え承認会議に付する旨の議決(これが同意にあたることになります。)も合わせて行うことができます(7項)。

(団地内の建物の一括建替え決議)
第七十条 団地内建物建物の全部が専有部分のある建物であり、かつ、当該団地内建物の敷地(団地内建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により団地内建物の敷地とされた土地をいい、これに関する権利を含む。以下この項及び次項において同じ。)が当該団地内建物の区分所有者の共有に属する場合において、当該団地内建物について第六十八条第一項(第一号を除く。)の規定により第六十六条において準用する第三十条第一項の規約が定められているときは、第六十二条第一項の規定にかかわらず、当該団地内建物の敷地の共有者である当該団地内建物の区分所有者で構成される第六十五条に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において、当該団地内建物の区分所有者及び議決権の各五分の四位条の多数で、当該団地内建物につき一括して、その全部を取り壊し、かつ、当該団地内建物の敷地(これに関する権利を除く。以下この条において同じ。)若しくはその一部の土地又は当該団地内建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地(第三項第一号においてこれらの土地を「再建団地内敷地」という。)に新たに建物を建築する旨の決議(以下この条において「一括建替え決議」という。)をすることができる。ただし、当該集会において、当該各団地内建物ごとに、それぞれその区分所有者の三分の二以上の者であって第三十八条に規定する議決権の合計の三分の二以上の議決権を有するものがその一括建替え決議に賛成した場合でなければならない。
2 前条第二項の規定は、前条本文の各区分所有者の議決権について準用する。この場合において、前条第二項中「当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)」とあるのは、「当該団地内建物の敷地」と読み替えるものとする。
3 団地建物の一括建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
 一 再建団地内敷地の一体的な利用についての計画の概要
 二 新たに建築する建物(以下この項において「再建団地内建物」という。)の計画の概要
 三 団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に関する費用の概算額
 四 前号に規定する費用の分担に関する事項
 五 再建団地内建物の区分所有権の帰属に関する事項
4 第六十二条第三項から第八項まで、第六十三条及び第六十四条の規定は、団地建物の一括建替え決議について準用する。この場合において、第六十二条第三項中「前項第三号及び第四号」とあるのは「第七十条第三項第四号及び第五号」と、同条第四項中「第一項に規定する」とあるのは「第七十条第一項に規定する」と、「第三十五条第一項」とあるのは「第六十六条において準用する第三十条第一項」と、「規約」とあるのは「第六十六条において準用する第三十条第一項の規約」と、同条第五項中「第三十五条第一項」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項」と、同条第七項中「第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条」と、「第三十五条第一項ただし書」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項ただし書」と、同条第八項中「前条第六項」とあるのは「第六十一条第六項」と読み替えるものとする。

1.趣旨
70条は団地内の建物の一括建替え決議に関する規定です。
この条項も今回の改正で新設されたものです。69条のように団地内の建物を1棟だけ建替えるということは、通常各建物毎の敷地全体に占める容積率や建蔽率その想定敷地たる土地の位置等が予め決められていないことから他の建物が有すべきこれらの利益との調整が非常に困難となることが予想されます。
建物の状況はその管理状態の是非で差はあるものの老朽化・陳腐化等を原因とする建替えの場合はその時期は概ね一致すると思われますから、そのようなときは全部を一度に建替える方が上記権利調整の面からも望ましいことはいうまでもありません。

ところで、団地内の建物を一括して建替える場合は全所有者が合意して行えることは勿論ですが、その棟が区分建物の場合は建替え決議により行うことができ、全部の棟が区分建物の場合には全部の棟の建替え決議があわされば民法および旧法でも可能でした。
建替えた後の建物が高層棟1棟でも複数棟でも自由であり、それは70条での一括建替えでも同様で全てマスタープランをどう作成するかの問題です。

しかし、全部の棟が区分建物の場合には、全区分所有者を構成員とする区分建物の1棟が一敷地にあるのと事情は変わりませんから、全区分所有者について1棟の建替え決議と同等の要件が備われば建替えができると考えてもよいはずです。
そこで、全て区分建物である数棟の建物が敷地を共通とする場合に共同して実質的に1個の62条の建替え決議を認めたものが七十条の規定です。

2.要件
一括建替え決議の要件は、まず@団地内建物の全てが専有部分のある建物であること、であり更にはA敷地(団地内建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により団地内建物の敷地とされた土地をいい、これに関する権利を含む。)が当該団地内建物の区分所有者の共有に属すること、B団地管理組合規約が定められていること、C団地管理組合(法人を含む)の集会で全区分所有者およびその議決権の各五分の四以上の多数で一括の建替え決議を行うこと、D各棟の区分所有者およびその議決権の三分の二以上の賛成があること、E計画地の権利が借地権でないこと(所有権であること)の6つが必要です。

@とAは全部の棟を合わせて1個の建物に擬する前提であり、且つ組織としても1個の団地管理組合が成立する要件でもあります。
このように既に団地管理組合が成立している以上Bの要件を要求する理由は不明ですが、おそらく管理組合組織が現実に機能してることを要求するもののようです。
しかし、62条で要求しない要件をこの場合に要求し、且つ規約制定決議と共に建替え決議をすればよいのであれば機能しているといっても形式に過ぎませんから無用な要求であったように思われます。
Cは@とAで擬せられた管理組合による事実上の62条に基づく建替え決議に相当します。
Dは一括建替え決議における少数保護規定です。個人の保護は64条の準用によるのですが、1棟に擬制したといっても実際は複数棟の集合体であり、全体で五分の四という要件は1棟が仮に全部反対でも全部を合算すれば要件を満たすということも起こりえますから、それでは、個々で五分の四という要件の緩和ではなく多数による少数の抑圧の規定となってしまいます。
それぞれの棟の自主性も尊重・保護されなければなりませんから、全体に対して一部の自主性を守る31条2項と同様の趣旨で一括建替え決議では全体で五分の四という要件のほか、各棟でも三分の二(但し、議決権は建物共用部分の割合による。)が必要とされます。
即ち、各棟で三分の一を超える反対があると一括建替え決議は不成立ということになります。
この点、31条2項等区分法の従来の立場からは四分の一の反対(四分の三の賛成)が整合が取れる数値のようにも思われますが、31条2項では全体で四分の三の賛成なのに対し、70条では全体で五分の四の賛成がある場合ですから、単純に比較できるものではなく立法裁量の範囲内の問題のように思われます。

ところで、この建替え決議での議決権は69条2項の準用により建物の共用部分の持分割合ではなく、敷地の共有持分割合とされています(2項)。
この点に関し、民法上は、建物の建替えは既存建物の所有者による建物所有権の滅失行為(解体)と土地利用権者(所有者または借地権者)による建物の新築行為の複合行為と考えられますが、区分法は62条においてそれらを一括して建物所有者(土地利用権者の位置も兼任してはおりますが。)に授権する特則を置いていますから、その場合の議決権は建物共有部分の持分が基準となります。
従って、複数の区分建物群を1棟のものに擬した70条で62条の建物共有部分の持分ではなく土地持分による議決権とするのは、62条の立場と矛盾するものといわざるを得ないようです。

また、Eも借地権は現在の建物が滅失すれば消滅する可能性があるので(借地借家法7条・8条)他人の土地上に計画は不可能ということを前提にするものと思われますが、それは62条でも同様であって別途地主と解決する問題ですから、新たに借地権を設定し又は既存の契約の更新した場合でも一括建替え決議を否定するのは問題のように思われます。

3.単棟建替えの準用
この点を除くと、一括建替え決議はその趣旨から1棟での建替え決議と同様のものですから、1棟での建替えに関する事項(62条から64条)が全て準用してよいこととなります。
そのため、3項の決議事項も62条2項の4項目に全体計画(マスタープラン)の概要という1号が加えられただけですし、その他62条3項の衡平の原則、4項の集会招集の特則、5項の通知事項、6項の説明会、7項の説明会の招集、8項の議事録、63条の売渡請求権および64条の建替え合意の擬制が準用されています(4項)。

第三章 罰則

第七十一条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その行為をした管理者、理事、規約を保管する者、議長又は清算人は、二十万円以下の過料に処する。
 一 第三十三条第一項本文(第四十二条第五項及び第四十五条第四項(これらの規定を第六十六条において準用する場合を含む。)並びに第六十六条において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)又は第四十七条第十二項(第六十六条において準用する場合を含む。)において読み替えて適用される第三十三条第一項本文の規定に違反して、規約、議事録又は第四十五条第四項(第六十六条において準用する場合を含む。)の書面若しくは電磁記録の保管をしなかつたとき。
 二 第三十三条第二項(第四十二条第五項及び第四十五条第四項(これらの規定を第六十六条において準用する場合を含む。)並びに第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、正当な理由がないのに、前号に規定する書類又は電磁記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧を拒んだとき。
 三 第四十二条第一項から第四項まで(これらの規定を第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、議事録を作成せず、又は議事録に記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、若しくは虚偽の記載若しくは記録をしたとき。
 四 第四十三条(第四十七条第十二項(第六十六条において準用する場合を含む。)において読み替えて適用される場合及び第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
 五 第四十七条第三項(第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に基づく政令に定める登記を怠つたとき。
 六 第四十七条第十項(第六十六条において準用する場合を含む。)において準用する民法第五十一条第一項の規定に違反して、財産目録を作成せず、又は財産目録に不正の記載若しくは記録をしたとき。
 七 理事若しくは監事が欠けた場合又は規約で定めたその員数が欠けた場合において、その選任手続を怠つたとき。
 八 第五十五条第三項(第六十六条において準用する場合を含む。)において準用する民法第七十九条第一項又は第八十一条第一項の規定による公告を怠り、又は不正の公告をしたとき。
 九 第五十五条第三項(第六十六条において準用する場合を含む。)において準用する民法第八十一条第一項の規定による破産宣告の請求を怠つたとき。
 十 第五十五条第三項(第六十六条において準用する場合を含む。)において準用する民法第八十二条第二項の規定による検査を妨げたとき。

参考 旧第六十九条 次の各号の一に該当する場合には、その行為をした管理者、理事、規約を保管する者、議長又は清算人は、十万円以下の過料に処する。 一 第三十三条第一項本文(第四十二条第三項及び第四十五条第二項(これらの規定を第六十六条において準用する場合を含む。)並びに第六十六条において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)又は第四十七条第九項(第六十六条において準用する場合を含む。)において読み替えて適用される第三十三条第一項本文の規定に違反して、規約、議事録又は第四十五条第一項(第六十六条において準用する場合を含む。)の書面の保管をしなかつたとき。
 二 第三十三条第二項(第四十二条第三項及び第四十五条第二項(これらの規定を第六十六条において準用する場合を含む。)並びに第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、正当な理由がないのに、前号に規定する書類の閲覧を拒んだとき。
 三 第四十二条第一項又は第二項(これらの規定を第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、議事録を作成せず、又は議事録に記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をしたとき。
 四 第四十三条(第四十七条第九項(第六十六条において準用する場合を含む。)において読み替えて適用される場合及び第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
 五 第四十七条第三項(第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に基づく政令に定める登記を怠つたとき。
 六 第四十七条第七項(第六十六条において準用する場合を含む。)において準用する民法第五十一条第一項の規定に違反して、財産目録を作成せず、又は財産目録に不正の記載をしたとき。
 七 理事若しくは監事が欠けた場合又は規約で定めたその員数が欠けた場合において、その選任手続を怠つたとき。
 八 第五十五条第三項(第六十六条において準用する場合を含む。)において準用する民法第七十九条第一項又は第八十一条第一項の規定による公告を怠り、又は不正の公告をしたとき。
 九 第五十五条第三項(第六十六条において準用する場合を含む。)において準用する民法第八十一条第一項の規定による破産宣告の請求を怠つたとき。
 十 第五十五条第三項(第六十六条において準用する場合を含む。)において準用する民法第八十二条第二項の規定による検査を妨げたとき。

1.趣旨
71条・72条は罰則に関する規定です。
過料は、刑法第九条( 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。)に含まれていませんから刑罰ではなく、民事・行政上の反則行為に関する民事・行政罰です。そのため手続きも科刑手続きである刑事訴訟法によらず非訟事件手続法(206条から208条の2)によっています。
ただし、刑罰ではないとしても罰金・科料(過料と区別するためトガリョウといわれます。)の財産刑と同様の財産的ダメージを与える罰ですからそれなりの威嚇効果はあります。

過料手続きは当事者の地方裁判所が管轄し、その裁判は当事者の弁解とこれに対する検察官の意見を聞いて、理由を付した決定により申し渡されます。これに対しては、即時抗告ができ、その執行は検察官の命令によるものとされます。

現実には、地裁の執行部が担当し、各種の行政法や業法等の監督官庁がある法令違反の場合は当該監督官庁の申告に基づき、区分法のように監督官庁のない民事法の違反の場合は、利害関係人の申告に基づき、裁判所が判断することになります。
これは書面審理ですから、利害関係の証明も過料にあたる事実の証明も文書で行うことになりますし、民事事件ですから警察も検察も関与しません。
なお、すべては裁判所の判断によりますから、監督官庁や利害関係人の申告や申し立ても裁判所に過料の裁判の職権を発動させる原因になるに過ぎず、裁判所には申告等を取り上げる義務があるわけではありません。

71条は改正により過料の最高額が旧法の倍額に増額されたこと、対象物に電磁的記録およびそのプリントアウトしたものが増えた他は、特に変更はありません。

2.過料行為
二十万円以下の過料となる行為は次のとおりです。
@規約、議事録または書面決議の書面若しくは電磁的記録の保管をしなかったときに、保管義務者たる管理組合の管理者、管理者がいない場合の規約を保管する者として指定された者および管理組合法人の理事または清算人。
A上記のものの保管はできているとして、正当な理由なくその閲覧を拒んだときに、閲覧義務者たる管理組合の管理者、管理者がいない場合の規約を保管する者、および管理組合法人の理事または清算人。
B集会の議事録を作成せず、または記載事項を記載せず若しくは虚偽の事項を記載したときに、集会の議長。
C定期集会で事務の報告をせず、または虚偽の報告をしたときに、管理組合の管理者および管理組合法人の理事または清算人。
D管理組合法人の登記を怠ったときに、管理組合法人の理事または清算人。
E財産目録を作成せず、または内容虚偽の財産目録を作成したときに、管理組合法人の理事。
F理事または監事(法人ではない一般の管理組合の理事・監事ではなく管理組合法人の理事・監事のことです。)の定数を欠いた場合で、その選任手続きを怠ったときに、管理組合法人の理事または清算人。
G清算時において債権申し出の公告または破産申立ての公告を怠ったときに、管理組合法人の清算人。
H清算時に債務超過が判明した場合の破産の申立てを怠ったときに、管理組合法人の清算人。
I清算時の裁判所の検査を妨げたときに、管理組合法人の清算人。

第七十二条 第四十八条第二項(第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する。

参考 旧第七十条 第四十八条第二項(第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、五万円以下の過料に処する。

趣旨
71条と同様の罰則に関する規定で、新法で改正された点は71条と同様に過料の最高額が倍額に増額されたことです。

管理組合法人ではないのに、管理組合法人という名称を使用した者に過料を科すことにより、管理組合法人の名称独占を保障しようとするものです。


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